名塚:ルフィが仲間を探し始めた当初から、ずっと音楽家がほしいって言ってたじゃないですか。今回の映画が生まれてみて、もしかしたらルフィの中に、かつて赤髪海賊団にいた音楽家……ウタと一緒に過ごした時間がとても楽しいものとして刻まれていたからだったんじゃないかな、と思っちゃいました。それも尾田先生には偶然だって言われてしまうかもしれないけど、先生は私たちが想像しているより強く、海賊には音楽家が欠かせないと最初から考えていたのかもしれない、って。
私なら、まずは航海士がいないと始まらないと思ってしまうけど。遭難したら、ルフィのように生き残れる自信がないので(笑)。
田中:私は歯科医かなあ。
名塚:歯科医!(笑)。
田中:仕事柄、歯がないのは困ってしまうし。歯が1本抜けたところで、発声はたいして変わらないし、聞いている人にも違いはわからないだろうけど……息がひゅうって抜けてしまうのは気持ち的になんともしまらないというか。
池田:じゃあ僕は眼医者で(笑)。
田中:接骨医も必要だね。ルフィと違って、歳をとってくると体のあちこちがねえ(笑)。でも、よぼよぼの老人ばかりの海賊団みたいなのが、いても楽しいかもしれないね。
名塚:みんな助け合いが必要だから、団結力もすごそうです(笑)。
池田:ときどき、シャンクスはいい奴なのか悪い奴なのかと聞かれるんだけど、僕自身、なんともいえないんだよね。やっぱり海賊だから、必ずしもよいことばかりしているわけではないしさ。それに実をいうと、シャンクスを演じることで精いっぱいなので、彼が誰にどう思われているかとか、あんまり考えていられないんですよ。物語の細かいところまで把握するよりも、そのとき、そのときのシャンクスがどう在るかのほうに意識を向けたいというかね。
白ひげ役の故・有本欽隆さんも「俺の演じてる白ひげって役、どうやらすごく人気があるらしいんだけど、何がすごいの?」なんて言ってた(笑)。でも「カッコいいセリフは確かにいっぱいあるんだよな。俺、初めてだよ。人気のある役やらせてもらってるの」なんて悦に入ってたなあ。
田中:それ、すごく嬉しいことですね。
池田:まあそんなわけでね、今回も、これまで演じてきたシャンクスの歴史はいったん忘れるくらいの気持ちで、改めて役に挑ませてもらいました。今作はシャンクスにとってもご褒美みたいな作品というか、本筋の物語とはちょっと違う雰囲気もあるから。ただ、確かにシャンクスは表舞台に立つんだけれど、いつもどこか一歩下がったところに立っているのも彼らしさであるような気がしてね。
今作のラストシーン、仮台本にあったセリフが本番では削られていたんですよ。それはまぎれもないシャンクスの本音で、ものすごくカッコいいセリフだったから、残念ではあったんだけど、あえて言わないのがシャンクスなんだろうな、と納得もしました。
田中:言わなくてもわかるだろう?っていうことですよね。それはシャンクスだからこそ見せられるカッコよさですね。
名塚:その、あえて言わない、ということがラストへの余韻にも繋がりますよね。劇中では、Adoさんの声で何曲も素敵な歌が流れるんですけど、ラストの歌に繋がる流れは、いち観客としても、ひときわ感動してしまいました。みなさん、曲を聴きながら劇場で起きたことのすべてを反芻して、さまざまなことを感じとってもらえるんじゃないかと思います。