坂東巳之助「どんつく」踊る表情に父三津五郎の面影
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
歌舞伎座で上演中の舞踊「どんつく」で踊る坂東巳之助(27)を見て、お父さんに似てきたなと思った。お父さんとは、15年に亡くなった10代目坂東三津五郎さん。今月は三津五郎さんの三回忌とあって、昼の部で追善狂言として、三津五郎家とゆかりある「どんつく」が上演され、尾上菊五郎、中村時蔵、尾上松緑、市川海老蔵らも「三津五郎の追善なら」と出演している。
巳之助は三津五郎さんの長男で、6歳で初舞台を踏んだ。しかし、三津五郎さんが母である寿ひずると離婚したこともあって、歌舞伎から離れた時期もあった。しかし、20歳を過ぎてからは歌舞伎に精進し、スーパー歌舞伎2「ワンピース」でゾゾ、おかまのボン・クレー、海賊スクアードの3役を演じて高い評価を受けた。昨年は巡業で市川猿之助との役替わりで「獨道中五十三驛」の13役早変わりに挑むなど、伸び盛りの若手立役だ。生前、父と共演しても、あまり似ているとは思わなかったが、「どんつく」で踊る一瞬の表情に「そっくりだな」と思う場面が何度もあった。
歌舞伎の世界で、父がわが子に望むことの1つに「追善公演ができる役者になってくれ」ということがある。生前、いくら人気役者でも、子が1カ月の興行を担えるほどの人気・実力ある役者でないと、追善公演はなかなかできない。追善公演を行うことは、父、祖父への最大の孝行ともなる。巳之助はまだ27歳の若さ。いつか10代目坂東三津五郎追善公演を行える役者になってほしいと思う。
(日刊スポーツ)