・ジェルマ66のあゝ無感情海遊記
短期集中表紙連載 第25弾。このシリーズでは、ホールケーキアイランド編の事件以降のジェルマの様子が描かれています。
Vol.4「科学の及ばぬ生物」
Vol.3にて、
ニジと
ヨンジがモンドールのブクブクの実の能力により人間標本されてショコラタウンに展示されていることが判明しましたが、二人は脱出の際に
ビッグ・マムと交戦して敗れた模様です。
・ビッグ・マムの断末魔
前回、覚醒能力を織り交ぜた波状攻撃により
ビッグ・マムをついに追い詰めた
ローと
キッド。
しかし、キッドのとどめの”
電磁砲(ダムドパンク)”(レールガンと”反発(リペル)”を組み合わせた射撃技と見られる)を浴びてもまだ耐えるビッグ・マムは、「
魂への言葉(ソウル・ポーカス)」を発動し、50年分の寿命を差し出すか、奴隷になるかをローとキッドを含めた周囲の者たちに語りかけます。
ソウルポーカスは、相手がわずかでも死を恐れた場合に効力が発動し、ソルソルの実の能力により寿命を奪うという技です(863話)。周囲にいた百獣海賊団、ハートの海賊団、キッド海賊団の船員達が寿命を奪われる中、ローとキッドは一切寿命を奪われておらず、死にかけのビッグ・マムに微塵の恐怖も感じていませんでした。
「お前の断末魔の叫びは…さぞ耳障りだろうな」
「おれの恩人ならこうしただろう」
と言うローはここで味な技を繰り出しています。
〝R・ROOM(リルーム)〟〝凪(サイレント)〟
〝お前の影響で出る音は全て消えるの術〟だ
オペオペの実の能力の基本技「ROOM」の応用技と見られる「R・ROOM」は、「ROOM」を遠隔で発動する技のようです。能力者が手術室(ROOM)で手術するのではなく、
遠隔で手術するリモート手術というわけです。手術ロボットを使った遠隔手術は現実世界でも行われ始めています。Rはリモート(remote)のRでしょうか。
また、技の始動(小さなROOMが手に現れる)が覚醒能力の「K・ROOM」と似ており(
1030話)、名前も対になっていること、通常の「ROOM」による直接攻撃はビッグ・マムのような覇気の強い相手には通用しないことから、
「R・ROOM」も覚醒能力だと考えられます。
ただし、
技の威力自体が特別に向上したわけではなく、ROOMが対象への追尾式になっただけのように見えます。実際、今回は
ビッグ・マムが発動したソウルポーカスから船員達を守るために技を使っており、おそらく体力の消耗は「K・ROOM」に比べると通常小さいと考えられます。
しかし、この「R・ROOM」こそが、能力者の命を懸けたオペオペの実の
不老手術(761話)を可能にする覚醒能力ではないかと予想します。つまり、
手術の内容により体力の消耗は異なるのではないかと。
今回は、コラソンことロシナンテが最期にローにかけた
ナギナギの実の能力「お前の影響で出る音は全て消えるの術」(767話)を模した手術をビッグ・マムに施しているわけですが、このような手術は「R・ROOM」でのみ可能なのかもしれません。
ミザリー(
前回、ビッグ・マムが生み出したホーミーズ。プロメテウスとヘラが合体したものと思われる)がビッグ・マムを助けようとしますが、これをローが一刀両断。キッドは”電磁砲(ダムドパンク)”の追撃を発射し、ローが前回「K・ROOM」「衝撃波動(ショックヴィレ)」で作った竪穴に、ビッグ・マムは落下しています。
1039話
前回、ローが「K・ROOM」で伸ばした剣の剣先は上空を飛ぶ鬼ヶ島の地下を突き抜けて地上の地中にまで到達しており、その距離13 km!なんて冗談を言っていたのですけど、
今回描かれた地中の竪穴の断面図を見ると、その深さは浮上する鬼ヶ島から地面までの距離よりもさらに深く、底が知れません。
落下途中、ビッグ・マムは「おれがこれしきで死ぬと思うなよ」と思考しており、私も『ONE PIECE』で落下死はナンセンスだと思いますが、この巨大な穴に落ちたわけですから、ビッグ・マムと言えどただでは済まないことでしょう。勝者は「ローとキッド」だとナレーションが付き、ビッグ・マムはついに退場となりました。
新世代に敗れることになったビッグ・マムは落下する間、「大海賊時代」で新世代が台頭する切っ掛けを作ったロジャーに愚痴をこぼすように語りかけており(回想の可能性もある)、
ワンピースの正体についてはやはり知らないわけですが、ビッグ・マムの見解が垣間見えています。
(おい ロジャー お前 なんであんな事言い出しやがった!?)
(世界はまんまとのせられた 「大海賊時代」!?)
(お前は死ぬからいいけどよ!! 世界中で名乗りを上げるガキ共の相手すんのはおれらだぞ!!!)
(教えて死ねよ!! 「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」!!)
(ちゃんとあんだろうな!!)
(
何がある!? どこにある!!?)
(
この国にもあるんだろ?)
(ああ口惜しい!!)
この落下最中のビッグ・マムの思考は演出上の回想のカットインの可能性もありますが、その場合、ワンピースの正体について「何がある!? どこにある!!? この国にもあるんだろ?」の「
この国」がどこの国を指しているのか不明になります。落下最中の思考であれば、「この国」とは
ワノ国のことを指しており、仮に回想だったとすると、ワノ国もしくはビッグ・マムがナワバリとしていたリュウグウ王国を指している可能性が高いです。
しかし、結局のところ、ビッグ・マムは真相には一切近づいておらず、
ワノ国(もしくはリュウグウ王国)に重要なヒントがあるぐらいの手がかりしか掴んでいないのだと思います。それが「何がある!? どこにある!!? この国にもあるんだろ?」という言葉に表されています。
なお、ビッグ・マムは落下途中、鬼ヶ島の地下の武器庫にて
火前坊と接近しており、
その際、火前坊が弱体化し、消えて無くなりそうな状態になりました。
これはおそらく、落下するビッグ・マムが藁をも掴む思いで手を伸ばした際に、
火前坊の魂(ソウル)を吸い上げたのではないかと思われます。火前坊は「カン十郎の燃える怨念」(1036話)とされていますから、実体はなく、その正体はソウル。これに対抗できたのは鬼ヶ島においてブルックとビッグ・マムだけだったわけです。
つまり、ブルックがヤマトと一緒に地下の武器庫に行って、窮地を救うという展開も練られていたのではないかと見られます。ブルックとヤマトがニアミスした
1032話がその分かれ道でした。
・ジョイボーイの仲間
ワノ国近海に出現した象主(ズニーシャ)(
1037話)の存在に”声”で気づいた
モモの助。
光月おでんの航海日誌を読んで(
1014話)真相に近づいているモモの助は、今回、ズニーシャについて「
800年前 罪を犯した ジョイボーイの仲間」だと言っています。
これはジョイボーイが800年前に罪を犯したと言っているのではなく、ズニーシャ本人が「私は大昔に罪を犯し」と告白しています(
821話)。罪を犯したのが空白の百年に相当する「800年前」であること、「ジョイボーイの仲間」であることが今回明らかになったことです。
ズニーシャは「
命令に従い続けて」「
ただ歩く事しか許されていないのだ」と語っており、その命令はモモの助の「
戦う」許可により一時的に解除することができました(821話)。一体誰の命令に従っていたのか。少なくともズニーシャとコミュニケーションが出来る者のはずで、実際、モモの助がズニーシャに命令できたことを踏まえれば、
その命令の主がジョイボーイであることが考えられます。ただし、ズニーシャに直接命令したのはジョイボーイの仲間である可能性が高そうなモモの助と光月おでんの先祖、つまり光月家の昔の当主かもしれません。
命令の主が仲間であるジョイボーイだとすれば(遺言に相当するわけですが)、命令に従い続けているのはズニーシャの意思によるところが大きいと考えられます。おそらく、
本来の命令の意図は非暴力的な手段でミンク族ら(ロード・ポーネグリフの秘密も)を敵から守るためのものであり、戦う許可は本来の大義を果たすために必要だったのだと考えられます。
また、ズニーシャが「罪を犯した」と言うのは、自責の念によるものだと類推されます。
ジョイボーイは何かを成し遂げられず、伝説の人魚宛てに、約束を守れなかった謝罪文を歴史の本文(ポーネグリフ)に記しています(628話、649話)。
その失敗の原因となる決定的なミスをズニーシャが犯したのではないでしょうか。
ジョイボーイは後世にポーネグリフを遺し、伝説の人魚は生まれ変わり、Dの意志(それが何かは分からないが)は受け継がれていますが、空白の百年から生き続けているズニーシャは”次の機会”を自責の念を持ちながらずっと待ち続けていたわけです。
そしてジョイボーイの命令は時限付きのもので、ただ歩く事しか許されないのは、”時が来るまで”ということだと思われます。その”時”とは”次の機会”、それはつまり、ズニーシャが
本来の使命を果たす時です。
そのために、ズニーシャはワノ国にやって来たのかもしれません。
と、何か分かっている風に締めたてみたものの、その壮大な使命で何が行われるのか、それがどうやって「笑い話=ラフテル」(967話)に繋がるのか、まださっぱり分からないというワンピースの奥深さよ・・・