フジテレビ「ワンピースバラエティ 海賊王におれはなるTV」4月26日放送


番組ロゴ・題字：尾田栄一郎

週刊少年ジャンプ作品史上初の地上波冠バラエティ番組「ワンピースバラエティ 海賊王におれはなるTV」の放送第20回。今回の放送はアニメ劇場版（『ONE PIECE FILM』シリーズ以降の作品）について、当時のONE PIECE担当編集（大西恒平さん、杉田卓さん）が語る制作裏話とともに作品を見返すという回でした。

番組はFOD（フジテレビオンデマンド）でも視聴可能です。

恒例の山内さんのコスプレは寅さん海軍本部中将・茶豚（トキカケ）。



＜『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』（2009年公開）＞

・尾田栄一郎のオープニングのこだわり


『STRONG WORLD』に関するインタビューは多数あり、逸話も多いです。元は感動ものの『クリスタル航海記』というプロットを栄ちゃんがほぼ完成形まで書き上げましたが、作品の方向性を誤ったとして自らボツにしてスタッフに謝り、公開時期を1年間延長したというのは有名な話です。

栄ちゃんは「オープニングフェチ」と自称するほど「映画はオープニング」が大事という持論があり、オープニングのタイトルロゴが出るまでのシーンや演出、本編導入の流れなどを指示した資料は、映画入場者特典だった『ONE PIECE』巻零（0巻）に掲載されています。

ちなみ、にオープニングの音楽は栄ちゃんが昔から好きだったという小西康陽さんの曲のイントロをベースにしたものとなっています。

逆に監督の境宗久さんは「映画はエンティング」が大事という持論があったので、『STRONG WORLD』は全体を通した中身はともかく（映画好きで、映画作りが初めてだった栄ちゃんが好きな演出を色々と詰め込みすぎた感がある）、オープニングとエンディングはしっかりしたものになりました。

ところで、オープニングが良かった最近の映画と言えば『アーミー・オブ・ザ・デッド』（2021年）で異論はないですよね？



・何度も録り直したナミのラストシーン

『STRONG WORLD』の音貝(トーンダイアル)のナミの音声が流れるラストシーンは栄ちゃんが考えたとっておきのシーンで、アフレコは言い方や間など、かなりこだわって録り直しが行われたそうです。

ナミ：みんなの前から黙って立ち去る事を許してください。
私はシキの一味で航海士をすることにしました。
シキはたとえルフィ達が逆らっても絶対に敵わない伝説の海賊。
みんなが私を追って来てくれても命を落とす結果になる。


・・・・・・これだけ言っておきます。


・・・・・・必ず、助けに来て！

（エンディングクレジット〜主題歌Mr.Children『fanfare』が流れ始める）

『STRONG WORLD』の作品の良かった点のかなりの比重を占めるだろうミスチルによる書き下ろし映画主題歌『fanfare』。

「ONE PIECE FILM」シリーズから栄ちゃんが劇場版の制作に協力することになった契機は、東映アニメーションの清水プロデューサーの策略であるわけですが、最初に依頼したのは、劇場版10作目のプロットでした。初めは依頼を頑なに断っていたという栄ちゃんですが、結局折れて、プロットを引き受ける代わりにダメもとで出したリクエストが「主題歌はミスチル」という条件でした。これも有名な逸話です。

実際に主題歌がミスチルに決定したのは映画制作の決め事の一番最後でした。つまり、栄ちゃんは「主題歌はミスチル」になると信じてプロットを書き始めたわけですが、主題歌担当にミスチルが決定した頃にはプロットどころか、ずっぽり映画制作に関わり、製作総指揮という立場になっていました。

栄ちゃんは、（完璧主義者の）自分がこうなることを清水さんは最初から見据えていたのではないか、最初の依頼は「罠」だったんじゃないかと回顧していますw

一方、ミスチル側は、オファーを快諾しています。ボーカルでバンドの楽曲制作を担う桜井和寿さんは『ONE PIECE』の存在すらしらなかった時に、娘が観たいと言って一緒に映画館で観た『ONE PIECE』の映画が良かったという経験があったそうです。そして、ドラムスの鈴木英哉さんとベースの中川敬輔さんが『ONE PIECE』ファンだったことも要因だと言われています。



＜『ONE PIECE FLIM GOLD』（2016年公開）＞

・ラスベガスの本場のショーにこだわったオープニング


『GOLD』もオープニングに相当注力されています。ラスベガスのショーをイメージしたシーンとなっており、物語の舞台もラスベガスのイメージがあるため、ラスベガスでロケハンも行われています。

カリーナとテゾーロが歌唱する劇中歌は小島麻由美さんの制作、ダンサーの振り付けはUSJのプレミアショーで演出や振り付けを担当している金谷かほりさんのモーションキャプチャーにより行われています。これは初出しエピソードではないです。



・映画タイトル誕生秘話

制作中の映画タイトルは、実は初め「ゴールドラッシュ」だったものの、当時原作担当だった杉田さんの編集の先輩（井坂尊さん。当時、メディア担当）が「GOLDでよくね？」と発言をきっかけに、確かにそうだということになり、タイトルが変更されたそうです。

杉田：「FILM GOLD」という名前だったから、「担当も髪を金髪にしよう」って、その先輩と喜んで金髪にした時期があって、思い出深いですw

尾田さんは担当二人が金髪にして、めちゃめちゃ喜んでました。ゲラゲラ笑ってました。

ジャンプ編集部にも大ワンピース新聞が到着！相関図がでけェ！各地域ごとに順次発売していくので実物をチェックして下さい!!<ジャンプ編集部・井坂>
※現在・メディア担当編集・井坂はGOLDヒット祈願で〝金〟髪にしています。 pic.twitter.com/pzSS5bps8M

— 『ONE PIECE FILM RED』【公式】 (@OP_FILMRED) June 24, 2016

・劇場版のキャッチコピーを考えるのは・・・

劇場版のキャッチコピーは映画の制作に関わっているスタッフ全員（宣伝部、プロデューサー陣など）が案を考えていて、それを無記名の候補案（何百という数になる）として、その中から栄ちゃんが選ぶそうです（「ONE PIECE FLIM」シリーズから？）。そして、キャッチコピーに選ばれた人には栄ちゃんのサインが贈られるそうです。



『GOLD』のキャッチコピー「この男に、賭ける。」は実は杉田さんの案だったそうですが、栄ちゃんからは「（君だったら）サインいらないか」と言われ、結局、サインは貰えなかったのだとか(笑)。杉田さんはこの件について未だに納得していないみたいですw



・週刊連載の時間を割いて作ったクライマックスシーン

連載ネームが上がってこない週があり、杉田さんが徹夜で待っていたところ、栄ちゃんから送られて来たのは映画クライマックス用のネームだったという話。これも初出しではないです。

テゾーロとの戦闘シーンの34枚にも及ぶネームは映画入場者特典の『ONE PIECE』巻七七七（777巻）と公式ムービーガイド本に掲載されています。栄ちゃんが映画の打ち合わせのために、原作に寄せた演出…具体的にはギア４の使い方（当時、ドレスローザ編の初登場以来1度しか原作で描かれていなかった）を伝えるのには描いた方が早いということで、このネームは時間がない中で描かれました。

濱家：テゾーロってあんなハイテクスニーカーみたいな感じやったっけ？

＜『ONE PIECE STAMPEDE』（2019年公開）＞

・実は最初のストーリーは全く別だった！？

『STAMPEDE』は栄ちゃんがポスタービジュアルや一部キャラクターの設定画を手掛けたものの、『STRONG WORLD』『Z』『GOLD』と続く中、週刊連載との兼務の負担が大きすぎるという配慮から、栄ちゃんはあくまでも原作・監修にとどまり、制作にはノータッチという方針で始まったのが2019年の劇場版だったそうです。

そこで栄ちゃんからは「自身がいないからこそ、自分には出来ない事をやって欲しい」というオーダーがあり、制作初期は『STAMPEDE』とは全く別物の「エースの知られざる恋」を描く企画があったそうです。原作の『ONE PIECE』では恋愛が描かれませんからね。



当時、エースの小説が連載されていたこともあり、小説をベースに映画オリジナルの秘話を盛り込むような構想だった模様です。企画段階で頓挫したと思われるのですが、杉田さんの口ぶりだと多少のプロットは出来ていた様子です。しかし、アニメ放送20周年記念となる映画だったころから、方向性は「お祭り」で「オールスター」なコンセプトの『STAMPEDE』に変わっていったみたいです。


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