・ふざけた能力
前回、
ルフィのギアシリーズの最終形として
ギア5(フィフス)がお披露目になりました。ギア5はルフィが予め持っていた切り札ではなく、ゴムゴムの実こと
ヒトヒトの実 幻獣種 モデル ニカが
覚醒したことにより初めて体現された獣型です。
1044話
前回の戦闘でも、「
世界で最もふざけた能力」(1044話)と称されるその能力の片鱗が見えましたが、今回の戦闘ではその能力が存分に発揮されています。申し訳ないですが、今回、ちょっと画像多めです(誰に謝ってるんだか)。
1)周囲をゴム化する
ルフィ周囲の地面がゴム化している様子を確認できます。
この様子を見てカイドウは
超人(パラミシア)系能力の覚醒と判断していることから、従来の仮説通り、
パラミシア系能力の覚醒は能力者以外の他にも能力が影響を及ぼす(785話)ことだと確定されました。元々、他に影響を及ぼすパラミシア系能力が覚醒したらどうなるかは分かりません。
一方、
動物(ゾオン)系能力の覚醒は異常なタフさと回復力(544話)です。
じゃあ、自然(ロギア)系能力の覚醒はどうなるのだろう?と当然思うわけですが、ロギア系の覚醒能力者はまだ確認されていません。
カイドウは覚醒の特徴からパラミシア系能力が覚醒したと推察したわけですが、実際はゴムゴムの実はゾオン系能力であり、その覚醒の特徴は規格外となっています。
これもひとえに、幻獣種 モデル ニカの特殊性によるもので、神、言わば、
”超人”である太陽の神ニカと化したことで、「
空想のままに戦う」(
1044話)というニカの超人的な能力を発現したことで、
パラミシア系能力の覚醒のように見えているだけだと思われます。
”超人”をモデルとしたゾオン系能力なので、ゴムゴムの実にはパラミシア系とゾオン系の二重性があるとも解釈はできますが、ゴムゴムの実は「ゾオン系」に分類されているわけですから(1044話)、悪魔の実の系統分類の上では前者の解釈の方がしっくりきます。
2)巨人化する
ルフィが巨人化している様子を確認できます。技名は”
ゴムゴムの巨人(ギガント)”。
これは
ギア3では腕や足を部分的に巨人化することが限度だったのに対して、ゴムゴムの実の覚醒による「
自由」の付与(
1044話)により、全身を巨大化することが可能になったものと考えられます。
服もビッグサイズになっている点については、もはや『ONE PIECE』では
Don't think, feel. 考えるな、感じろ。
(『燃えよドラゴン』より)
てな感じです。
3)他人もゴム化する
周囲の物だけでなく、他人(カイドウ)すらゴム化している様子を確認できます。
先述のように、カイドウは「他に影響を与える」という覚醒のパターンからパラミシア系能力の覚醒だと推察したわけですが、自身がゴム化したことには驚いている様子です。
カイドウ:くそ…!! どうなってんだ!? おれの体はゴムじゃねェぞ!!
ただし、
通常のパラミシア系能力の覚醒でも他人に影響を与えうることは確認されています。分かりやすいのはキッドの
ジキジキの実の能力の覚醒で、”付与(アサイン)”によりビッグ・マムに磁力を与えていました(
1030話)。
カイドウの眼球の裏に侵入するシーンは空島編でウワバミの眼球に入ったルフィ(277話)を彷彿させます。ギア5の戦いぶりについて、
前回のコメントでは
映画『マスク』(1994)を連想する方がいたのですが、今回の戦いぶりを見て、まさしくそうだなと思います。
そもそも、
前回の考察では「
空想のまま」(1044話)という表現を「
漫画的」と捉えたわけですが、本話でカイドウはルフィの戦いぶりについて「
まるで絵物語」だと形容しています。
映画『マスク』のコンセプトは、
謎の木の仮面をつけると主人公(演:ジム・キャリー)がアニメ・漫画のような振る舞いをする超人的な怪人に変身するというもので、劇中でも「
アニメ(漫画)じゃないんだし」という旨の台詞が出てきます。そして、
漫画的に戦うキャラクターを具現化した映画『マスク』ではギア5との類似点を多く見出すことができます。
『マスク』の主人公は、漫画の人物(つまり
ゴム人間 ←
手塚治虫『マンガの描き方』)のような振る舞いをしており、
その能力は周囲の物やヒトに物理的に精神的に影響を与えています。
4)派手に痛がる
ゾオン系能力の変形により「
体はゴムそのもの」(1044話)になっているギア5のルフィについては、
打撃ダメージが完全に無効になると私は予想していて、
前回の考察ではカイドウはルフィに対して有効な攻撃手段を持っていないと言及したのですが、
カイドウの金棒(八斎戒)のトゲは明らかにゴム人間にダメージが有効なタイプなので(トゲの形状について説明されているのは何巻のSBSだったか)、ルフィにダメージは普通に通るのでした・・・てへぺろ☆。
追記)ゴム人間に効くトゲについては60巻のSBSでした。これを参照すると、カイドウの八斎戒のトゲがゴム人間に効くタイプなのかどうか微妙なところです。八斎戒のトゲはゴム人間に効くタイプのトゲよりは鈍く、ゴム人間に効かないアルビダの金棒のトゲよりは鋭いように見えます。
八斎戒のトゲがゴム人間に効かないタイプなのであれば、覇王色の覇気を纏うことでダメージを有効化していると解釈されます。原理は知らんけど。(追記終)
それは置いといて、やたらと痛がる様子のギア5ルフィについてです。
目や舌が飛び出たり、ぺちゃんこになったりする様子も
映画『マスク』で見ることができます。また、映画の中では銃に撃たれて死にそうになる演技をしたりもしています。
一方、ルフィがカイドウの”引奈落(ラグならく)”を喰らって派手にタンコブを作っている様子は、武装色の覇気を持っていないナミに殴られてタンコブを作ったルフィを連想します。結局、
これらの痛がる様子さえも「漫画的」であり「空想のままに」戦う太陽の神ニカの体現なのだと思われます。
実際、ルフィのたんこぶは一瞬で消えてしまいます。まぁ、これはいつものことか。
映画『マスク』で見られる
周囲の人に精神的に影響を与える点(映画では主人公を捕らえようとして取り囲んだ警察が歌って踊り出す)については、ギア5では描かれていませんが、”解放の戦士”こと太陽の神ニカについては「
人を笑わせ苦悩から解放してくれる戦士」(
1018話)という言い伝えがあり、これが能力による周囲への影響という可能性もなきにしもあらずです。
さらに、
映画『マスク』については、
銃で撃たれた体の穴から水が溢れるというコミカルなシーンもあるのですが、これは
クロコダイル戦の水ルフィ(200話)に非常に似ています。
映画『マスク』の公開時期(1994)は『ONE PIECE』連載前(1997)ということもあり、
ルフィの能力構想に非常に大きな影響を与えたのではないかと思われます。もし、ギア5の構想のきっかけが映画『マスク』にあったとすれば、初期構想からギア5が考えられていたことになるわけでして、非常に興味深い話です。
映画『マスク』は今回改めて見直したのですけど、私が小学生の時にたぶん5回ぐらい観た記憶はあります。もし、観たことがない方がいれば、是非、観て欲しいですね。
・死の予兆
前回の考察では覚醒したルフィの今後の不安要素として
寿命による自然死について言及していたわけですが、今回明らかになったギア5の性質はその懸念を増幅するものでした。
ギア5ではギア4の覇気の著しい消耗というデメリットが無くなった代わりに、
体力を著しく消耗するというデメリットがあるようです。しかも、獣型の変形が解けた直後、
ルフィが急に老いぼれてさえいます。
ギア5を解除した後の変化なので、このルフィの一時的な老化はギア5特有のコミカル表現ではなく、
実際に一時的に老化していると見られます。
ゾオン系能力の反動による能力者の老化現象は、シーザーの調合によるランブルボール使用後のチョッパー(
ベビジジー)でも確認されているため(
1017話)、理解しやすいところです。
ともかく、ギア5の発動は体を酷使することは間違いなく、一度膝をついたルフィが再びギア5を発動すると、
カイドウは「
おい死ぬぞ」と警告しています。麦わらの一味だけでなく、カイドウにすら体を心配されるルフィ。大丈夫か、おい…。
ギアシリーズの登場以降、ルフィは常に体を酷使してきた印象があるというか、周りから体を心配されている描写があり(加えて、インペルダウン編では毒の治療のために寿命を10年削っており、頂上戦争編ではイワンコフのテンションホルモンを2回打って体に鞭を打っている)、ずっと仄かに死が漂っているんですよね。
ルフィがオペオペの実の能力による「不老不死」の手術を受けるという予想(
1044話考察)・・・もしかして結構、確度高いんじゃ?
・白いルフィの問題点
本話の
カイドウと
ヤマトの発言から、ギア5(獣型)のカラーは「
白」であることが判明しています。
ヤマト:髪も服も白くなって別人みたい
カイドウ:何なんだコイツは…!! 真っ白に姿を変え「武装色」も「覇王色」もまとい…(略)
服までも白くなっている点については、アレですよ・・・
Don't think, feel. 考えるな、感じろ。
(『燃えよドラゴン』より。本日2度目)
気になるのは武装色の覇気を纏っているというルフィの体が黒く描かれていない点です。拳すら黒く描かれていません。これは武装色の覇気が視覚的に描写されていなかった超新星編ならおかしなことではないのですが、新世界編では不自然に感じられます。
そこで、
ルフィの色が白に変わるという変化が武装色の覇気による黒い変化すらも白で覆っていると解釈するとその不自然さは解消されます。
一方、ヤマトの発言から体が白くなっているかどうかは分かりません。カイドウの「真っ白に姿を変え」という発言からは変化した色が純白なのか、全身真っ白なのか、どちらかだと解釈できます。
ルフィの体は白くなっているのか、白くなってはいないのか。
コイツ何言ってんだ、という風にほとんどの人が思っていますよね・・;
普通の少年漫画であれば、これは何一つ気になるようなことではないのですが、『ONE PIECE』の今後の予想される展開を考えると、ルフィの体が白くなっているとすると
少々面倒くさい問題が発生することになります。
詳しくは
1018話の考察を参照してもらうとして、太陽の神ニカは「
奴隷達がいつか自分達を救ってくれると信じた伝説の戦士」(1018話)だと言われており、ジョイボーイがルフィと同じく太陽の神ニカの能力者だったと類推されることから(
1043話)、ジョイボーイは
奴隷の解放(人種差別打倒)のシンボルだったと推察されます。
そして、世界政府が敵である『ONE PIECE』の結末が、少なくとも人種差別の打倒に向かっていくことは明白で、
ジョイボーイとなるルフィがその急先鋒となるわけです。
前回の1044話の記事には「
ゴムの救世主」というタイトルをつけたのですけど、仮にルフィの体が白いとすると、『ONE PIECE』が「
白人の救世主」というジャンルものに不本意ながらピタリと当てはまってしまいます。
「白人の救世主」は映画において白人が非白人の人々を窮地から救うというストーリーに対する比喩表現で、ジャンルものとしても確立されています。「白人の救世主」の何が問題なのかと言うと、今の時代では、人種差別主義の裏返しとして捉えられて嫌われる場合があります。
最近では、アカデミー賞を受賞した『グリーンブック』(2018)が典型的な「白人の救世主」に当てはまるために批判も浴びました(実話をもとにした話ですけど)。ただし、結局、アカデミー賞を受賞している通り、「白人の救世主」が満場一致で批判されるものではありません(というか、寧ろ「白人の救世主」はアカデミーでのウケが良い)。
しかし、『ONE PIECE』に変なレッテルが貼られてしまうのはなるべく避けたいところです。日本人には関係ない話なのですけど、欧米の潜在的な人種差別主義はそれほど根強いんですよね。漫画は世界展開をしていますし、別件ですが白ひげ海賊団の海賊旗デザインを連載途中で変更した経緯もありますからね。
そして、
私が一番嫌なのは批判を浴びて変更・謝罪するような事態です。
(横井庄一さんの件もあったなぁ・・・「
『ONE PIECE』89巻の作者コメントについて」)
仮に、ルフィの体が白くなるのだとしたら、多少の批判は覚悟して表現の自由を主張しろよって話です。それが出来ないのなら、ルフィの体は白くしない方がいい。大体、どこの出版社も漫画編集部はコンプライアンスが正常に機能してないんだからさ、表現の自由って便利よね(ぇ
なんか変な話になってしまいましたが、そういう事態になったら嫌よね、という話。
でも仮に、体の色に変化が無いのだとすると、どうして武装色の覇気が描画されていないのかという謎が残ります。
もう、しょうが無いなぁ・・・
Don't think, feel. 考えるな、感じろ。
(『燃えよドラゴン』より。本日3度目)