インドネシアでも日本の漫画・アニメ人気 「現地風リメーク」で売り込め
「クールジャパン」として世界的に脚光を浴びる日本のアニメや漫画がインドネシアでも人気を呼んでいる。巧みなストーリー展開が好評を博しており、肌の露出や暴力シーンなどイスラム圏では過激で受け入れ難いシーンについて現地風にリメークして出版する会社も現れた。少子化で国内市場が冷え込む中、経済発展著しいアジアの新興国で市場開拓に挑む。
■ 8割は日本作品
「DoRaEMON(ドラえもん)」「ONE PIECE(ワンピース)」「NARUTO(ナルト)」…。ジャカルタ市内の大型書店には日本でもおなじみの漫画が所狭しと並べられ、一心不乱に立ち読みする人であふれる。
世界のメディアコンテンツ市場を分析するシンクタンク「ヒューマンメディア」(東京)などによると、日本の漫画がインドネシアで出版されるようになったのは1990年代。以降、多くの作品がインドネシア語に翻訳され、同国最大の出版企業グループ「コンパス・グラメディア」が販売する漫画のうち8割を日本の作品が占める。地元の大学生、ルクマン・ヌル・ハキムさん(23)は日本の漫画の魅力について「ストーリーが分かりやすく、絵にも迫力とリアリティーがある」と語る。
■ 伸び悩みを打破
人気を誇る日本の漫画、アニメだが、宗教や文化の違いという“壁”もある。これまで大半の日本の作品は、セリフなどを現地語に翻訳するだけの形で輸出されてきたが、日本の漫画の性や暴力の描写など、国によってそのままでは容認できない部分もある。
日本動画協会(東京)によると、アニメ制作会社の海外売上高はこの数年は年間160億円程度。依然、高い数字ではあるが、直近のピークである平成17年(313億円)からは半減しており、業界関係者はその一因に宗教、文化の違いがあるとみている。
こうした状況を乗り越えるために考えついたアイデアが現地の実情に合わせた「リメーク」だった。
■ 桜を月下美人に
日本のアニメ・漫画キャラクターの海外展開を手がける「トキオ・ゲッツ」(東京)は4月、漫画「ドラゴン桜」をインドネシアで出版する。成績の悪い高校生が個性の強い教師に鍛えられ、東大合格を目指すというストーリーは日本でも絶大な人気を呼んだ。
イスラム教徒が大半を占める同国でも受け入れられるように、原作者の許可を得た上で現地の漫画家がリメークを担当。作品に登場する女子高生の短いスカートがイスラム圏では刺激が強すぎるとして、長い丈のスカートに描き直した。
首都ジャカルタの私立高を舞台にインドネシア大などの名門大を目指す設定に変更し、桜が持つ合格のイメージは日本人特有のため、インドネシアで「勝利」を意味する花「月下美人」に描き直した。
成長著しいインドネシアは約2億4千万人と世界第4位の人口を抱え、20歳未満が占める割合は3割以上と日本の倍近い。同社では経済発展に伴い増加した中間層を中心に受験競争が過熱する同国でも受けると見込んでいる。
今後、他の作品のリメークも検討しており、担当者は「日本の文化を知ってもらうきっかけになれば」としている。
(産経新聞)