それから考えてみると、"2"のカナヅチの呪い以外のルールは全て
〝悪魔の実〟の伝達条件に基づいていることに気づかされます。
1. 〝悪魔の実〟を食べると能力を得る
2. 能力者は能力を得る代償にカナヅチになる
3. 能力者が生まれると、残った〝悪魔の実〟の欠片はただの不味い実になる
4. 能力者が死ぬとその能力の〝悪魔の実〟が実る
5. 死んだ能力者から能力を奪うことができる
6. 能力は2つ以上得ることは出来ない
まず、"3"と"4"のルールからは〝悪魔の実〟と〝能力者〟の間で〝能力〟が行き来していることが分かります。
ここで言う〝能力〟に近い概念として劇中では〝悪魔〟と表現されているので(ジャブラの話)、ここでも〝悪魔〟という言葉を使うことにします。つまり、〝悪魔〟が宿っている時はただの実は〝悪魔の実〟となり、「能力者」は能力を持つわけです。ややこしくなるので、
「実」は〝悪魔の実〟に〝悪魔〟が宿っていない状態の実、「者」は能力者になり得る者とします。
1. 〝悪魔の実〟を食べると能力を得る
2. 能力者は能力を得る代償にカナヅチになる
3. 能力者が生まれると、残った〝悪魔の実〟の欠片はただの不味い実になる
4. 能力者が死ぬとその能力の〝悪魔の実〟が実る
5. 死んだ能力者から能力を奪うことができる
6. 能力は2つ以上得ることは出来ない
"1"と"5"のルールは能力を得るための伝達条件です。「実」→「者」の伝達の場合は食べるだけでいいのに対して、「者」→「者」の場合は能力者を他の「者」が齧っても能力を奪うことはできず、先に能力が死ぬ必要があるようです。リンリンは能力者を丸ごと食べたので、能力者を殺したのと食べたのが同時ということでしょう。明らかになっていないのは「モノ」に〝悪魔の実〟を食べさせる方法ぐらいです。
これに対して"4"のルールは「者」→「実」の伝達条件です。能力者が死ぬと、世界のどこかにその能力の〝悪魔の実〟が成ると言われていますが、シーザーは〝サラサラの実〟の〝悪魔〟をスマイリーからリンゴに乗り移して見せました。
ここまでは普通に理解できます。さて、問題になるのが"6"のルールです。
6. 能力は2つ以上得ることは出来ない
これが絶対的なルールであれば問題にはなりませんが、知っての通り、黒ひげ(ティーチ)は通常2つ以上の能力を持つことが出来ないはずなのに能力を2つ持つことが出来ました。これについてマルコはティーチの身体が「異形」であることを可能性に挙げています (577話)。
この「異形」が何を意味しているかは未だ明らかになっていませんが、ティーチは「心臓」を2つ持っているとか、「頭」が2つあるとか、ケルベロスの能力者であるといった説が言われています。ケルベロス説については上記のルールに完全に抵触するため、私は否定しますが、これらの説でポイントとなっているのは
〝悪魔〟の器が何かということです。つまり、ケルベロス説では「頭」がそれになります。通常、その器は1つしか持っていないから、能力は2つ以上得ることは出来ないわけです。
しかし、
武器のような「モノ」でも能力者に成れることを考えると「心臓」や「頭」が〝悪魔〟の器だとは考えにくいです。そして、見過ごしがちですが、
動物ではない「モノ」でも能力者に成れるのであれば、「実」はなぜ能力者に成らないのでしょう?
〝悪魔〟が「実」と「者」の間を行き来するのは「実」と「者」が共通して〝悪魔〟の器を持っているからのように思えます。そして、それには〝悪魔の実〟と〝能力者〟を分ける何かがあるはずです。
ここからがようやく本題ですが、その答えとして「
血統因子」を考えてみます。
ベガパンクが発見した「血統因子」はこちらの世界で言う「ゲノムDNA」や「遺伝子」「染色体」のことを意味しています。ゾオン系の〝人造 悪魔の実〟「SMILE」は血統因子の応用(698話)とされており、シーザーの研究はこちらの世界で言うところの発生工学の分野になるわけです。まぁ、実を食べさせるだけで自在に遺伝子改変させるわけですから、こちらの世界の科学技術をとうに越えています。
〝悪魔〟の器が「血統因子」だと仮定すると、「実」と「者」を〝悪魔の実〟と〝能力者〟に分けているのは
植物ゲノムと
動物ゲノムです。
ここで直ぐに例外に気づくと思いますが、武器のような「モノ」には「血統因子」は無いはずです。
しかし、
武器が能力者になるケースは(今のところ)ゾオン系の〝悪魔の実〟しか例がないというのは注目に値します。ここからは更なる仮説ですが、
ゾオン系の〝悪魔〟は他の系統の〝悪魔〟とは性質が異なり、器となる動物ゲノムの特性を〝悪魔〟自体が持っているのかもしれません。この仮説は武器が生き物のようになっていることから見れば、割と理解しやすいものだと思います。
イメージとしては、パラミシア系とロギア系の〝悪魔〟は器になる「者」の動物ゲノムを人知を超えたレベルで操り、ゾオン系の〝悪魔〟は自身が持つ動物ゲノムを人知を超えて「者」と融合させる感じです。「人知を超えて」と言うのは、そこはファンタジーですので。。
そして、この仮説では〝悪魔〟の能力の発現には
動物ゲノムが必要であり、逆に
植物ゲノムは〝悪魔〟の能力の発現を抑制するものだと考えられます。それなので〝悪魔〟が「実」にある時は〝能力者〟になることはなく、「者」にある時に〝能力者〟になるわけです。ゾオン系の〝悪魔〟は能力の発現する条件を伴っているので動物ゲノムを持っていない「モノ」でも〝能力者〟に成ることができ、「実」では能力の発現が抑制されて〝悪魔の実〟となっているというわけです。何だか「実」は〝悪魔〟を封印する様な代物に見えてきますね。
では、〝悪魔〟の器が「血統因子」だとすると、ティーチが「血統因子」を2つ持っているというのはどういう状態でしょうか。それはおそらく、ティーチは
4倍体の特殊な人間だと考えられます。
「ゲノム」や「DNA」「遺伝子」「染色体」と言うと、一般にはなかなか区別できないものですが、「ゲノム」と言えば"生物が生物たらしめる遺伝情報の全て"と理解してください。つまり、生物は基本的に1つの「ゲノム」を持っていることになります。人間は父由来と母由来の2本1対の染色体を23組持っており、この2×23の染色体のセットを「ゲノム」と言います(23本のセットをゲノムとも言えますが、ここでは分かりにくくなるので前者)。そして染色体の1組は2本で構成されており、このような生物は2倍体と言います。例外がありますが雄雌の概念がある生物は基本的には2倍体です。
そして、染色体の1組が4本で構成されている場合が4倍体となります。4倍体の人間は4×23の染色体を持っています。ティーチが4倍体の特殊な人間だとすると、ティーチは〝悪魔〟の器になるゲノムを2つ持っていると言えるかもしれません。
4倍体の生物はかなり特殊な例ですが、植物の品種改良の世界では割と見ることが出来ます。これらの
4倍体は2倍体よりもサイズが大きくなるという特徴を持っています。
ティーチの"ナニ"がヒトより大きくなっているか・・・というか巨人族と小人族がいるワンピース世界でサイズ云々ではない気がしますが、ともかく、
マルコが言う「異形」はティーチが4倍体の特殊な人間であることに起因する身体の異常ではないでしょうか。
一方、『ONE PIECE GREEN』の伏線ガイドによると、ティーチが能力を2つ持つ謎を解く鍵はバナロ島でエースがティーチに言った「
人の倍の人生を歩んでるお前がこの状況を理解できんわけがねェ」にあるとのことです。
エースもティーチの異常を知っていたようですが、ティーチが4倍体の特殊な人間だとして、それを揶揄して「倍の人生を歩む」と言うでしょうか???
ティーチの謎に関する考察はいつもここで詰んでしまいます(笑)。