・光月おでん武勇伝その7
前回から引き続き、
26〜25年前の回想です。回想の流れ的に
光月おでんがロジャー海賊団の船に乗った後の話ですが、これはロジャーの最後の航海の話です。冒頭のW7でのシャンクスとバギーの喧嘩は原作19話のバギーの回想と同じものになっていたり(船のデザインが異なっていますが)、フランキーが知らないうちに実はロジャー海賊団の船員に会っていたエピソードなども描かれています。ロジャー海賊団は、歴史の本文(ポーネグリフ)、特に赤い石のロードポーネグリフを求めて航海し、
魚人島、
ワノ国、
ゾウでロード・ポーネグリフの写しを回収し、ついに4つのロード・ポーネグリフを揃えます。
当時より13年前(39年前)に記録指針(ログポース)の最終地点である〝
水先星(ロードスター)島〟に行き着いたロジャーは、最後の島にたどり着くためには4つのロード・ポーネグリフが必要であることを突き止め、既に
ビッグ・マムが持っていたロード・ポーネグリフの写しは おでん が加入する前から持っていました。
ロード・ポーネグリフの現在の所在について、ゾウにあるものを除く3つについて、ネコマムシの説明では(818話)、
カイドウと
ビッグ・マムがそれぞれ1つずつ所有しており、
残りの1つは所在不明という話でした。このことか、ビッグ・マムは26年以上前からずっとロード・ポーネグリフの1つを所有していながら、ロジャーとルフィに写しを取られ、先を越されていることになります。そして、カイドウが所有するものは元は光月家が所有していたものだと推察されます。
気になるのは、当時、魚人島にあったロード・ポーネグリフの所在です。
(左手前の船員はキングと同じ種族??)
魚人島に辿り着いたロジャー海賊団はネプチューンにより「海の森」にある2つのポーネグリフに案内されています。1つは赤い石のロード・ポーネグリフ、もう1つはロビンが「海の森」で発見した
ジョイボーイなる人物の謝罪文が書かれたポーネグリフです(628話)。しかし、現在の「海の森」にはロード・ポーネグリフは見当たらず、当時その場にいたネコマムシは魚人島にあったものを指して、所在不明だと言っています。つまり、ネコマムシは
魚人島からロード・ポーネグリフが消えたことをなぜか知っていることになります。
2つ並んでいる石の片方が消えたわけですから、誰かが持ち去ったことになります。ポーネグリフは基本的に写しを取ればいいものなので持ち去る必要はありませんが、持ち去る目的は「ラフテル」を目指して、他の誰かに先を越されたくないというものが考えられます。ビッグ・マムとカイドウがそれです。「ラフテル」を目指さなくとも誰かに行かせないという目的も考えられます。その場合は犯人は世界政府となるでしょう。
ロード・ポーネグリフを求めてロジャー海賊団がワノ国の海域に入ると、トキは熱を出して倒れてしまいます。船医のクロッカス曰く、緊張の糸が切れて長旅の疲労に襲われたとのこと。クロッカスはワノ国に寄港するついでに船を降りるべきだと言い、イヌアラシとネコマムシ、おでんも船を降りようとしますが、トキは自分のせいで おでん の旅を終わらせたくないと感じたのか、おでん がこのまま旅を続けないならば離縁するとまで言って おでん を船に踏み留まらせます。4年ぶりに戻ったワノ国には既に武器工場が建っているのが見え、錦えもんらは早々に異変を伝えようとしますが、トキがその言葉を遮り、おでん はワノ国と錦えもんらに背を向けて、まだ帰らないことだけを伝え、ロジャー海賊団は目的のロード・ポーネグリフの写しを手早く取って出航するのでした。
4つのロード・ポーネグリフを揃えたロジャー海賊団はついに”最後の島”の場所を突き止め、”最後の島”を目指して出航することになります。
ロジャー海賊団の見習いだった
シャンクスと
バギーは「ラフテル」へは行っていないという話でしたが、その理由はバギーは高熱を出したために”最後の島”への航海には同行せず、シャンクスはバギーの看病のために残ったためでした。この時シャンクスが「行くんだったら おれ達はいつか自分の船で行くよ」と、「ラフテル」を目指す発言をしているのは注目に値します。と言うのも、この時点で”最後の島”がどこにあるかは同行していないシャンクスとバギーでも知っているはずで(現に、古代文字が読めないシャンクスが「いつか自分の船で行く」と言っている)、ロジャー海賊団が解散した後に海賊をやっているシャンクスとバギーは「ラフテル」に行くことが出来たはずなのに、ロジャー海賊団以来、「ラフテル」に到達した者はいないからです。
バギーが行こうとして行けないのは分かるのですが、もし四皇のシャンクスが行こうとして行けないのであれば、「ラフテル」は場所がわかっているだけでは行けない場所だと考えられます。そもそも800年間、誰も到達したことがないという話ですから、偶然漂着するような島ではなく、潮の流れが島に寄せ付けないような迷路になっているのかもしれません。また、古代文字が読める者がいないと島に進入できないというのはありそうな話です。
・ラフテル
グランドラインの”最後の島”である「ラフテル」を目指すロジャー達は、前回から「ラフテル」のことを”最後の島”としか言っておらず、「ラフテル」という言葉は使っていませんでした。なぜなら、
「ラフテル」は”最後の島”に到達したロジャー達が付けた島名だったからです。
綴りは映画「ONE PIECE STAMPEDE」で「Laugh Tale」と明かされていましたが(意味は「笑い話」?)、島名は”最後の島”に
本当にあった”莫大な宝”を目の当たりにしたロジャー達の感想に由来しています。おでん の日記では”最後の島”で、”空白の100年”、”Dの一族”、”古代兵器”、ワノ国がかつて世界と接していたこと(つまり開国していた)など世界の全てを知ったとあり、そして「
涙が出る程 笑った」と書かれています。
ロジャーの感想は、
「ジョイボーイ おれは……!! お前と同じ時代に生まれたかった」
「とんでもねェ宝を残しやがって…!!!」
「とんだ笑い話だ!!」
というものです。ロジャー達は実際に笑い転げているので、この「笑い話」というは皮肉などではなく、本当に笑える話のようです。しかし、莫大な宝を前にして人は涙が出るほど笑うことは普通ありません。
笑いのタネは「莫大な宝」に秘密があるのか、800年以上前の人物「ジョイボーイ」の足跡なのか。
ジョイボーイは伝説の人魚宛てに、ノアに関して約束を守れなかった謝罪文をポーネグリフに記しているわけですが(628話・649話)、ロジャーの感想からは
”最後の島”に莫大な宝を遺したのはジョイボーイだと読み取れます。そうなるとロード・ポーネグリフなどもジョイボーイが仕掛けた遺跡なのかと考えてしまいますが、”空白の100年”の真相などは全く見えてきません。
笑いのタネが「莫大な宝」自体だとすると、ロジャーが「お前(ジョイボーイ)と同じ時代に生まれたかった」と言っているのは、当時、ジョイボーイが「莫大な宝」として遺したものが800年の経過で元の価値とは変わってしまっている、あるいは現在の価値観では異なるようなものが考えられます。それが何かはさっぱり分かりませんが。
しかし、
故さくらももこ先生と栄ちゃんの対談では、ワンピースを見つけたルフィ達にはちゃんと「
ご褒美」があると明かされており、”空白の100年”など世界の真実にルフィは興味がないでしょうから、上記の後者の場合だと、そのままではルフィにとっては肩透かしになってしまいます。後者の可能性を残すとすれば、ロジャー達はジョイボーイの遺志を継いで、自分たちのありったけの宝を”最後の島”に残したことになり、それはロジャーが処刑される時に言った言葉通りになります。
「おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ・・・」
「探してみろ この世の全てをそこに置いてきた」
しかし、これまで回想を見てきたところで、ロジャー海賊団がそれほどの富を持っているようには思えません。
一方、
上記の前者の場合はロジャー海賊団は”莫大な宝”をそのままラフテルに残し、ロジャーは自身の処刑に乗じて、ワンピースという”宝探し”を仕掛けたことになります。”莫大な宝”を譲る形になったのは、ロジャーは死期が近いために、自身が成し得なかったことを次世代に託したので、”莫大な宝”だけは奪うというのは海賊でありながらナンセンスだと思ったのかもしれません。
そうロジャー達が思ったのは、それがジョイボーイの遺志だったからではないでしょうか。
ジョイボーイは魚人島(の伝説の人魚)とある約束をして、その約束を守れなかったことを悔いており、”莫大な宝”と引き換えに、自身が守れなかった約束を代わりに果たしてくれというような願いを”最後の島”に隠していたのではないでしょうか。
それは古代兵器が関わる壮大な仕事です。
”最後の島”に辿り着く段階でかなり選抜されていますが(少なくとも古代文字が読めないと行けない)、海賊であるロジャー達はジョイボーイの遺志は関係なく、目の前にある”莫大な宝”だけを持ち去ることもできるわけです。800年以上前の故人の願いを馬鹿正直に守る奴はいないということもありますが、おそらく
ジョイボーイの願いが”莫大な宝”でも見合わない大仕事だったことに対して「笑い話」だとロジャーは言っているのではないでしょうか。
馬鹿正直に向き合うと、その”莫大な宝”と引き換えにとんでもない大仕事をやらなければならないわけですから、その”莫大な宝”を指してロジャーは「
とんでもねェ宝を残しやがって」と言うわけです。