『
るるぶONE PIECE』に掲載されている物件は約90件ほど。
そのほとんどのネタ出し作業を編集協力という形で私が行いました。
この解説シリーズでは、ネタ探しの裏話や誌面のスペースの都合で伝えきれていないネタの解説、掲載に至らなかったネタなどを紹介していこうと思います。
お手元に『るるぶONE PIECE』がある前提で書いていますので、本誌と一緒にお楽しみください。
今回は
アーロンパーク編の伝えきれていないネタ・未掲載ネタについて解説します。
アーロンパーク編は「麦わらの一味ゆかりの地へ!」の特集でナミのゆかりの地として掲載されています。
麦わらの一味のゆかりの地を別の特集にすると編集部から聞いた段階では、モデル地のリストにナミのゆかりの地はなかったので、これは探さなくてはいけないということになりました。
「
ココヤシ村」については実は以前に何度か探したことがあり、見つけることができなかった題材でした。半ば諦めて、今回は旅行ガイド誌に載るということで、
ヤシの木が生えてそうな適当なリゾート地でいいだろうと、バリ島に狙いを定めたのが上手くはまりました。
建物自体はそれほど似ていませんが(あとバリ島の街並みの写真素材が少ないのが難点)、屋根については
バリ島の伝統的なオレンジ色の瓦屋根がココヤシ村の家の屋根の特徴に表れているように見えます。
ゲンゾウが座っていたり、ゴサの村の海岸で見られる
藁葺きのパラソルはバリ島のビーチでよく見られるものです。
誌面の
棚田のネタは編集部が見つけて入れてくれました。確かに、ココヤシ村で見られる水田は平地なのになぜか碁盤の目状じゃないんですよね。ヤシの木と水田があるので、地理的にはやはり東南アジアがモデルなのだろうと思われますが、バリ島だと裏付ける材料にはアーロンパークと
バリ島のヒンドゥー教の寺院のつながりがありました。
バリ島のヒンドゥー教は他の地域のヒンドゥー教と異質で、寺院の構造も独特です。山の中央をくり抜かれたような形の門は
割れ門と呼ばれるもので、バリ島でシンボリックなものです。境内にある山のような構造物は
パドマサナというもので、バリ・ヒンドゥー教の世界観を表しています。パドマサナの頂上にはバリ・ヒンドゥー教の唯一神のための玉座があるそうです。
アーロンパークの正面の門から見た配置はバリ・ヒンドゥー教の寺院の構造からインスピレーションを得ているのではないかと思われます。正面の門は
割れ門のような構造をしていますし、アーロンパークの建物本体は
パドマサナに相当し、頂上は支配者であるアーロンを象徴するノコギリザメになっています。さらに、周りにある小さい屋根のある建物は、バリ・ヒンドゥー教寺院の境内にある供物置き場などの東屋に相当する気がします。
誌面にはロケーションにアーロンパークの雰囲気がある二つの寺院を載せてもらいました。一方はパドマサナではなく、これまたバリ・ヒンドゥー教寺院で特徴的な構造物の
メルと呼ばれる多重塔です。
また面白いことに、
バリ島のヒンドゥー教寺院はその後、とある国として『ONE PIECE』にそのまま登場しています。
854話
メルとパドマサナらしき構造物(厳密に言うと多分、別の名称の多重塔)が見えますよね。
バリ・ヒンドゥー教の総本山「ブサキ寺院」。とある国のモデルがどこか言えば、ここになるでしょうか。
私の中でギャグ枠と思っているネタも編集部にいくつか送っていて、ナミのゆかりの地の誌面にはワンピースでお馴染みになった「
びっくり顔」が採用されています。実は
ゴサの村についてもギャグ枠を送っていました。
↓これなんですが・・・
ギャグ枠なんだからいいでしょ?w
これはUpside down houseというもので、中も家がひっくり返ったような構造になっていて、面白い写真が撮れるアトラクション施設です。国内はよく知らないですが、世界各地にこういった施設があります。オレンジの町はナミのゆかりの地と言えるものではないので、個人的にはこちらを誌面に載せて欲しいと思っていました。
オレンジの町として載っているドイツのローテンブルク(ドイツの観光地としてド定番)は私の中では雰囲気だけのネタなので実のところかなり微妙なのですが、るるぶワンピースを読んだ普段おそらく海外旅行に馴染みがない人がTwitterで「オレンジの町が素敵」だとツイートしているのを見て、ワンピースをきっかけに現地に興味を持ってもらうという、編集コンセプトとして当初掲げた目標が果たせているので、それはそれで良かったかなと思いました。
『るるぶONE PIECE』解説シリーズ 〜ウォーターセブン編〜(次の話)
『るるぶONE PIECE』解説シリーズ 〜空島編〜(前の話)
『るるぶ ONE PIECE』はこうやって作られました。(制作の裏話)