「週刊少年サンデー」(小学館刊行)の看板マンガ『名探偵コナン』の
青山剛昌先生と栄ちゃんの対談が行われ、週刊少年ジャンプ2022年34号(7月25日発売)と週刊少年サンデー2022年35号(7月27日発売)に誌面を跨いで対談内容が前後編に分かれて掲載されています。
青山剛昌先生は以前、書籍情報誌「ダ・ヴィンチ」のインタビューにて、『名探偵コナン』の100巻刊行を記念して、同じタイミングで100巻を迎える『ONE PIECE』の栄ちゃんと対談できたら面白いかも語っており(
”尾田くんと対談出来たら面白いかも(笑)。『コナン』と同じくらいのタイミングでおそらく『ONE PIECE』も100巻が刊行されるはずだから。週刊連載をやりながら毎週のアニメ放送を続けているのって、今、俺と尾田くんくらいでしょう。同志としていろんな話をしてみたい”)、一方、栄ちゃんは昨年のジャンプの巻末コメントにて、『名探偵コナン』100巻刊行を祝う異例のコメントを出してました(
”面識ないんですが戦友の気分。100巻のご苦労わかります青山さんコナン祝100巻!!”)。お互い面識はありませんでしたが、両者のコメントはお互いの耳に入っていたようです。
対談は栄ちゃんの仕事場兼自宅で行われており、対談掲載のタイミングも『ONE PIECE』連載再開のタイミングですので、この企画はおそらくジャンプ編集部から持ちかけたものだと思われます。対談には日本テレビ(ニュースZERO)のカメラが入っており、対談の一部が映像に残っています。
そして、この異例の対談実現を記念して、掲載号のジャンプとサンデーは
異例のつながる表紙となりました。ジャンプ表紙には『名探偵コナン』の
安室透が、サンデー表紙には
ゾロが出張し、
ルフィと
コナンが背中を合わせているというものです。この構図はつながる表紙に定評がある青山剛昌先生がデザインしたそうです。サンデーには表紙絵のポストカードが付録に付いてます。
ルフィとコナンのキャラクター共演については、今年4月の
三省堂本店(神保町)の懸垂幕で既に実現しており、本コラボの予兆だったのかもしれません。
※ジャンプ表紙に伏せられている部分があるのはおそらく、ジャンプ派じゃない人向けの『ONE PIECE』のネタバレ回避。『ルリドラゴン』の伏せ字部分はたぶんリリース前情報。
ジャンプの方には、色を途中まで塗ったゾロのボツ画が載っています。刀の角度を間違えたとのことですが、完成した表紙を見ると大して変わらない気もします(笑)。
肝心の対談の内容は後編のサンデーの方が面白かったです。前編のジャンプの方は知ってる話が多く、「ジャンプ」と「サンデー」の境遇や漫画の話題をしていますが、互いに他の少年誌に興味を持っていなかったため、全然盛り上がりません(笑)。
以下、面白かった部分。
・尾田「バトル漫画が深刻になっていくのが嫌」ギア5の戦闘は漫画の記号を体現したもの
尾田:ルフィの「ギア5(フィフス)」っていうパワーアップがあるんですけど、あれがずっとやりたかったんですよ。これ、反感を買ってもいいと思って、めちゃくちゃふざけて描いたんです。僕はとにかくバトルでふざけたいんですよ。
アシスタント時代から、漫画の記号みたいな表現が、どんどん無くなっていくって話をしてたんです。例えば、登場人物が何か思いついたら電球のマークがつくとか、走る時にぐるぐる車みたいになるとか。
青山:はいはい。目が飛び出すのとか。
尾田:僕、そういう記号みたいな表現が大好きだったんですけど、描かれなくなってきましたよね。せっかく先人たちが色んな公式を作ってくれたのに誰も描かない。
バトル漫画って、ファンの期待に応え続けるとどんどん深刻になっていくんですよ。それが昔っから嫌いだったんです。だから僕は絶対に最後に深刻な漫画になりたくない、ふざけたいって決めていて、それがやっとできたんです。だからこれを描いてる時は、すっごい楽しくて。
青山:(ギア5の絵を見て)おおー、すげぇ!デザインいいですよね、秀逸ですね。よくこんな顔描くなぁ。
尾田:ありがとうございます。イメージとしては急に『トムとジェリー』を描いたと思ってください。
青山:はいはいはい。『トムとジェリー』好きだったなぁ。オレね、ジェリーが許せなくて(笑)。
尾田:ジェリーがですか?いやいやいや、ジェリーの味方でしたよ、僕!
青山:ほん?トムは一生懸命なのに、ジェリーはずるっこいやつでさ。なんかもう、ジェリーが大嫌いで、コナンくんはどっちかっていうとジェリーなんですけど(笑)。
尾田:でも、実際に描いてみて難しいなと思ったのが、『トムとジェリー』はそれぞれお互いがいて成り立つ世界なんですよね。バトルでルフィ一人だけふざけてみたところで、戦っている相手はそうじゃないというのは、なかなかの温度差があって苦しみました。だけど今回は描ききった感じがします。
バトル漫画って確かにコメディ色があるもので最後の方は真剣になっていくものですからね。ギア5はふざけているけど、ふざけた強さがあり、
バトル漫画の終盤のシリアス化を壊すカウンターとして考えられていたわけです。
昔からバトル漫画で最後に深刻になりたくないと考えていたこと、アシスタント時代から漫画的な記号を描きたいと思っていたこと、ギア5をようやく描けたという旨の発言を合わせると、
ギア5のアイディアは随分前から考えられていたことが窺えます。早ければ連載時点で既に構想されていた可能性すらあり。
・サンジが四つ子設定になったのは娘が『おそ松さん』にハマっていたから
青山:尾田くんはどうやってキャラの名前とか決めてるの?
尾田:色んなところから持ってきてますね。
青山:あれ笑ったんだけど、サンジ、ニジ、イチジ。「マジカ、おい」って。
尾田:いつかサンジの生い立ち描こうと思って、兄弟がいるっていう設定は前から考えてたんですけど、連載の時期にちょうど娘が『おそ松さん』っていうアニメにハマってて。娘に愛されたくて、あの六つ子に張り合って、四つ子にしたんです(笑)。
アニメ『おそ松さん』の第1期が2015年の秋アニメなので、この話は連載でちょうどサンジが離脱した後のゾウ編ぐらいだと思われます。元々の設定ではサンジとイチジらはただの兄弟だったということでしょうね。四つ子じゃなくともネーミングは変わらなかったと思いますがw
・『ONE PIECE』最終回まで目標あと3年
尾田:『名探偵コナン』は「よし、終わろう」っていったら終われるんですか?
青山:ここだけの話… もう最終回のネーム、描いちゃってますよ
尾田:え?ええっ!?
青山:これは言っちゃいけないかな?盗まれたらいやだし(笑)。さっきも話したけど、オレ1回ね、病気したんで。人はいつ死んじゃうか分かんないから、描いておこうと思って。もう5年ぐらい前かな。まあ、ネームだし、仮だけどね。
尾田:それがきっかけでしたか。でも、もう描いているなら気が楽ですよね。
青山:まあね。だから今は結構やりやすい。オチが決まってるんで。まあ、そこに至るまでにやらなきゃいけない話はまだまだあるけど…
尾田:最終回はどれくらいの長さなんですか?
青山:内緒(笑)。今後の展開で描き直すかもしれんし…(笑)。
尾田:『ONE PIECE』も最終回のイメージはずっと前からありますけど、その時々の状況で変わっていくんですよね。「ワンピース見つけた」って言ったら終わりなんですけど(笑)。でも、次が最終章です。
青山:おおー、そうなんですか!本当に終わるの?
尾田:はい。本当にまとめる気まんまんですよ。
ーー率直にお尋ねしたいのですが、最終回まであと何年?
尾田:何年かかるかっていうのは… さんざん答えて信用失ってるんで、答えないほうがいいんじゃないかな(笑)。
青山:うん、オレもそう思う(笑)。
尾田:これまでズレまくってるから大きな声では言えませんが、一応3年目標ですね。
『ONE PIECE』があと3年で最終回を迎えるという信憑性はとてつもなく低いですが、『ONE PIECE』の最終章とは「超新星編」「新世界編」に並び立つ長編ではないことは少なくとも確かなようです。現時点では最終章はワノ国編より短い想定ということになります。
バトルと800年前の回想メインで展開するとして、頂上戦争編3本分と考えるとなんだかいけそうな気がするような・・・・・いや、無理だろw
「
「ワンピース見つけた」って言ったら終わりなんですけど」という言葉を額面通り受け取ると、最終回に「ワンピース見つけた」という台詞があることになりますが、最終回のセリフをネタばらしするとは信じ難いため、『ONE PIECE』がワンピースを探している物語ということを前提にして、ワンピースさえ見つかれば終わることはできるというニュアンスの発言ではないかと思っています。
最新話(
1054話)の考察に書いたのですが、最終章の展開は次のようなものだと予想されます。
1)ワンピースが見つかる
↓
2)世界政府が隠蔽した世界の真実が明らかになる(ビッグニュース!)
↓
3)巨大な戦い(反体制派VS世界政府)が勃発
↓
4)ジョイボーイが古代兵器を導き使命が果たされる
しかし、
仮に物語の最後の最後にワンピースが見つかるのだとすると、次のようなことが考えられます。
1)ワンピースの正体が明らかになる
↓
2)世界政府が隠蔽した世界の真実が明らかになる(ビッグニュース!)
↓
3)巨大な戦い(反体制派VS世界政府)が勃発
↓
4)ジョイボーイが古代兵器を導き使命が果たされる
↓
5)ワンピースが現れる(ワンピース見つけた!最終回)
この場合、エピローグ的なエピソードは期待できないですね。
ちなみに、直近の「
あと5年で終わりたい」発言で計算すると残り2年なので、やはり既にズレています。まぁどちらも願望で、その年数で終われると思っての発言ではないと思われますが。
過酷な週刊連載を、100巻を超える長期に渡り続けながら、少年漫画のトップを牽引する両者の握手。互いに「先に終わらないでください」とエール交換して対談は終了しましたw
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