「ワンピース」像、うちにも=漫画キャラ、市町村が争奪戦―「被災地に元気を」熊本
(前略)県はルフィの像を県庁敷地内に設置し、2018年11月の除幕式には約1500人のファンが訪れた。他の仲間8人の像は県内各地に建てることになり、希望する市町村を募った。
これに全体の7割近い31市町村が名乗りを上げた。設置場所には「復興につながるストーリー」「設置後の活用策」などが求められるが、県は具体的な選定基準を明かしていない。地震から3年となる19年4月ごろまでに決めたい考えだ。
応募自治体の間では、被害の大きかった地域は選定されるとの見方が強く、他の市町村は知恵を絞る。上天草市は、船を模した展望台がある公園に設置を計画。「天草の海が一望できる場所。船上でコックをしている『サンジ』にぴったり」(堀江隆臣市長)とアピールする。
南小国町は「霧が立ち込める町内の瀬の本高原こそ、霧の中から初登場した『音楽家ブルック』にふさわしい」と提案した。観光客誘致の起爆剤としての期待も大きく、自治体は地元の名所とキャラクターを絡めた売り込みに心を砕いている。
震災の傷痕は深く、阿蘇市では鉄道や国道の寸断が解消されていない。同市の秦美保子観光課長は「学生は朝早くから代行バスで通学し、観光客数は落ち込んでいる。市民を明るくする力が欲しい」と像の設置を訴えた。
(時事通信)
「ワンピース」仲間8体はどこへ 熊本県31自治体がラブコール
人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」の主人公ルフィ像に続き、「麦わらの一味」と呼ばれる仲間8体の立像が2019年度から県内各地に設置される。県は、熊本地震復興のシンボルとして近く設置場所を決めるが、県内31市町村が“誘致”を熱望。個性豊かな仲間のキャラクターと地域の魅力を組み合わせたストーリーを練り、アピール合戦を繰り広げている。
像は、復興支援に多額の寄付を寄せた作者尾田栄一郎さん(44)=熊本市出身=の県民栄誉賞受賞を記念して建設。昨年11月末に県庁プロムナードに設置されたルフィ像は「世界で唯一」の常設像とあって、早くもファンの間で“聖地”の様相を呈している。
県は仲間8体の設置場所について、市町村が示した「熊本地震の復興につながるストーリー」などを審査し、出版元の集英社とともに選考する方針。31市町村の多くは手の内を明かしていないが、熊日の取材に対し一部が回答を寄せた。
考古学者ニコ・ロビンは、嘉島町と荒尾市がラブコール。嘉島町は井寺古墳など被災文化財の復旧に、荒尾市は荒尾干潟の渡り鳥とコマドリの英語名「robin」(ロビン)に絡めて応募した。考古学者だけに博物館や震災遺構も似合いそう。ロビンとともに航海士ナミを1位希望にする両にらみ作戦をとるのは宇城市。ナミはミカンが好物で、同市は「デコポン発祥の地をアピールできれば」と期待するが、ミカン産地同士の競合も予想される。
人吉市の“本命”は世界一の大剣豪を目指す戦闘員ロロノア・ゾロ。担当者は「酒豪で米好きのゾロは球磨焼酎のPRに最適。市内には刀鍛冶の体験施設もある」。相良藩家臣で剣豪の丸目蔵人佐[まるめくらんどのすけ]ゆかりの地だけに相性は良さそうだ。
ガイコツ音楽家ブルックに照準を定める南小国町は「特産のジャージー牛乳や音楽を関連づけたイベントを展開したい」と瀬の本高原への設置を希望。小国町は日本細菌学の父・北里柴三郎生誕の地として、船医トニートニー・チョッパーを狙う。ルフィ同様に立像が等身大なら、ブルックは最大の277センチ、チョッパーは最小の90センチ(人獣型)になる。
船大工フランキーは造船が盛んな長洲町のほか、高森町が名乗り出た。同町は水の都で育った生い立ちと作中の「海列車」の物語が南阿蘇鉄道に似合うと見立てた。
一味のムードメーカーである狙撃手ウソップは甲佐町が希望。植物を武器とするユニークさに目を付け、複数の自治体が自然のPRを狙った物語を描く。料理人で女性に優しいキャラクターのサンジは「恋人の聖地・二俣橋公園にぴったり」という美里町のほか、食のイベントに絡めた誘致の動きがある。
一方、熊本地震で大きな被害を受けた益城町は応募キャラを公表していないが、ワンピース好きの職員有志が知恵を絞った企画で応募。担当者は「町や住民を勇気づけられるよう、必ず誘致を成功させたい」と意気込んでいる。
(熊本日日新聞)