鳥嶋: 僕が戻って数ヶ月(※1)、ついに、これ朝日新聞の夕刊(※2)の一面ですよ
加藤: これ僕 覚えてます
鳥嶋: 「ジャンプ」が「マガジン」に抜かれたって
加藤: うわぁ~取ってあるんですね、でも
鳥嶋: 悔しくて
※1 「Vジャンプ」を立ち上げて編集長として携わっていたが、『ドラゴンボール』終了に伴って売り上げが減少していたジャンプを立て直すべく「週刊少年ジャンプ」に編集長として戻る(1996年2月~2001年6月)。
※2 1997年7月28日
鳥嶋: (ジャンプに戻ってきて)編集部員を集めて言ったのは「『マガジン』はライバル誌じゃない」と。「マガジンは今日から見なくていいよ」「『ジャンプ』のライバルは『ジャンプ』だけだ」「ジャンプがダメなのは新人の新連載がないからだ」。どういうことかというと、同じ作家が違う連載を描いていくとタイトルが変わっていっても中身が変わらないんですね。子供にそれがバレてたんです。
鳥嶋: それで前の編集長(※堀江信彦 氏)が立ててた企画があったんですけど、それを全部、面白くなかったので、謝ってやめてもらって、それが3ヶ月ぐらい掛かったんですかね。それで編集部員に「もうほら君たちが作らないと連載ないよ、だから頑張って」って。で、新人の新連載ですから来る日も来る日も当たらなくて、部数会議のたびに「鳥嶋君、いつジャンプの部数が戻るんですか?」って。「うーん、しばらく戻らないと思います。100万部ぐらい落ちるかもしれません」って。
加藤: まぁそりゃそうですよね、全部作り替えてるんだから
鳥嶋: で、そうこうする中で実は希望の光が出てきたのがこの『ONE PIECE』なんですね。これが新人新連載、アンケート第1位だったんです。『ONE PIECE』が来てようやくこれで少年ジャンプを立て直す芽が出たんです。で、しばらくして『NARUTO -ナルト-』が出て、しばらくして『HUNTER × HUNTER』が出て。
加藤: すごい編集長じゃないですかー
鳥嶋: いやいや、それはスタッフが頑張ったから
鳥嶋: ある作家さんは自分の部屋の照明も窓も閉じて真っ暗にして電気スタンド一つ点けてネームをやると。で、もの凄く、うーんうーん苦しみながらやる。「誰に向かって描くんですか?」って言ったら「未来の、すっごく暇で、もの凄くつまらない時間を持て余している自分に向けてネームを描く」って。それでようやくネームが描けるんだって。この追い込み方、すごいなって。