・命の”コピー”と”改造”
839話
前回サンジが目撃した、ジェルマの兵達がカプセルの中で液体に浸けられた異様な光景。そして今回、ヨンジが放った衝撃の一言。
「サンジ、、、人間は…作れるんだ!!」
ジェルマの真実が語られるのでした。
・ジェルマは代々”科学の国”
・現国王のジャッジも優秀な科学者だった
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・サンジ達が生まれる前、ジャッジは海外の無法な研究チームにて、ベガパンクと共に兵器の研究をしていた
・この時の研究でベガパンクは生物の「血統因子」を発見
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・世界政府はこの研究を危険視してベガパンクを逮捕し、研究チームを解散させた(実際は研究チームをまるごと買収)
・ジャッジは世界政府の手から逃れ、ジェルマに戻って「血統因子」の応用研究(「命」の”コピー”と”改造”)を続けた
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・数名の優れた兵士達の”複製(クローン)兵”が生産<”コピー”>
・”複製(クローン)兵”は死を恐れず裏切らないようにプログラムされている<”改造”>
「血統因子」が「生命の設計図」と喩えられていること、そして何より上のコマの絵(
DNA二重らせん)から、「血統因子」とはこちらの世界で言うところの「
ゲノム」であるようです。
「命」の”コピー”、クローン個体の作製は、
体細胞クローンという現代の技術でも可能です(人間のクローン作製は倫理的に禁止されていますが)。これは、受精卵を除核して”コピー”元の個体の細胞核を移植するという荒っぽい方法ですが(今はiPS細胞もあるので技術的には昔より進歩している)、ジェルマの「人間を作る」技術はそれよりもさらに進歩しているようです。ジェルマの複製兵は「培養液」の中で成長し、たった5年で屈強な20歳に相当する兵士が作れるとのこと。鍛えてもいないのに筋肉がつき、髪の毛は都合良く伸びない?…恐るべきジェルマの科学力です。おまけに、死を恐れず従順になるようプログラムされており、さらに都合のいい事に、そんな事実を複製兵達は知らないみたいです。完全なクローンではなく、脳神経の恐怖や記憶に関係する「血統因子」は”改造”されているのかもしれません。
なお、現代の体細胞クローン技術であれば、妊娠させる代理母親が必要ですが、ジェルマの技術において、その点は謎です。しかし、ジェルマの「国民のほとんどが男」(832話)ということから、文字通りの完全なる試験管ベイビー(胎児期がない)だと考えられます。母親が意図的に出て来ないワンピースの作風ですから、理にかなっているとも言えるでしょう(というか、まさしくベビーマシーンみたいな代理母が存在するとなると、もはや少年誌で扱えるレベルのストーリーじゃなくなりますので)。
そして衝撃の事実がもう一つ。
サンジらヴィンスモーク家の兄弟達は
「血統因子」を操作されて生まれた”改造”人間であるようです。彼らはジェルマの研究の粋を集めて生まれた、ジャッジ曰く「最高傑作」であり、体のバネや筋力を向上させるように「血統因子」が操作されているようです。実はこれもこちらの世界で最近発展している
ゲノム編集という技術により不可能なことではありません。もちろん人間に対してその技術を適用するのは現代社会では倫理的に問題があるでしょうし、(DNA二重らせんの発見からの期間は現代社会と大差ないはずなのに)ジェルマの技術はそれよりもずっと先に進んでいるようですが。ジャマイカの選手が短距離走に強いのは、「ACTN3」と「ACE」という遺伝子がスプリンターに向いたタイプ(変異型)であること、骨盤の形が前傾していることなどが言われており、基礎体力には紛れもなく遺伝子が関与しているわけですが、こういった事象もジェルマは独自の研究により発見していったわけです。基礎体力を向上するためには、どの遺伝子が関与しているかを明らかにしていないと、「血統因子」をどう編集すればいいか分かりませんからね。
また、彼らは「血統因子」の操作により、基礎体力の向上だけでなく、「
外骨格」なるものが発現しているようです。外骨格というのは節足動物が持っている
キチン質の硬い表皮で、人間には元々ないものです。832話で、サンジに蹴られたヨンジの顔がグシャりと歪んでいたのと、それを治すためにハンマーで顔を叩いていたのはギャグ表現ではなく、皮膚の「外骨格」が歪んでいたわけです。
832話
シーザーが開発した”
人造 悪魔の実”の素となる「SAD」は、血統因子の応用(698話)という話でした。血統因子が何か分かった今、
”人造 悪魔の実”は生体の血統因子(ゲノム)に作用して、これを編集し、動物の血統因子(遺伝子)を発現させて、ゾオン系能力を人工的に再現させるものだったわけです。
なぜゾオン系限定なのかと言えば、超人系や自然系の超常的な能力は血統因子を編集してどうこうなる能力ではないからです。
ちなみに、胚ではない生体のゲノム編集は可能にはなってきていますが、一口食べるだけでゲノムを編集することは現代の技術では不可能です。チョッパーはシーザーが開発した「SAD」の技術をベガパンクが発見した血統因子の応用だとけなしていましたが、こればかりはシーザーは天才だと言わざるを得ません。
なお、”人造 悪魔の実”はゾオン系悪魔の実の再現ですが、
ヴィンスモーク家の兄弟達の特殊な能力は血統因子の操作によるものなのかもしれません。電気系の技はジャッジも使用していましたが、例えば
デンゲキブルーことニジの電気系の技はミンク族あるいは電気ウナギみたいな生物の「血統因子」によるものなのかもしれません。一番分かりやすいのは
ポイズンピンクことレイジュの毒を吸い取り無効化するという能力です。これは通常の兵器では説明がつきません。
826話
・失敗作
血統因子の操作によって生まれたヴィンスモーク家の兄弟達。体力測定をすると、幼少ながら大人並みの記録を出す一方、
サンジだけは何をやっても平凡な記録。調べてみると、サンジは
ただの人間、ジャッジに言わせれば失敗作であることが分かりました。
上のコマの辻褄合わせ感(『うそつきノーランド』、『悪魔の実の図鑑』→スケスケの実)が酷いのは置いといて、
複数の血統因子を操作した個体を作る事を現代の科学で考えた場合、まずサンジは普通の人間であり、兄弟達同士はクローンには見えないことから、複製兵で使われているクローン技術は使われていないはずです。また、複数の血統因子を一度に操作して個体発生させようとすると、おそらくサンジのような普通の人間がもっと生まれてくるはずなので、ES細胞のような多能性幹細胞を用いて、血統因子の操作を複数回繰り返し、目的通り血統因子が編集されたことを確認して、精子に分化させ、母親の卵と体外受精させて個体発生させたと考えられます。国王のジャッジが父親ですから、この場合は多能性幹細胞としてジャッジのiPS細胞が使われたことでしょう。一応、国王家の体裁がありますから、使われた卵は王妃のものかと思われます(こちらは血統因子は未編集ということにしておきましょう)。
それで、サンジのような「ただの人間」がどうして生まれてきたのかというと、おそらく”
取り違え”でしょうね。前の項で述べたように、ジャッジが兄弟達それぞれに特殊な能力を授けようとしたならば、使われたジャッジのiPS細胞は最終的にはそれぞれ異なりますから、それぞれ精子に分化させることになります。ここで、サンジに使われるはずだったiPS細胞がジャッジの未編集のiPS細胞と取り違えられたとすれば、(王妃の卵は血統因子の操作がされていないとすると)ただの人間であるサンジが生まれてくるというわけです。
たぶん、そこまで設定は練られていないと思いますが、無理やり科学的に考証するとそんな感じです。ちなみに、この設定が真だとすると、取り違えた奴はきっと処刑されてますね・・・。
そして、ジャッジに失敗作で無駄な存在とされた幼いサンジは、命は取られなかったものの、ジェルマ国内では遭難事故で死亡したことにされ、実際は地下(?)に幽閉されてしまうのでした。ここからどうやって脱出したのでしょうか。手助けをした人物として考えられるのは、ちょっとだけ友好的なレイジュ?あるいはおそらく存在するだろう王妃??