・光月おでん武勇伝その10
前回から引き続き、
20年前の回想です。ついにカイドウ討伐に出た
光月おでんは忍者軍の
しのぶを加えたたった10人の侍とともにカイドウの軍と戦い、おでんの圧倒的な強さにより対等かそれ以上に戦ったものの、
マネマネの実の能力者であるババア(黒炭ひぐらし)の工作により、おでんはカイドウに不覚を取られて敗れてしまいます。今回の回想は捕らえられた おでん と赤鞘九人男の10人の侍が
オロチと
カイドウによって公開処刑された模様です。
おでんは処刑の際に「煮えてなんぼのォ!!おでんに候!!!」という言葉を遺しており(
818話)、処刑方法はやはり「釜茹での刑」でした。水ではなく油を使っているため、”煮える”というよりは”揚げられていた”わけですが、そこを突っ込むのは野暮でしょう。
処刑される前、おでんはオロチとカイドウに処刑される十人全員が釜に入り「もしお前達の決めた時間耐えきった者がいたら解放してくれ」と条件付きで命乞いをします。これには、オロチは一瞬でも耐えられるはずがないと嘲笑い(直前に滑って落ちたオロチの家臣が一瞬で茹でられた)、カイドウはせいぜい余興の一環と捉えて「一時間」を指定します。
こうして処刑にかけられることになった おでんと9人の家臣達ですが、実際に死んだのは おでん だけなのは既に分かっています。それはこういう↓ことでした。
971話
釜に入った おでん に続いた家臣達を おでん は釜にかかっていた橋板の上に乗せて持ち上げ、そのまま支えます(ところで、おでんはあっさり手錠の鎖を引きちぎっていますが、錦えもん達も逃亡の際に自分で手錠の鎖を引きちぎっており、鎖が付いている意味はあまりないようです…)。油の温度は700度に達していると言いいます。板の上に乗せた10人の巨体を支えるだけでも尋常ではありません。
有名な「釜茹での刑」もそうですが、このシーンのモチーフになっているのは
石川五右衛門の伝説で間違いないかと思います。身内も全員極刑になったという五右衛門の処刑には様々な逸話があり、その一つに子供を守るために自分が死ぬまで子供を釜の中で持ち上げていたというものがあり、浮世絵にもなっています(逆に苦しませないで早く楽にさせるため、子供を沈めたという話もあるのだとか)。
おでんが釜に入ってから数分が経過した頃、公開処刑を見物していた野次馬たちは、叫び声も上げずに刑に耐える おでんの姿につまらないと勝手な文句を言い始め、野次馬の一人が言った「バカ殿」というヤジに、その場で処刑を見守っていた
しのぶは耐えきれずにその者に刀を向けて怒りの声をあげます。
おでんに命を助けられた しのぶ がてっきり公開処刑の際に暗躍するかと思っていましたが、ばっちり表に出てきた しのぶ はこれ機に公開処刑に集まった野次馬達に事の真相を伝えるべく演説を始めます。昼間に忍者装束で現れた しのぶ は、色んな面で”忍ぶ”ことができず忍者失格な気がしますが、必死な演説により、
ワノ国の人の おでん に対する誤解が一切晴らされるという大手柄をあげます。
オロチはただの独裁者ではなく、ワノ国に対する復讐のため国を滅ぼすために将軍の座についていること、オロチがカイドウへの貢ぎ物としてワノ国の人々を誘拐していたこと、おでんがオロチの誘拐を止めるために交換条件として毎週「黒炭家」への謝罪の裸踊りをしていたこと、おでんはオロチとカイドウが船を造って5年後に国を出て行くという約束を信じて一人耐えていたこと、おでんが毎週郷を巡って異変がないか見守っていたこと、しのぶ は5年前に目撃した おでん とオロチの会話、そして5年間のおでんの奇行の真相を語り、おでんのどこが「バカ殿」なのだと訴えます。
しのぶの話はワノ国の人たちが初めて聞く話で俄かには信じられないことですが、しのぶの話を信じた者がオロチに処刑の取りやめを訴えると、矢に撃たれて倒れます。それを目の当たりにした野次馬達は一気にそれが真実なのだと理解するのでした。おでんの奇行の真相は瞬く間にワノ国中に伝わり、公開処刑の野次馬達は一転して おでん に謝罪と応援を送ります。
謝罪と応援を素直に受け取り釜茹でに耐える おでん でしたが、約束の時間まで耐え切っても自分は殺されると察していました。この賭けは家臣達を生かすためであり、オロチとカイドウは自分の提案には乗ってくるだろうと読んでいたわけです。釜に入ってから20分ほどが過ぎた頃、おでんは家臣達に「
ワノ国を開国したい」という志を伝えます。しかし、自分はきっと殺されるので「
代わりにワノ国を開国して欲しい」と願います。「殺される」と表現していますが、実際は釜茹でを耐えたとしても、おでんは自分の体はもう持たないと察していたようです。それを察した
雷ぞうは「それならば共に成し遂げましょう」と言おうとする傳ジローを制し、ワノ国開国をおでんの遺志として受け止めます。
そして、ついに約束の一時間が経過し、釜茹での刑を耐え切った おでん でしたが、やはり約束は破られ「銃殺の刑」に変えるとして、おでん達に銃が向けられます。おでんは「
ワノ国を開国せよ!!!」と言って、橋板の上に乗っていた家臣達を釜を取り囲む敵勢の裏に放り投げ、おでんに遺志を託された家臣達はおでんに振り返らず、九里へと走っていくのでした。しのぶ もこの騒ぎに乗じて忍者軍の目を盗み逃げています。「
ワノ国を開国せよ!!!」、これが錦えもん達が最後に聞いたおでんの言葉でした(
819話)。
釜に残った おでん はカイドウに銃殺されますが、カイドウは おでん の豪傑ぶりに敬意を払っています。銃殺するのも、おでんの体はもう”死んでいる”と診て、せめてもの情けだとしています。また、死に行くおでんに「見事な死に様と お前は語り継がれる」とさえ言っています。さらに、ババア(黒炭ひぐらし)の横槍については、おでんに対して申し訳なかった謝罪もしています。あの後、ババアはカイドウに殺されたみたいです。
ババアの件について「悪かったな」と言うカイドウに対して、おでんは「せいぜい強くなれ」とだけ返しています。二人の中では1対1の勝負では おでん の方に分があったという認識なのでしょう。
そして意外だったのは、
おでんの最期の言葉は「煮えてなんぼのォ!!おでんに候!!!」ではなく、「煮えてなんぼのォ!!」であり、ここでカイドウに脳天を撃ち抜かれます。さっきまで、カイドウはおでんに多少の敬意を払っていたのに最後まで口上を言わせてやれよって感じですが、「煮えてなんぼのォ!!」に続く「おでんに候!!!」の部分はおでんの死を目の当たりにしたワノ国の人たちによる
コール&レスポンスでした。そして、これが豪快なおでんの最期の言葉としてワノ国の人たちに伝えられたようです。
ところで、おでんの回想をここまで振り返ると、
傳ジロー=狂死郎の説への期待が高まってきました。回想では傳ジローが金勘定が得意で九里の金庫番をやっていた程度しか狂死郎との共通点はなく、説を裏付けるような決定的な伏線は出ていませんが、ここまでオロチやカイドウに出し抜かれていた様子を見ると、狂死郎の正体は傳ジローで、オロチに一泡吹かせて欲しいという気持ちです。仮にそうであれば、傳ジローもそのように考えて味方も騙して徹底的に狂死郎を演じているのではないかと思われます。そして、狂死郎=傳ジローが小紫=日和を斬ったと見せかけて命を助けたことも理解できます。
・20年後の未来
トキがモモの助と錦えもん達をどうして「
20年後」にタイムスリップさせたか、錦えもん達も知らされておらず、20年という数字の根拠は不明でしたが、これもまた
おでんの遺言だったことが明かされています。
おでんはカイドウ討伐に出立する時に、おそらく自分にもしものことがあったらと申し添えて、手紙をトキに渡していました。おでんの訃報を聞いたトキは おでん から渡されていた手紙を開きます。そこにはこう書かれていました。
20年以上先の話ー
世界ではおそらく大海を分かつ程の”巨大な戦(いくさ)”が起きる
つまりあと20年もすれば……
その”巨大な戦”の主役達が新世界に押し寄せる
カイドウを討てるのはそいつらだ
ワノ国には長い冬が来る
トキ お前の能力を使ってほしい
もしおれが死んだら…
この後はトキが手紙を破ってしまって書かれていた内容は分かりませんが、おそらく家臣達とともに20年後にタイムスリップしてほしいという旨が書かれていたはずです。そして手紙を破ったトキは「見てておでんさん20年後の未来」と言っています。
「20年後」という数字は おでん が大海賊時代の幕開けから推察した数字ではなく、25年前に魚人島の海で聞いた海王類の声が根拠になっています(
968話)。シャーリーの占いと照らし合わせて、
「20年後」に人魚姫が”ポセイドン”の力を覚醒することをロジャーと おでん は信じていたわけです。そして、海王類の声が真実ならば、ここは
968話の考察の内容になりますが、時を同じくして”
ジョイボーイ”が現れると予想されます。「巨大な戦」については白ひげが言っていた「巨大な戦い」と同じことでしょう。白ひげが言う「巨大な戦い」は最後に会ったロジャーの受け売りでしょうから、そこまではジョイボーイと人魚姫が再び出会った時に起こると予想された未来なのでしょう。
おでんは錦えもん達にワノ国開国の夢を託した際、事情を詳しく説明していませんが、
ワノ国が鎖国したのは「光月家」だったこと、
それは”巨大な力”からワノ国を守るためだったこと、一方で
ワノ国はある人物を待っており、その人物が現れた時に迎え入れ協力できる国でなければならないことを伝えています。
ワノ国に帰る時に おでん は「
いつか”ジョイボーイ”が現れる日までに”開国”せねば」(
968話)と発言しており、ここで言うある人物とは「ジョイボーイ」で間違いありません。また、”巨大な力”とは現状もそうであるように「世界政府」のことを言っていると考えられます。ジョイボーイが現れる時代まで鎖国するという目的は、800年の経過のうちに失われて、光月家では古代文字の読み書きだけが継承されていたわけです。
さて、
ジョイボーイが現れた時、ワノ国の光月家は何を協力するのでしょうか。ルフィ=ジョイボーイだったとして、古代文字を読めるロビンは既に仲間におり、光月家では古代文字の読み書きは おでん で途絶えてしまっています。その上、
おでんは古代文字の読み書きが自分の代で途絶えることを危惧している様子はありません。つまり、ワノ国がジョイボーイを迎え入れて協力する上で古代文字の読み書きは必要ではないということです。
おそらく必要なのは光月家の血筋。やはり、
モモの助=古代兵器(ウラヌス)という考察(
968話)に落ち着きそうな感じです。
実は今回・・・
やる夫にはどうしても言いたいけど言えないことがあるお
でも これを言うときっと
しのぶ にヒステリックに怒られるからやめておくお
<しのぶ
(見聞色の覇気かお!?ッッ)