・火前坊
祗園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。
これは小中学校の国語で誰もが聞いたことがあるであろう、平家の隆盛と滅亡を描いた軍記物『平家物語』の冒頭部分です。本話では、
オロチが鬼ヶ島で戦う両軍について「驕れる者は久しからず」と述べており、話タイトルには「諸行無常の響きあり」の一節が引用されています。
この平家物語の冒頭部分は全ての物事は変化し、栄えているものはいつか必ず滅びるということを述べており、とりわけ驕っていたのはオロチ本人ですから、「驕れる者は久しからず」と言うオロチには特大のブーメランがブッ刺さるわけですが、オロチはそう言って、両軍諸共、滅ぼそうとしているようです。
1014話で錦えもんに斬られた
カン十郎は死にかけていたものの、まだ息があり、オロチはスマシでカン十郎に呼びかけて奮い立たせ、カン十郎は最後の力を振り絞り、
フデフデの実の能力を発動した後、倒れます。
カン十郎:ご覧に入れます…最期の舞い「黒炭心中」が”急”!! 火前坊
「急」と言っているのは、舞などに使われる3本立て構成「序・破・急」のことで、つまり最後ということです(シン・エヴァの序・破・Qはこれに掛けている)。大衆演劇の一座に生まれた黒炭カン十郎は、光月として生きる復讐劇を演じることをオロチに任じられており(974話)、この復讐劇の題目はどうやら「
黒炭心中」だったようです。正体がバレた以降が「破」になり、題目は黒炭家は滅ぶけど、他も全て滅べって感じでしょうか。
「
火前坊」とは妖怪の名前に由来しています。その妖怪は全身が燃えている坊主ですが、フデフデの実の火前坊は
墨の炎の化け物のようです。
オロチは鬼ヶ島の地下(最下層)にある武器庫の存在を知っており、ここに着火させ全てを吹き飛ばすつもりのようで、移動中の火前坊は最終的には地下の武器庫を目指すと思われます(オロチはカン十郎に「根深き黒炭家の怒りはこの城を練り歩き最後には奈落へと歩み」と言っている)。とは言っても、オロチはヘビヘビの実 幻獣種 モデル八岐大蛇の特殊な能力によりライフを複数(おそらく5)残していると思われ(1010話・
1026話)、鬼ヶ島で心中するつもりはなく、福ロクジュ(現在、雷ぞうと戦っている)と合流次第、島を脱出するつもりのようです。
ところで、火前坊についてはよく分からない点があります。
死にかけのカン十郎が最後の力を振り絞って能力を発動し倒れたのであれば、これは今度こそカン十郎が死んだことになるはずですが(
カン十郎自身も「最期の舞い」と言っており死を自覚している模様)、そうだとすると、
火前坊は能力者が絶命しても消滅していないことになります。また、火前坊がただの炎の化け物であれば、城が燃えている状況には変わりないため、火前坊には簡単に消火できないなどの特殊性があるのではないかと推察されます。
そこで考えられるのが、
火前坊が能力者の命を賭した能力ということです。能力者の命を懸ける技はオペオペの実に存在するとされており、そのような可能性はあるわけです。火前坊のデザインからは、なんとなくパンクハザードのスマイリー(スライム)も連想されますが、あちらはゾオン系能力によるものなので、その可能性は今は否定しておきます。
ともかく、カン十郎の怨念(魂)が火前坊になって練り歩いているような印象を受けるわけですが、先に述べたように火前坊は水で簡単に消火できそうにありません。この火前坊をどうやって止めようかと考えた時、可能性の1つに、死んだ
カン十郎からフデフデの実の能力を奪い取ることが考えられます。黒ひげ海賊団がやっている能力者狩りを誰かがやるのです。
カン十郎とカン十郎に斬られた
菊之丞、カイドウに斬られた
錦えもんがいるのは城内1階の屋根裏。ここに今、
ウソップとお玉のキビキビの能力により仲間になったキリンのSMILE・
ハムレットと
錦えもんの下半身(!?)が向かっています。
おかしな話(笑)ですが、カイドウに胴を切断された錦えもん(ただし、1015話の描写では腰に背中から剣を突き刺されただけのように見える)はパンクハザードでローに斬られた時と同じように下半身が一人歩きして、助けを求めに来たのでした。下半身の発声はオナラでしたね。
錦えもん自身も生きていることに驚きながら、
ローに斬られた体がちゃんとくっついていなかったことが原因と思っているようで、実際、そのような解釈になるのだろうと思います。オペオペの実の能力で一度斬られると、見かけ上はくっついていても、完全に元通りにならないということになります。そして奇跡的に切断面が同じだったと。結構、無茶苦茶な話だと思いますけど、まぁ、面白さ重視でw
もし、カン十郎からフデフデの実の能力を奪い取るというような展開になるのであれば、この場合、ハムレットが能力者狩りについて知っており、能力を奪い取る者はウソップが有力候補になるかもしれません。ここに来て、ウソップが能力者になるとしたら驚きの展開ですけどね。それに関わらず、鬼ヶ島で麦わらの一味のパワーアップ展開が続いているので、ウソップのパワーアップもそろそろあるかもしれません。
・大混戦
ライブフロアから退場していた
アプーは「岩戸の間」にいました。おそらくアプーを追って来た
ドレークに対して、アプーは第3者同士が戦う必要はないとして(アプーはドレークの正体を推測で「海軍のスパイ」と見抜いている)、共闘を持ちかけています。したがって、アプーも百獣海賊団を裏切ったようです。
岩戸の間には
ナンバーズで未登場だった
一美(インビ)、
二牙(フーガ)、
三鬼(ザンキ)の3人がおり(笑い方が「イビビビビ」「フガガガガ」「ザキキキキ」と、なんとも分かりやすい奴ら)、アプーは彼らを従えて、鬼ヶ島の決戦に決着がついた時、満身創痍の勝者を叩き、漁夫の利を得ようとしているようです。
義理堅そうなドレークが鬼ヶ島で麦わらの一味を裏切るとは思えませんが、鬼ヶ島にいるCP0に伝えられた政府の方針は、カイドウが敗北した場合、世界政府非加盟国のワノ国を世界政府が直接支配することですので(
1028話)、場合によっては海軍のドレークに利がある話です。
孤軍のドレークは置いといて、現在、鬼ヶ島には百獣海賊団、ビッグ・マム(海賊団)、侍同盟、オロチ軍、CP0、アプー&ナンバーズの6勢力があることになります。CP0とアプーは戦いが終盤になると動き出すはずですから、終盤になるにつれて混戦を極めてそうです。
・ローとキッドの覚醒能力
対
ビッグマム戦にて、
ローと
キッドが
覚醒能力を使用したようです。ローの技は分かりにくいですが、その前のローとキッドの会話の内容から、覚醒能力だと見られます。
ローとキッドは既に能力が覚醒しているようですが、まだ使用に慣れておらず体力の消耗が激しいため、安易に使うことはできないようです。しかし、覚醒能力を温存したままビッグ・マムと戦っていても決定打に欠けるため、キッドはローに覚醒能力の使用を提案しています。
キッド:おいトラファルガー……!! お前の能力は「
覚醒」してんのか?
ロー:まだ慣れてねェ…死にかけなら使うが……
体力の消耗が尋常じゃなく戦闘の命取りになる!!
キッド:おれもそうよ…このままじゃ埒が明かねェ
”
取っておき”使って援護しろ!!
”
KROOM(クローム)” ”
麻酔(アナススィージャ)”、”
衝撃(ショック)” ”
波動(ヴィレ)”
キッドが言う「取っておき」がローにとっての覚醒能力とは限らないわけですが、
覚醒能力が能力者周囲の人・モノに影響を与えるものだとすれば、
「KROOM」は対象の物体にオペオペの実の能力を与える技と解釈されます。
オペオペの実の能力は本来、能力者を中心に作られる「ROOM」内で、能力者は切断(アンピュテート)やシャンブルズなどの様々な技を使うことができるというものです。したがって、能力者に対する「ROOM」が、能力を与えられた対象の物体に対する「KROOM」という関係になっていると思われます。
「KROOM」が与えられたローの剣(鬼哭)はビッグ・マムを安易と貫通し、出血もしていません。これはオペオペの実の能力で言うところの切断(アンピュテート)に相当するものだと思われます。痛みもなく斬ることができる剣に変わるので、「KROOM」を与えられた剣は”麻酔(アナススィージャ)”というわけです。
「KROOM」に技としての意義があまり感じられないような気もしますが(そもそも、オペオペの実の能力が覚醒能力のような振る舞いをしている)、オペオペの実の切断攻撃は覇気でガードがすることができるようですから、
通常であればオペオペの実の能力によりビッグ・マムを切断することはできないはずで、そこに「KROOM」の有効性はあると見られます。イメージ的には能力の強度が高いということなのでしょうか。
内部から破壊する武装色の覇気や覇王色を纏ってビッグ・マムに有効打を与えることができないローはKROOMによってビッグ・マムの内部に攻撃し、有効打を与えることに成功しています。
これに乗じて、
キッドはビッグ・マムに「磁力」を与えています。
キッド:「磁力」をやるよ ”
付与(アサイン)”!! ”
磁気激突(パンククラッシュ)”
元から覚醒能力のような振る舞いをしているオペオペの実に対して、ジキジキの実の覚醒能力はこのように非常に分かりやすいです。ジキジキの実の能力は能力者が磁気で鉄などを自在に操るというもので、キッドは覚醒能力によりビッグ・マムに強力な「磁力」を与え、これによりビッグ・マムは城内の鉄筋に押し潰されるのでした。