――約100点の原画、主人公ルフィと仲間たちの等身大フィギュアなど、盛りだくさんですね。
「フィギュアは、原型師の方たちが『徹底的に原作通りに再現したい』とすごい意気込みだった。僕のキャラクターは体格が変わっているのが多いけど、立体でイメージしているので再現しようと思えばできる。原型を見せてもらい、いろんな角度から撮った写真でもチェックし、何度も修整をお願いして素晴らしいものが出来上がった」
「原画をたっぷり展示してしっかり見せる、というのがこの展覧会の出発点。僕が客なら『これをあの先生がペンを動かして描いたんだぁ』と作者の息づかいが感じられるところがうれしいんだけど、自分の原画はいっつも見ているものなので『これ、そんなに見たいかなぁ?』なんて……いや、見たいんですよね」
――原画が動く二つの大型シアターもあります。
「シアターは、自分の原画がそのまま動くというちょっと体験したことのない映像で、僕でも『おおっ!』と感動するくらいだから、涙もろい人はハンカチを用意してきてね」
――展示用に特大イラストを描きおろしたとか。
「机に載らないんで、テーブル出して中腰で描いてたら筋肉痛になった。ふだんしないような細かな色の塗り込みができて、楽しかったです」
「作中では15年たってないこともあって、全く意識していません。周りは変わっても、僕は『マンガが好きで描いてます』という出発点から何も変わってない。今週分のページを仕上げて、来週はまた来週考える。それを続けてきただけ。お話が予想外に膨らんで、子供がお小遣いで全巻そろえられる長さでなくなってしまったのは、『良くないなあ』と思っていますけど」
――最近の「魚人島」編では、魚人族が人間から受けた差別、憎しみの連鎖など、重いテーマに踏み込んでいますね。
「前のエピソードで魚人の差別の話を描いてしまったので、魚人の国に乗り込んだらそのテーマはスルーできない。これまでも、ぶつかったテーマには真剣に自分なりの答えを出してきた。メッセージを込めたいわけではなく、テーマにケジメをつけたいんです」
――国を滅ぼしてでも人間に復讐(ふくしゅう)しようとするキャラクターの動機が、実は「空っぽ」だったというのが、とても現代的です。
「子供には分かりづらいだろうし、『誰かの恨みを引き継いで』という話の方が少年マンガ的かも知れないけど、少し大人になって現実を見て『ああ、こういうことなんだ』と分かってくれる時が来ると思う」
――東日本大震災の被災地でも、「ONE PIECE」は子供たちの心を癒やしました。仙台市の書店で、1冊しかない「ジャンプ」を100人以上の子供たちが立ち読みした記事が、話題になりました。
「あの記事を読んで『あ、マンガ描いてていいんだ。むしろ描かなきゃ!』って思った。すごく元気が出ました。エンターテインメントに関わる人は、みんなあの時『自分は何の役に立つんだろう?』と立ち止まったと思う。でもエンターテインメントは、マンガは、日常に帰ろうとするきっかけになると分かった。じゃあ僕たちは日常をしっかり整えておかなきゃ、と責任感が出てきました」
――では最後に、展覧会の監修者としてメッセージをお願いします。
「遊園地みたいに楽しくて、マンガの世界に引き込まれる展覧会になっているので、見にくる、というより体感しに来てほしい。必ず『来てよかった』と思うはずです。あと皆さん、係員の指示はきちんと守ってくださいね」
(朝日新聞デジタル)