第959話「侍」

TOPICS
・オロチの一手
・鎖国する理由

・オロチの一手
決戦の当日、集合地の「兎丼」の常影港には錦えもんの一行以外に誰も集まっていませんでした（958話）。制圧した「兎丼」の採掘場にも誰一人おらず、同盟の他の者に呼びかけても、スマシは一切反応しません。事件は既に昨夜起きていました。



オロチは集合場所の常影港に通じるワノ国の重要な交通ルートである大橋の破壊を命じ、さらに討ち入りの船を準備していた九里の「伊達港」、サニー号を隠していた九里ヶ浜の洞窟を部下に攻撃させていたのでした。変更になった集合場所はオロチにバレていたことから（955話）、郷と郷の間にかかる大橋が破壊されたのは分かりますが、サニー号の隠し場所と船を準備していた伊達港をピンポイントで攻撃命令しているとなると、それ以上の情報をオロチは握っていたことになります。しかも、討ち入りの数が4千人であることも把握しており、光月家の侍達が20年前からタイムスリップしてきたことも信じがたい事実として認識している様子です。このことから、内部の情報がオロチに完全に漏れていることが窺えます。

一方で、オロチは「未だ侍達を確認しておらぬ」とも「家臣共に信じて貰えぬ」とも言っており、実際、破壊活動を命じられた百獣海賊団(?)の部下達は未だに光月家の復讐の話を信用していない様子です。したがって、この内部情報は隠密（忍者）を使って得たわけではないように思えます。オロチが内通者から直接、情報を得たのでしょうか。オロチは光月家の復讐の事実を康イエに笑いのタネに変えられたと認識しており、また、「20年前の”昔”から人が飛んで来た」と認識していることから、オロチが最初に事実を知ったのは、錦えもんらがタイムスリップした以降、康イエが捕まる以前だと考えられます。ここで注意したいのは最初に事実だと認識した情報元と討ち入り2日前の最新の内部情報の情報元が同じだとは限らないということです。

光月家の復讐の話はオロチ自身も信じがたい話ですから、第一段階としては20年前におでん城で死んだはずの光月家の侍が生きているという事実を確かな情報元から得ていたはずです。そこで最初の情報元と考えられるのはやはりドフラミンゴです。錦えもん、カン十郎、モモの助はワノ国から出航を目撃されており、ドレスローザではドフラミンゴに追われています。百獣海賊団は錦えもんらを名指しするも、せいぜい亡霊扱いして半信半疑である一方（920話）、元々、トキの呪い歌を恐れていたオロチはこの話を聞いて事実だと認識したのでしょうか。第二段階は作戦の暗号になっている判じ絵が発見されたことです。これは狂死郎が見つけています（933話）。第三段階は内部情報の入手です。兎丼が占拠されたこと、集合場所が常影港に変更になったこと、日和が生存していることが何者かからオロチに報告されています（955話）。そして、討ち入り2日前の最新の情報も得ており、最終的に破壊を命じた場所に実際に船があったことから、確信に変わったものと考えられます。

では、内部情報をオロチに報告したのは誰でしょう？

一番疑わしい奴はカリブーですが(笑)、彼は多分違います。オロチは兎丼が占拠されている情報を入手するも、兎丼が問題ないという別の報告を確認して、兎丼占拠については誤報だと認識して「信用ならねェ マネしやがって…」と発言しています（955話）。これは兎丼の占拠のカラクリを知らない人物からの報告だったため、誤報と片付けられてしまったわけです。したがって、兎丼の占拠のカラクリを知っているであろうカリブーは疑わしい人物から除外されます。同じ様に、兎丼にいた人物に内通者はいないと考えられます。兎丼以外の場所にいる同志の中に内通者がいるか、あるいはスマシを盗聴されているのか。「家臣共に信じて貰えぬ」と嘆いていることと、「信用ならねェ マネしやがって…」という発言からは、やはり部下のお庭番衆からの情報ではないように思えます。

オロチの部下では無く、かつオロチに通じていて隠密を得意としている人物といえば、CP-0が最も疑わしいです。彼らはジョーカー（ドフラミンゴ）を失い、武器の闇取引をワノ国と直接することになって、オロチから足元を見られていますから、オロチの言うことを聞く可能性は十分にあるかと思います。

気がかりなのは、オロチの常影港へのルートを遮断する破壊工作では、兎丼の囚人採掘場にいたヒョウ五郎らは問題なく常影港に辿り着くことができてしまうことです。オロチは兎丼の占拠を誤報だと認識していますから、当然、兎丼はノーマークになるわけですが、集合場所にも囚人採掘場にも誰もいないというのは不可解です。また、スマシに誰も応答しないというのも、今回明かされたオロチの工作だけでは説明がつきません。これに関してはカリブーを疑ってもいいかもしれません(笑)。

おそらくこれも別件ですが、九里の「おこぼれ町」が農園の食糧の盗難の濡れ衣を着て、ホールデムに焼かれた一方、花の都門外の「えびす町」には再び丑三つ小僧が現れ、お金をばら撒いたようです。しかし、都で泥棒の話は出ていないという点が気になるところです。本当に丑三つ小僧の仕業なのかどうかも定かではありません。康イエは注目を集めるために丑三つ小僧を騙っただけですから、結局、丑三つ小僧の正体は明らかになっていません。丑三つ小僧の仕業ではないとすると、お金がばら撒かれたのは「えびす町」だけかもしれません。元より財力がある人物で、かつ康イエが身を置き世話をしていた「えびす町」に密かに施しをしようとしている人物の仕業となるでしょうか。ここでも何となく狂死郎を思い浮かべてしまいます。登場している人物で、正体が謎なのはもう彼ぐらいしかいないですからね。

また、討ち入りのために用意した船は本当に破壊されてしまったようなので（サニー号は頑丈なのでおそらく無事？）、この状況を打開するのは本話でも待望されているジンベエの登場（インペルダウン脱出の時のようにジンベエザメの大群を引き連れて）あるいはネコマムシと侠客団の登場（白ひげ海賊団の残党を引き連れて） しか残されていないように思えます。突飛な打開策としてはトキトキの実の能力で1年スキップするという手もありますが、現実的ではないのでやはり前者が予想されます。



・鎖国する理由
本話では光月おでんが家臣たちに遺したとされる「ワノ国を開国せよ」という言葉（819話）の前文が明らかになっています。

光月おでん：いいか お前達………!!
　　　　　　何百年と続くこの”鎖国”には光月に深く関わる理由があったのだ
　　　　　　ーーそして やがて時は満ちる
　　　　　　世界が動き始める…その前に「ワノ国」を開国せよ!!!

前回の回想でおでんはロジャーと共にグランドラインを制覇した後にワノ国を開国させる意思を固めた様子が窺えましたが、この時おでんは、ワノ国が鎖国してきたのは光月家に関わる理由があったと悟ったようです。光月家に関わる理由とは、もちろん光月家が”歴史の本文”を作った一族であることが関係していると考えられます。世間からは断絶されているという点では光月家とゆかりがあるモコモ公国も類似しています。世界政府に敵対していた勢力だからという理由が安直ですが、最も分かりやすい気がします。

おでんの代までの光月家で特別だったのは古代文字の読み書きが密かに伝承されているという点ですが、それを以っておでんが開国をしようとしたとは思えません。それに、古代文字の読み書きは既におでんの代で途絶えてしまっていますから。逆に言うと、おでんが外海に出て世界の秘密を知った時点でワノ国が鎖国する意味を失ったとも見れます。

光月おでんは元々、ワノ国の鎖国の体制に不満を感じており、なぜ鎖国をしているのか疑問を持って海に出て、その理由が分かり、光月家が何者かを理解したわけです。元々、開国したい想いが おでん にはあったはずですが、世界が動き始める前に開国をするべきだと言うのは、当事者である光月家はその動きに乗り遅れてはいけないという想いからではないかと思われます。”動き”というのは前回の25年前の回想でロジャーとおでんが希望を託した20年以上先の”未来”に起きることです。

ワンピースが何かを知っている白ひげは、いつの日か数百年分の歴史を全て背負って この世界に戦いを挑む者が現れる、世界中を巻き込む”巨大な戦い”が起きると予言していました（576話）。ロジャーとおでんが託した未来とはおそらくこれを指しています。そして”巨大な戦い”には侍も参戦することでしょう。

そして本話から39年前のおでんの回想がスタートするようです。ここでは、920話で錦えもんが麦わらの一味に語ったおでんの半生が描かれ、暴力事件を繰り返して花の都を追われた経緯やオロチにハメられて処刑された顛末などが明らかになると思われます。次回以降、おでんのデザインもようやく明らかになることでしょう。