・覚醒
前回、ドクロドーム屋上の決戦はクライマックスを迎え、
カイドウの”砲雷八卦”に対して、
ルフィは最後の力で”覇猿王銃”を繰り出し、どちらが勝つのか!?…というところにルフィの暗殺を命じられた
CP-0の横槍が入り、ルフィは何もできずカイドウの”砲雷八卦”を真正面に受け、倒れてしまいました。3度目の敗北です。
カイドウのサシの戦いを邪魔したCP-0は、既に覚悟を決めた様子で逃げる素振りを見せず、カイドウに処刑されています。
この時、
モモの助やローはルフィの”声”が消えた異変を感知しています。カイドウはおそらくルフィの”声”が消えたことを認知して、ルフィは死亡したと判断し、鬼ヶ島で戦っている者達にルフィの敗北を伝え、侍達に降伏勧告を行うのでした。
ルフィ死亡の知らせにより、侍側の士気は著しく低下し、取り乱す
ナミの様子などが描かれています。物凄く不穏な話タイトル「一緒に死のうよ!!!」は、降伏するなら戦って死のうという旨で、
ヤマトがモモの助に言った言葉でした。
この時、ルフィは死んでいたのか、それとも気絶していただけだったのか。
ルフィが復活する直前の上のコマでは、「ドクン…」と心臓が拍動したようなオノマトペが添えられていることから、
心停止した仮死状態だったのではないかと思われます。
敗戦ムード濃厚な中、ルフィが復活したことに
ズニーシャが真っ先に気づいています。
ズニーシャ:(懐かしいな)
モモの助:ズニーシャ 何がでござる!?
ズニーシャ:(”
解放のドラム”が聞こえる
800年振りに聞く……!! 間違いない そこにいるぞ)
モモの助:誰がでござる!?
ズニーシャ:(
ジョイボーイが…!! 帰って来た!!!)
ルフィ???:
にかっ!
勝ちまんた。
…失礼、これは今度こそルフィが勝ちましたね。
何やらルフィに異変が起き、ここ数話(
1037話、
1041話)で
五老星らが危惧していた
ゴムゴムの実の覚醒がついに起きた様子です。この1ページ余りのルフィ復活劇にはいくつも語るべきことがあり、何から話そうかという感じなのですが、まずはルフィの復活と能力の覚醒から触れていきましょう。
1)ルフィの復活と覚醒
ルフィの復活で真っ先に目につくのはビジュアルの変化です。
髪の毛がドレッドヘアのようにまとまり、なんだかニョロニョロと逆立っています。それに加えて、
先ほどまで死んでいた?あるいは死にかけていた割(腕は骨折していたように見える)に、なんだか元気そうです。
これらのことがゴムゴムの実が覚醒したお陰であるとして、ゴムゴムの実の覚醒能力を予想すると、それは
全身を本質的にゴム化するものではないかと考えられます。
体を変化させるパラミシア系能力やロギア系能力は覇気によって”実体”をとらえられてしまいます(597話)。ゴムゴムの実の能力によりゴム人間となっているルフィも、”実体”はただの人間であり、覇気によって能力を剥がされれば、ゴム人間ではないわけです。
本質的にゴム化すれば、”実体”もゴム人間となり、覇気によって能力を破ることは不可能になります。これにより打撃ダメージは完全に無効になるはずです。本質的にゴムとなれば痛さも感じないので、斬撃ダメージも無効になるかもしれません。たとえ体が斬られても、ゴムが溶けてくっ付いて固まるとか。また、本質的にゴムになったことで、ギア4における覇気の消費を抑えることが可能かもしれません。
そのような能力が覚醒したことにより、ルフィの体に変化が起き、負っていたダメージが無効化され、ルフィは元気になったのではなかろうかと思うわけです。キャベンディッシュ/ハクバのように、別の人格が覚醒したということも考えられなくはないですが(そのため台詞に「ルフィ???」と記載した)、その場合、ルフィのような別の何かになってしまうため、これは否定したいところです。
髪の毛のビジュアル変化はまた別の理由(後述と絡む)がありそうですが、変化する根拠として髪の毛すらゴム化してしまったということではないかと思われます。
2)ジョイボーイ
1037話の五老星の会話から、
過去何百年も覚醒が確認されていないゴムゴムの実(※実際は「あの実」としか言及されていないが、
1041話のルフィ暗殺の勅令により確定)について、以前に覚醒した事実はもはや伝説となっていることが分かります。そして、五老星はその覚醒を恐れています。
このことから、
過去にゴムゴムの実を覚醒させた人物は
ジョイボーイであることが強く示唆されていました(
1037話考察)。
そして今回、
ルフィがゴムゴムの実を覚醒させたことで、ジョイボーイの仲間だった
ズニーシャ(
1040話)は「
ジョイボーイが…!! 帰って来た!!!」と発言しています。ズニーシャのこの発言は、ルフィを直接指したものではなく、
ジョイボーイ特有の特徴(後述)を感じ取ったことによります。
800年前に生きたジョイボーイが帰って来たと言うと、スピリチュアルな発言に聞こえてしまうわけですが、ゴムゴムの実の覚醒した特徴がジョイボーイ特有の特徴であるのであれば、不自然な発言ではありません。
その名前が意味するところから、薄々分かっていたことではあるのですが、
「ジョイボーイ」という名前は本名ではなく異名のようなものだと考えられます。
「ジョイボーイ」という名前はゴムゴムの実の覚醒後に付けられた名前ではないかということです。
Joy Boy = 喜び 少年
なぜ、そんなニックネームが付けられたのか。
それはゴムゴムの実の覚醒した状態と関係がありそうです。
3)解放のドラム
ズニーシャが「ジョイボーイが…!! 帰って来た!!!」と確信する理由は、”
解放のドラム”と呼ばれる
ドラム音が聞こえているからです。
ドンドットット♪ ドンドットット♫
と鳴っています。
拍動の「ドクン…」というオノマトペから始まったので、不整脈になったのかとハラハラする…人は流石にいないか(笑)。ともかく、このドラム音は劇中で何度も登場しているテレパシーの類の
”声”のようです。
これがジョイボーイ特有の特徴であり、ゴムゴムの実の覚醒した特徴だと見られます。
なぜ覚醒すると音が鳴り始めたのか原理はさっぱり分かりませんが、
なぜ「解放のドラム」と呼ばれているのかは推察ができます(後述)。それは「ジョイボーイ」という異名が付けられた理由にも関係していると思われます。
それを語る前に、興味深いことに「解放のドラム」の特徴的なオノマトペは『ONE PIECE』の劇中のある場面で実は既に使われています。それは、どこかというと
ジャヤと
空島です。
287話
400年前のシャンディア達が神を崇める儀式の際にこのリズムを叩いており、ルフィらとの宴の際にもシャンディア達がこのリズムを叩いていました。シャンドラは”歴史の本文”を敵から守っていた古代都市であり(290話)、ジョイボーイとの関係は深いと見られますが、古代都市シャンドラは400年前の時点で既に滅んでおり、シャンディアの子孫達には空白の100年の真相は伝わっておらず、先祖代々のしきたりだけが受け継がれていました。
そこで、シャンディア達が叩いていたドラムの音は”
解放のドラム”に由来するものと考えられます。おそらくジョイボーイが神格化された、あるいは元よりシャンディア達に信仰されていた神と同一視されたのではないかと思われますが、それについてはまた後述です(後述多いのな!)。
なぜ「解放のドラム」と呼ばれるのか。
なぜ「ジョイボーイ」と呼ばれるのか。
まだ続きます。
4)太陽の神ニカ
”
解放のドラム”と聞いて真っ先に思い浮かべたのは、ジョイボーイではなく「
太陽の神ニカ」(
1018話)です。
ジョイボーイと太陽の神ニカの同一性については
1018話時点で既に考察しているわけですが、
太陽の神ニカとは太古の昔に「
奴隷達がいつか自分達を救ってくれる」と信じた伝説の戦士であり「
人を笑わせ苦悩から解放してくれる戦士」(1018話)だと伝えられています。
1018話
太陽の神ニカの伝説は世界政府にとっては都合が悪いようで、この話を囚人(フーズ・フー)に漏らした看守は消されたとのこと(1018話)。すなわち、
太陽の神ニカのモデルは空白の100年に実在した人物である可能性が高く、それがジョイボーイではないかという話になります(
1018話考察)。
そして、「
奴隷達がいつか自分達を救ってくれる」と信じていたことから、ジョイボーイの目的は
奴隷の解放だったのではないかと推察されるわけです。
改めて
1018話考察の結論を書き出します。
世界政府に滅ぼされた「巨大な王国」の思想は世界政府にとって危険なものだったとされていますが(395話)、それが仮に
奴隷の解放(人種差別打倒)であり、その先陣に立ったのが
太陽の神ニカ=ジョイボーイだったとすれば、
巨大な王国は世界政府と敵対して滅び(395話)、地上で奴隷を解放できなかったために魚人族の「タイヨウの下に王国を移す」という夢(621話)を叶えることができず(魚人族にとって地上を安全な場所にすることができなかった)、ジョイボーイが伝説の人魚宛てに、約束を守れなかった謝罪文を歴史の本文(ポーネグリフ)に記す(628話、649話)、
という具合につながります(
1018話考察)。
そして今回、ジョイボーイ特有の特徴とみられる”
解放のドラム”も、
太陽の神ニカ=ジョイボーイの説を裏付けるようなものとなっています。
その呼び名に加えて、「
人を笑わせ苦悩から解放してくれる戦士」という部分です。
我々現代人には感覚として共感しにくいところがありますが、シャンディアのような古代文明人にとって、楽器や音楽は
極上の娯楽だったはずです。そのような中で
楽器の音を奏でながら戦う強い戦士がいたとしたら、どうでしょう。しかも、その戦士は
ゴム人間です。
「ジョイボーイ」という異名はこの戦士を形容する言葉だったのではないでしょうか。
実際にジョイボーイに救われた奴隷達は物理的に解放されるわけですが、そんな戦士がいると知った奴隷達も救われたのかもしれません。これが「人を笑わせ苦悩から解放」してくれるという部分に当てはまるのかもしれません。
ただし、この一節は「
笑い話(ラフテル)」(
967話)に関わるものかもしれないため、なんとも言えません。
ともかく、太陽の神ニカ=ジョイボーイの説は有力で、空白の100年に活躍した通称「
ジョイボーイ」という名前は世界政府によって歴史から消され、その後、ジョイボーイが神格化した「
太陽の神ニカ」が魚人族ら奴隷達の間で人知れず信仰されていたということだと思われます。
「太陽の神」という言葉自体は400年前のシャンディア達が儀式で崇めていた自然の神々(他に雨の神、森の神、大地の神)のうちの1つに登場していましたが(287話)、太陽の神ニカの逸話は魚人族のタイヨウ信仰に強く結びつくものだったため(
1018話考察)、重要視していませんでした。しかし、今回シャンディア達のドラムのリズムが”解放のドラム”と同一だったことから、
シャンディア達が信仰していた「太陽の神」と「太陽の神ニカ」は同一のものだと考えられます。
そうなると、
太陽の神ニカのイメージ(1018話)とシャンディアの姿が似ていることなどに重要な意義が生まれてきます。それは
ジョイボーイがシャンディアだった可能性です。
シャンディア達は「
先祖を神の様に尊敬している」と言います(290話)。仮にジョイボーイがシャンディアの戦士だったとすれば、神格化されるのは自然なことと言えます。
シャンディアの「太陽の神」のモデルがジョイボーイなのであれば、他の神々にもモデルがあるのではないかという考えが生まれてくるわけですが、それには打って付けのモデルがあります。それはジョイボーイの仲間(
1040話)だった
ズニーシャあるいはそれを従えた
光月家の当主などです。
海王類あるいは
伝説の人魚姫(ポセイドン)もこれに当てはまります。
光月家の当主が
ウラヌスだとすれば(
821話考察)、残るは
プルトンで、
3つの古代兵器がシャンディアの神々のモデルになっているのではないか(雨の神=ポセイドン、森の神=ウラヌス、大地の神=プルトン?)と思うわけですが、プルトンに関しては設計図が存在するため(399話)、プルトンを設計した人物がこれに当てはまるのかもしれません。
「ニカ」の名前の由来は、知られていないジョイボーイの本名の可能性もあれば、歯を見せて笑う笑顔の”にかっ”というオノマトペに由来している可能性もありますが、どうやら後者が有力です。
なんと言っても今回、覚醒した様子のルフィが
「にかっ!」と笑っています(べダだな、おいw)。
5)ルフィの”声”
ところで、”
解放のドラム”に関連した仮説には
ジョイボーイの”解放のドラム”が周囲の誰にでも聞こえているという前提があります。つまり、
”解放のドラム”は見聞色の覇気の素質を持たない者にも聞こえる”声”だと考えています。
そう考えるのは、ルフィがカイドウによって海に落とされた際の出来事(
1015話)があるからです。
1015話
この時、ルフィがズニーシャのようにテレパスが使えることが明らかになった上に、”声”を聞く力(おそらく見聞色の覇気と同じ概念)に優れた
モモの助だけでなく、海に沈んだルフィの近くを潜航していた
ハートの海賊団の船員たちもルフィの”声”を聞いています。
鬼ヶ島でルフィの”声”を聞いたのはモモの助だけであることから、やはり”声”を聞く力には優劣があるわけですが、一方、
”声”自体にも大小や性質があることがこれらの出来事から分かります(
1015話考察)
つまり、ルフィの”声”は見聞色の覇気の素質を持たない者にも聞こえる性質を持っているわけです。”
解放のドラム”がなぜ発せられるかは分かりませんが、
この”声”の性質はゴムゴムの実を覚醒させる素質の要件だった可能性が高いです。それに加えて”D”でしょうか。
伏線と仮説が複雑に絡んでいる話なので、紐解くために随分話が長くなってしまいましたが、大体、触れるべきことには触れられたと思います。
シャンクスについても触れておきたいですが、今回はこれぐらいにしておきます・・;