ー『ONE PIECE』との出会いについて教えてください。
『ONE PIECE』のアニメ化が決まった時、オープニング主題歌の歌詞を決めるコンペに参加する事になり、『週刊少年ジャンプ』で読み始めたのがきっかけでした。当時だと”偉大なる航路”に入る前のお話が連載されていて、これから何かが起こりそうなワクワク感が満ち満ちていたのを覚えています。すぐにコミックスを全巻集めて、あっという間に読み終えてしまいました。
ーその時のコンペで生まれたのが「ウィーアー!」だったのでしょうか?
そうです。当時のアニメ制作陣が歌詞を重視されていたので、詞先でコンペが行われました。まだ作詞家として駆け出しの時代だったので、「やってやるぞ!」という情熱だけ強く持って挑みました。詞を考えていく中で、未知なる世界にも目を光らせて立ち向かうルフィに、自分を重ねていた部分もあったと思います。わりとすぐに採用が決まって、思い返せば田中公平先生とコンビを組んだのも、この時が初めてでしたね。
ー田中さんは、「(藤林さんの)あの詞がメロディを書かせてくれた感じはある」とおっしゃっていましたが(ONE PIECE magazine Vol.7「田中公平が視るONE PIECE」より)、藤林さんから見て田中さんの作曲はいかがでしたか?
もともと「ウィーアー!」は、サビから始まる楽曲ではなかったんです。田中先生が「ありったけの」という詞に着眼してくださって、今の形になりました。子どもが真似して歌うには早口だしテクニカルすぎるんじゃないか?みたいな意見もあったんですが、田中先生の強い押しのおかげで、今でも評価していただける作品になりました。田中先生は作詞した私でさえも驚くフレーズにフォーカスを当てて、メロディの力でキャッチーに際立たせてくださるので、聴きどころがどんどん乗算されていくんです。…たぶん、私と田中先生は感覚が似ているんじゃないかと思います。私も、作詞する上ではカッコつけるよりも、遊びを含んだ斜め上の歌詞を書きたくなる性格なので、その変態性が合うのかなと(笑)。私が言うのもおこがましいんですけど、相性がいいのかなと感じています。
(ONE PIECE magazine Vol.11「藤林聖子が語る『ONE PIECE』の詞」より)