・光月おでん武勇伝その9
前回から引き続き、
25年前の回想です。今回の回想では
光月おでんがワノ国に帰還してからカイドウを討つために立ち上がり、そして捕らえられる
20年前までの経緯が描かれています。
前回、花の都の城に一人で乗り込み、
黒炭オロチに斬りかかった おでん でしたが、オロチを斬ることはできませんでした。思い止まったのではなく物理的に斬ることができませんでした。というのも、オロチを将軍に仕立て上げることに協力したババア(黒炭ひぐらし)が
マネマネの実の能力者(
965話)だったのに対し、琵琶を鳴らしていた琵琶法師のジジイ(黒炭せみ丸)は現在はバルトロメオの能力である
バリバリの実の能力者であり、”バリア”で おでんの剣を寄せ付けなかったからです。
おでんはこの後カイドウと戦い、おでんの剣はカイドウに傷をつけているわけですが、この事実からバリバリの実の”バリア”は覇気ですら貫けない無敵の盾であることが分かります。その”バリア”を攻撃に転じることもできるバリバリの実の能力は計り知れないわけですが、ともかく、マネマネの実とバリバリの実という敵にすると非常に厄介な能力を黒炭のジジババは持っていたわけです。
オロチを成敗できないのならと、父
スキヤキがオロチは自分が帰ってくるまでの「将軍代理」に推したのならば、今すぐ「将軍」の座を渡せと おでん は切り替えますが、オロチはその条件は将軍スキヤキのものではなく、(スキヤキに化けた)ババアの虚言であり、ババアの虚言を信じた大名達が自分に「将軍」の座を空けてくれたのだから、将軍の座を渡す義理はないと返します。国の乗っ取りが黒炭の陰謀であったことを理解した おでん は、父の死は本当に病だったのかとオロチに問いますが、真相は明らかになっていません。
この時、おでんとオロチの間で
何らかの取引が交わされています。
そして数時間後、おでんは花の都の城の前で裸踊りをしていました。これを見てオロチやカイドウの部下達は笑い、正統な将軍の後継者である おでん の帰還に歓喜していた人々は失望し、やがて おでん への怒りに変わっていきます。おでんは週に一度、花の都に現れては裸踊りをして投げ銭をもらうという惨めな行動を繰り返し、結局、周囲に訳を説明せずにこれを5年間も続けることになります。これには九里の民衆も含めてワノ国中の民が おでん をバカ殿だと蔑むのでした。おでん がオロチと取引をして何か一人で背負い込んでいると察していた おでん の家族や家臣、わずかな恩人達を除いては・・・。
おでんの帰還から1年が過ぎた頃(24年前)、おでんはオロチから受け取った海外の新聞で、ロジャーの処刑により起こった大海賊時代の幕開けを知り、「大声で泣き、笑い、また泣いていた」とあります。レイリーもロジャーが自身の処刑を「大海賊時代の幕開けの式典」に変えたと表現して、「あの日ほど笑った夜はない…あの日ほど泣いた夜も…酒を飲んだ夜もない」と語っています(506話)。”最後の島”に到達して世界の真実を知り、次世代に託すことを決断したロジャー海賊団の者達はロジャーの処刑のニュースを皆、同じにように受け取っていたようです。
さらに、おでんの帰還から2年目(23年前)、「鈴後」で
百獣海賊団と
ゲッコー海賊団の戦争が勃発し、同時に刀神リューマの墓荒らし事件が発生したとあります。これは花の都の町奉行が言っていた「海賊騒ぎ」(
909話)のことで、やはり
モリアが言っていた「あの時」(456話)のこと、すなわち新世界でモリアがカイドウに敗れた戦いのことでした。
そして、おでんの帰還から5年目(20年前)、オロチが九里にやって来たことから事態は一変します。オロチが九里に新しく武器工場を立てたいと切り出すと、おでんは戸惑った様子で「
船の方は……!?カイドウと……」と何か言おうとして、オロチは「何の話だ?」と相手にしません。この様子から、5年前にオロチとおでんとの間で交わされた取引の約束が反故にされたことが伺えます。おそらく取引の内容は、おでんが城の前で裸踊りを何年続けたら、カイドウとともにオロチが海外に出て行くとでも約束したのでしょうか。おでんが「船の方は…」と尋ねているので、出国のために必要な船の建造に時間がかかるとでも おでん に言っていたのかもしれません。
結局、この取引はオロチとカイドウによる時間稼ぎでした。もし5年前の時点で、おでんが
ヒョウ五郎と手を組み、ワノ国中の侍と侠客が立ち上がれば、まだ部下が少なかったオロチと百獣海賊団の軍勢は分が悪いと考えたわけです。しかも、おでんに裸踊りをさせて人望を失わせ、統率力を削ぐことに成功しています。
約束がウソだったと知り、しかもヒョウ五郎が捕らえられ、反発したヒョウ五郎の子分は殺され、その妻は射殺されたことを聞かされた おでん は悔しさに打ちひしがれ、そしてついに家臣達とともにカイドウを討つことを決心します。しかし、これは完全に
オロチとカイドウによる挑発であり、もうヒョウ五郎も捕らえ、戦力を削いだ おでん の軍勢を相手にするには十分だというカイドウとオロチの判断でしょう。実際、鬼ヶ島へ向かおうとしていた おでんと赤鞘九人男をカイドウ率いる百獣海賊団が「兎丼」で待ち構えていました。
20年前はまだカイドウとジョーカーことドフラミンゴによるSMILEの取引が始まっていませんから、当然、百獣海賊団にギフターズは見当たりません。赤鞘九人男の相手ではありませんが、敵の軍勢は千人。
クイーンと
キングも参戦していたことから長期戦になりました。
ちなみに、現在消息不明の20年前の
傳ジローはこんな感じ↓
969話
六太?!
また、この戦いには当時「光月」の忍者軍だった
しのぶが加勢しています。もともと「光月」に仕えていた
福ロクジュ率いる御庭番衆は遂にオロチに寝返り、おでんに仕えることを夢見ていた しのぶ はもう城にいられなくなり加勢したとのこと。しのぶ初登場の際に「
『ジャングルの王者ターちゃん』のヂェーンのように20年前は嘘のように美人だったのかもしれません」(
921話考察)という感想を残しているのですが、今回の20年前のしのぶを見ると、本当に以前、栄ちゃんがアシスタントをしていた徳弘正也先生の『ジャングルの王者ターちゃん』のヂェーンの設定をイメージしたキャラクターではないかと思えてきます。そうでなければ、
ジュクジュクの実の副作用ですね(笑)。スベスベの実の副作用の真逆になります(笑)。
970話
「光月家」を裏切った忍者軍について、おでんは「バカ殿を信じられなかった者を責められやしない」と忍者軍を許し、それを聞いた しのぶ は悔しそうな顔をしています。しのぶ は天井から5年前のオロチとおでんの会話を聞いており(969話)、裸踊りの真相を知っていたものと考えられます。その事実を福ロクジュにも報告していたかもしれませんが、結局、忍者軍はオロチに寝返ってしまったと。おでんは許していますが、よく考えてみれば、そもそも将軍スキヤキの御庭番衆でありながら、オロチと黒炭のババアを城の中で好き勝手させるなよと、怒りも湧いてきます。そうなると、
福ロクジュ自体が黒炭と何か繋がりがあるのでは初めから怪しくなってきます。
ともかく、おでんを倒すには十分な時期だろうと喧嘩を仕掛けたカイドウでしたが、おでんの強さは想像を遥かに超えていたと言います。おでんにカイドウが斬られ、あわやというところまで攻め立てられましたが、モモの助に変身した
黒炭のババアが おでん の注意をそらした隙に、カイドウが おでん に決定的な打撃を与えて決着がつきます。
結局、最初から最後まで黒炭のババアにしてやられたことになります。もし黒炭のジジババが死ぬまで耐えることが出来たら、もしくは雷ぞうを使って暗殺することができたら、結果は大きく変わっていたことでしょう。そにしても一体何歳か分かりませんが、黒炭のババアが異様に元気なのがムカつきます(笑)。
捕らえられた光月おでんと赤鞘九人男の10人は3日後に「
釜茹での刑」で公開処刑されると言います。しかし、実際に処刑されたのは おでん だけのはずですから、捕らえられた際に おでん が庇い罪を逃れた
しのぶが暗躍するのではないかと思われます。
ジュクジュクの実の能力が役立ちそうな状況ですが、先ほどのジュクジュクの実の副作用が本当ならば、しのぶは自身の美貌と引き換えに忍者の里に伝わる秘宝「ジュクジュクの実」を食べたみたいな設定があったり、なかったり? それにしても鎖国しているワノ国でも妖術使いと呼ばれる悪魔の実の能力者は多いですね。悪魔の実はどこで成るものなのか未だ明らかになっていませんが、もしかすると木に成るものではなく、海の中で生まれて漂流・漂着する物なのかもしれません。