3月31日発売のホビー誌「
ハイパーホビー 5月号」(VOL.164)には、メガハウス『ワンピース』グッズの特集が組まれ、P.O.P開発担当者の
金子浩樹さんがP.O.Pの誕生から現在までの流れについてインタビューに答えています。取材には仮面ライダーオーズ役で知られる
渡部秀さんが同行し、実はワンピースの大ファンでPOP厨だった彼が記者と共に質問をしています。バンダイのフィギュア展示イベント「魂ネイション2011」に出演した際、確かワンピースのフィギュアを集めていると言っていた気はするのですが、POP厨だったとはねぇ~w
【TVレポート】 尾田先生が超合金フランキーを推す理由(「魂ネイション2011」 トークライブ ワンピース回)
以下、特集記事(6ページ)のうちP.O.Pの部分の抜粋です。誰でも知っているような内容は割愛。抜粋内容は全体の大体5分の3ぐらいです。
渡部(W):原作の『ワンピース』を連載開始当初から好きで、ずっと読んでいたんです。その後、いろんな『ワンピース』のフィギュアが発売されたのを手にしたんですが、その中で「これだ!」ってハマったのがP.O.Pでした。ズッシリとした重さ、リアルな色、何もかもイメージにドンピシャで、それ以来新作が出るたびに予約して買ってますし、専用の棚を買って飾ってもいますから。
※これだけでPOP厨とは言えませんが、お気に入りのアイテムを聞かれて三大将のP.O.Pを挙げているあたりが相当あやしいですw →「P.O.P赤犬の顔が似ていない4つのポイント 【予約者は閲覧禁止】 」
<POP厨の特徴>
・初期のP.O.Pをより高評価する
・P.O.Pは全て集める
・造形の前評判が悪くても、製品版の実物は割とマシと言って否定はしない
・不必要にフィギュアーツZEROを否定する
★2つ以上あてはまれば、あなたはPOP厨です。ブランド価値に目を奪われ、フィギュアの本質が見えていない可能性があります。回復するためには専門家のカウンセリングが必要です。
POP厨とZERO厨の不毛な争いが某掲示板で行われているそうな。
HYPER HOBBY記者(HH):
ではまずP.O.Pがどうして生まれたのか教えてもらいましょう。
金子(K):テレビアニメが始まった2000年頃、私はバンダイさんのいわゆる下請けとして、商品企画をやっていまして、その時に、『ワンピース』のアニメ化に合わせたフィギュアの開発に関わったんです。でも、当時はやりたいことに自分の技術が追いついてなくて。その後、メガハウスの自社ブランドでフィギュアシリーズを立ち上げることになり、自分で工場を回ったり、原型師を探したりしながら何とかノウハウも貯まってフィギュア制作の実績ができた頃、たまたまメガハウスで『ワンピース』のフィギュアを作ってみないかという話をいただいて。当時のリベンジを果たそうと動き始め、第1弾が出たのが2004年。今年でざっと8年目になりますね。
※自社ブランド=「エクセレントモデル」シリーズ。P.O.Pもこのシリーズに含まれます。
金子浩樹(Kane-P)さん
W:
P.O.Pで最初に作ったフィギュアは何だったんですか?
K:実はルフィじゃないんです。ルフィは作り始めたら、どうしていいか悩んでしまったので、最初に完成したのはナミでした。次にゾロが完成して、3番目にようやくルフィ。ナミが最初にイメージが固まっていましたね。
※P.O.P発売8周年で当時を振り返った第1弾のエピソードはメガホビのスタッフブログでも綴られています。
→「エクセレントモデル今昔物語 P.O.P編」
画像がちゃんと表示されない場合はこちら→「超人気Portrait.Of.Piratesシリーズを振り返って」
HH:
キャラクターをどんなポーズで造形するのかというのは、会議で決めたりするんですか?
K:実は、シリーズ自体が2005年頃に一度途切れてしまったんです。というのも、当時美少女フィギュアの人気が高くて、P.O.Pシリーズも売れ行きが苦戦した時期があったんです。そのタイミングで、たまたま
尾田栄一郎先生にお会いすることがあったんです。P.O.Pを作っている者ですと挨拶したところ「
あのシリーズはすごくいいよね」と言っていただいて。それが嬉しくてすごくテンションが上がりまして、僕は思わず「
フランキーも作ります!」って言っちゃったんです。すると尾田先生から「
楽しみにしてるよ!」って言われたので、「
この約束を守らなくちゃ」と思ってシリーズが復活したんですよ。『週刊少年ジャンプ』巻末の作者コメントで「
P.O.Pはスゴイ」ということが書かれてることがあって、すごく嬉しかったんですけど、もしかしたら尾田先生本人が言っていないんじゃないかと疑っていたんです。でも、実際に尾田先生から褒められたら、すごく嬉しくて、会場の片隅でボロボロ泣いてしまって。
※イメージです。
※↑”約束”のP.O.P NEO-2 フランキー(2007年発売)。実物はなぜか超色黒です。
W:
それは嬉しいですよね。尾田先生が認めているというのもスゴイです。
K:その後、去年のジャンプフェスタの会場でも尾田先生にお会いしたら、今度は「
安心と信頼のP.O.P」ということを言っていただけたんです。一緒にいた人が「最大級の褒め言葉ですね」って驚いてくれたんですけど、もう自分ではあまりに感動して、何を言われたのかわからなくて。だからこそ、あの感動の答えをちゃんと先生にも届けたいなと思っているんです。
※「不安と裏切りのZERO(笑)」
バンダイ コレクターズ事業部 7月新作
フィギュアーツZERO 新世界Ver. の劣化が激しい件
※↑P.O.Pを認める証しとして栄ちゃんから送られた直筆サイン。メガハウスの社宝だそうですw
HH:
次は、フィギュア自体の実際の制作工程に関して説明していただけますか?
K:今回は、発売間近のサンジを使って説明しますね。まずは、原型師さんとどんなポーズで作るかの話し合いから始まります。単行本のポーズを参考にする場合と、キャラのイメージで決める場合とがあって、サンジの場合はスッと立ってカッコイイポーズということで、原型師さんと話してこのポーズになりました。でも、サンジの場合はカッコイイだけじゃなくて、メロメロになっているイメージもあるので、頭部と手のパーツを差し替えられるようにお願いしまして。その結果原型が完成します。
※
【フィギュア】 POP "Sailing Again" サンジ 【レビュー】
W:
最初に作られる原型の素材って何を使っているんですか?
K:皆さんバラバラですね。ポリエステルパテという素材を使ったり、石粉粘土を使ったり、ワックスという蝋の塊から削り出す方がいたり。それぞれ使いやすい素材を使っています。
※ワックスを使用しているのは原型師のキバヤシノリオさんですね。エクセレントモデルシリーズの美少女キャラを担当しています。削り出した原型は熱で溶かした後、冷やして固め何度も再利用できるエコな素材だそうです。
W:
(原型完成には)どれくらい時間がかかるんですか?
K:物によりますけど、早い方だと1ヶ月半くらい。でも、普通だと2ヶ月から4ヶ月ぐらいですね。長い場合だと、作り直しを重ねて1年かかったものもあります。
W:
時間がかかるんですね~。
K:その後、中国で生産するための塗装見本を作ります。原型に直接色を塗るわけにはいかないので、原型をシリコンで型を作って、レジンキャストという素材で型取りして複製したものがこれ(
①)ですね。素材こそ違いますが、これが原型にいちばん近い形のものです。原型か、この複製品が中国に送られて金型が作られます。その複製品に塗装したのがデコレーションマスター(デコマス)と呼ばれる塗装完成見本(
②)です。
※左から画像③、④、②、①
W:
この色を塗られた状態は、世界にひとつなんですよね?色は誰が塗るんですか?
K:P.O.Pの場合はデコマスは2セット作って、ひとつは工場に送って、もうひとつは確認と展示用として日本に置いておきます。塗装に関しては、原型とは別に塗装専門の方に塗ってもらっています。このデコマスが、ホビー誌などで商品紹介に使われたりしているんです。
W:
その後はどうなるんですか?
K:こちらが、原型をもとに金型を作って、商品と同じ素材を使って成形したものです(
③)。素材は、上半身や腕などは塩ビなどの軟らかい素材、下半身は倒れたりしないように硬い素材、そして台座や小物などは硬質な素材で成形しています。このプラモデルのような状態を組んだものがこれ(
④)です。
※原型の複製品(①)
W:
これで色を塗って完成ですか?
K:ここからまた微妙に修正を加えて調整をしていって、ようやく塗装ですね。ちなみに、原型と成型品ではちょとサイズが違うんですよ。金型から作る過程で約5%縮んでしまいます。なので、製品サイズを想定して、原型はちょっと大きめに作られています。塗装に関しても、”全然違う感”を指摘していくんです。デコマスと1stモデル(
⑤)を比べてもらうとわかりますが、マユゲの形や目線が違いますよね?そうした指摘をして、次にできてきたのが2nd(
⑥)。
※左から画像⑧、⑦、⑥、⑤
W:
ほんとうだ。目とヒゲ違う!
K:ヒゲも乱雑だったので直してもらって。さらに、目線も修正しきれていないのでさらに修正を重ねたのが3rdモデル(
⑦)。
※画像の解像度では分かりにくいですが、1回目の修正で上目だった目線は正面を向きに変えられ、マユゲの巻いている部分に少し角度がつけられ、顎ひげの描きこみが多くなっています。2回目の修正で目の縁のラインは垂れ気味に変更されているようです。
W:
こんなに何回も直すんですね。
K:ほんとうはあまり回数を重ねたくはないんですけど、イメージと違うモノを出すわけにはいかないですから。なるべく、イメージどおりになるように詰めていきます。ほんとうに多い時は、6~7回修正を重ねますね。
※修正が重ねられるのは描き込みができる部分のみのようです。つまり、監修中となってイベント展示されているP.O.Pフィギュアの造形は既に完成しており、原型自体に修正が加えられないということですね。塗装だけでどうこうなるレベルじゃない場合があるんですが。
<レビューのまとめ:POP SAサンジの修正すべき頭部のポイント>
・輪郭が丸い→ 角ばった輪郭に
・ベビーフェイス→ もっとオッサン化
・マユゲがでかい→ 一回り小さく
・顎ひげがプリント→ 造形で表現
・髪の毛の造形がゆるい→ もっと細かく
W:
色が付いている部分に関しては、全部塗装で表現されているんですよね?
K:そうですね。工場で専門の工員さんがエアスプレーや筆で手塗りします。またヒゲやアイラインにはタンポ印刷という細かい線を入れたりする技術を使っています。修正を重ねてOKが出れば、生産ラインで成型、塗装、組み立てを行い、最終的にはパッケージに入って完成となります。
W:いろんな直しを重ねて、やっと発売できるんですね。躍動感とか影の部分とかの色もすごくこだわっているの商品を見てわかっていたんですけど、ここまで直していると思わなかったです。
HH:
そうした品質管理があってこそのクオリティなんですね。
K:そうですね。今、シリーズをやっていて、中国の工場も原型師さんも塗装の方も、より細かい要求に対応してもらえる方に関わっていただいている感じなので。品質を落さないという管理は、やはり大変ですね。
※そのノウハウをバンダイ コレクターズ事業部に教えてあげてくださいw
W:
「このキャラを作ろう」と決めてから、発売までは、どれくらいかかるんですか?
K:1年くらいかかっちゃいますね。実際にはそこまでかけられないとうのがあるので、自分が悩んでいる期間をバッサリと切って、原型師さんと話し合いをして原型の発注から完成までで8ヶ月ぐらいでしょうか。その頃に「ファンの人たちがほんとうに欲しいものがどんな商品か?」というのも考えなくちゃならないですから。そこがいちばん悩みますね。
K:僕らが商品化する際にやりたいことは「どうせ、次はこれを出すんでしょ?やっぱりね」と思われるよりも、「え、これ出すの!」って思われたいんですよね。それが”がっかり”じゃなくて、”そう来たか!”と言ってもらいたい。『ワンピース』という作品のいちばんおもしろいところが、「そう来たか!」という伏線の回収だと思っているので、P.O.Pもそうありたいなと。
W:
これからのP.O.Pでやってみたいな~と思っているキャラは誰ですか?
K:ギミック満載の
バギーとかやりたいですね。パーツをバラして小さくできたり、バギーカーにできたりするものを。いろいろ超えなくちゃならない問題がたくさんありますけど。
※バラして小さくというよりは斬られてバラバラになった状態のバギーが欲しいんです!私は。
W:バギーはいいですね。わりと重要なポジションのキャラですから。それは僕も欲しいです。
K:
逆に渡部さんはどのキャラが欲しいですか?
W:映画のキャラクターなんですが、
シキが欲しいですね。尾田先生がキャラクターデザインしているのに、P.O.Pでは唯一出ていないので。ぜひ揃えたいです。
K:劇場版の『STRONG WORLD』の公開に合わせて出した「STRONG EDITION」からP.O.Pの人気がグッと上がったので、思い入れの深い作品でもあるし、シキだけが出ていないのも変なので、機会があれば商品化したいですね。
W:ぜひ、お願いします!