・消えない炎
前回、
ベガパンク「悪(リリス)」に連れられたサニー号サイドの一行はエッグヘッドの上層の”研究層(ラボフェーズ)”に案内されていました。
「研究所(ラボ)」には行かず、船番として
ブルックと一緒に船に残った
ゾロは、同じく船に残っていた
カリブーに対して「まだいたのか」「ウチの船長が世話になったな ありがとう
降りろ」と冷たくあしらっています(笑)。カリブーはワノ国を脱出できればどこでもいいと言って、サニー号に便乗していたみたいですが、政府の島に降ろされるぐらいだったら、ワノ国にいた方がずっと良かったですね。麦わらの一味がエッグヘッドを出航する時にはまた付いてくるんじゃないでしょうかw
一方、ラボへ向かった一味(ナミ、ウソップ、サンジ、ロビン、フランキー)はラボへ続くエスカレーターに興奮している様子です。マリージョアの動く歩道「トラベレーター」は人力だったわけですが(906話)、
エッグヘッドの動力は”火”だそうです。
ベガパンクは、全てのエネルギーに変換できる火について「もし”
消えない炎”がこの世にあれば…太陽を作れるのに」という考えで、何を燃やすかを長年研究してきたと言います。この話は腰が折れて、これで終わってしまっているのですが、
ベガパンクの口ぶりでは”消えない炎”の研究は既に完成しているようにも聞こえます。
”消えない炎”と聞いて思い浮かべるのは
ルナーリア族なのですけども、キング(アルベル)から得られたデータで、研究が完成したのでしょうか。それとも「
太陽を作れる」という方がポイントなのでしょうか。ここで言う「太陽」とは熱源としてのものだと思うのですが、まさか本物の太陽じゃあるまいな…。ともかく最終章に入ってわざわざ本編と関係ない話が出てくるとも思えないのです。
・6人のベガパンク
「猫の手も借りたい」ほど忙しい天才科学者
ベガパンクは自分を猫(サテライト)と呼ばれる6人の者たち(アンドロイド?サイボーグ?)に「
分散」しています(
1062話)。猫(サテライト)はPUNK-01からPUNK-06までの6人がおり、本話で6人全員が登場しました。そして、ベガパンクが6人に「分散」しているという意義が見えてきました。
PUNK-01:Dr.ベガパンク「正(シャカ)」
フルフェイスヘルメットを被った後姿で既に登場済みですが、こう見ると、フランスの電子音楽デュオ「
ダフト・パンク(Daft Punk)」のメンバーであるギ=マニュエルのようにしか見えません(笑)。ポケットに入れた手も機械になっているのでしょうか。ダフト・パンクはベガパンクの名前の由来にもなっているのかもしれません。
ダフト・パンク(右がギ=マニュエル)
型番01の
「正(シャカ)」は
6人のベガパンクのリーダー的存在のようです。6人のベガパンクの中で唯一、成人男性の姿をしており、
前回、革命軍の
ドラゴンと旧知の仲のような通信をしていたので、シャカが最もベガパンク本人の人格に近い猫(サテライト)だと見られます。
また、猫(サテライト)に対してベガパンク本人は本体(
ステラ)と呼ばれているようですが(
1062話)、これはブラフで、
シャカがベガパンク本人=本体(ステラ)である可能性もありそうです。だから、フルフェイスヘルメットなのかもしれません。
PUNK-02:Dr.ベガパンク「悪(リリス)」
成人女性型
PUNK-03:Dr.ベガパンク「想(エジソン)」
著名な発明家トーマス・エジソンの名前を持つ型番03の
「想(エジソン)」はどこかで見たことがあるようなロボットの姿をしており、猫(サテライト)の中で発明を担っている様子です。これは
1063話で「暴(アトラス)」が「おれァ
暴れるのが仕事だから!!」と発言していたことに当てはめると、「想(エジソン)」は発明するのが仕事というわけです。
ベガパンクについては「
これから人類が500年をかけて到達する域にいる」(485話)と言われており、未来人などという考察もあり得たわけですが、エジソンの存在から、
ベガパンクは本物の天才であるようです。
PUNK-04:Dr.ベガパンク「知(ピタゴラス)」
型番04の
「知(ピタゴラス)」は『がんばれ!!ロボコン』のロボコンのような姿をしていますが、本体は頭部の小さなロボットのようです。役割分担では、実験データの収集を担っている様子です。
PUNK-05:Dr.ベガパンク「暴(アトラス)」
巨大な少女型
PUNK-06:Dr.ベガパンク「欲(ヨーク)」
型番06の
「欲(ヨーク)」は成人女性の姿をしており、BMI600オーバーという超肥満体型から、トイレに行くと瞬時に痩せ、眠りにつきました。食べて、出して、寝る(クーダスネール=KDN)をこの日のうちに既に4度も行っているという話です。
そして決定的なのは、「想(エジソン)」が「代わりにメシ食うてくれヨーク!!」と発言していること、「欲(ヨーク)」の排泄行動によりトイレに行きたいと言っていた「知(ピタゴラス)」がスッキリしていることです。つまり、役割分担では、まさしく「欲」を担当しており、
「欲(ヨーク)」が食欲と睡眠欲を満たすことで、猫(サテライト)の食欲と睡眠欲も賄っている様子です。
これにより、他の猫(サテライト)たちは食べず、出さず、寝ずに仕事をし続けることが可能なようです。なんとも不思議な現象であり、
ベガパンクが能力者である可能性が高まりました。
じゃあ、動物の三大欲求のもう一つの”性欲”はどうなっているのだろうかと当然思うわけでして、これについては「欲(ヨーク)」の薄い本が出ることは不可避でしょうw
「暴(アトラス)」は「
腹ごなしパンチ」と言って相変わらず暴れています。”暴れる仕事”(
1063話)というのが分かりにくくしていましたが、
彼女の担当は”運動”のようです。
このように
型番03以降の猫(サテライト)たちは役割がシステマチックに分散されているのに対して、「正(シャカ)」と「悪(リリス)」は別格の存在に見えます。リリスの役割は何なのかというと説明し難く(セカンドオピニオンとか?)、仮にシャカがベガパンク本人=本体(ステラ)であるならば、それを紛らわす存在のようにも見えます。
・セラフィム04
王下七武海の代わりになる戦力としてSSGが開発した新型パシフィスタ「
セラフィム」(
1059話)については、これまでにミホーク型、ハンコック型、くま型の存在が確認されていましたが、今回、ジンベエ型(型番は04、名称はS-シャーク)が現れ、研究所(ラボ)を訪れた麦わらの一味を強襲してきました。
ジンベエ型のセラフィムは、セニョール・ピンクの
スイスイの実の能力までも再現していました。スイスイの実の能力により、水がない場所でも魚人空手を使うことが可能となっています。
ベガパンクはカイドウから血統因子を抽出してウオウオの実 幻獣種モデル青龍を作成しており(
1007話)、能力者の血統因子を抽出する技術を確立しています。コミックス99巻のSBSでは、ベガパンクによる自然系および超人系の悪魔の実の作成が仄めかされていましたが、今回、超人系のスイスイの実の作成が確認されたことになります。
ドレスローザの事件で、ドンキホーテファミリーの幹部は海軍によって一網打尽にされているので、セニョール・ピンクから血統因子を抽出することは可能なはずですが、それにしても仕事が早いですね。
ともかくそうなってくると、くま型がニキュニキュの実の能力、ハンコック型がメロメロの実の能力を使えるのかはもちろんのこと、ミホーク型が何か能力を与えられているのかも気になるところです。
ジンベエ型のセラフィムが現れた場所には、ジェルマのクローン兵の製造工場で見たような水槽(SERAPHIM 04と書かれている)を確認することができます。このことからセラフィムは、
ジェルマのクローン兵と同様に人工的に作成された人間であると思われます。人間と言っても、元王下七武海の血統因子とルナーリア族(キング)の血統因子をハイブリッドして作られた人間です。
「想(エジソン)」は「セラフィムはまだ子供やぜ」と発言していることから、
セラフィムは意図して子供の姿にデザインされているわけではなく、まだ”作りたての人間”であり、成長の余地があることが窺えます。
なお、セラフィムの強襲は「想(エジソン)」の要望によるジンベエ型のセラフィムの戦闘試験だったようです。この戦闘により興味深いデータが取れたそうで、
セラフィムの成長により攻撃パターンが変化したという話です。
これについて
「知(ピタゴラス)」は「
”体験”は「血統因子」に記憶されていくんでしょうか」と考察しています。
「血統因子」はこちらの世界の「ゲノム」や「遺伝子」「DNA」といったものを指すものと考えられるわけですが、”体験”は遺伝するものではない……というのが従来の遺伝学の定説でした。しかし、DNAの配列だけでは説明できない現象が世の中にはいくつかあります。例えば、一卵性双生児はゲノムが同一のいわばクローン人間みたいものですが、顔や性格が全く同じかと言うと、どこか違うものです。
これがエピジェネティクスという現象で、DNAの配列によらない遺伝子の調節機構があるわけです。親が経験して獲得した形質が子に遺伝するというエピジェネティックな現象もマウスの実験で確認されており(この体験というのはかなり限定的なものですが)、ピタゴラスの考察は現代科学でも一応説明できる内容ではあります。
しかし、「”体験”が「血統因子」に記憶される」という現象は、セラフィムの性能を説明するためのワンピース世界の空想科学だと思われます。つまり、
王下七武海の血統因子を抽出して作られたであろうセラフィムが人間離れした剣技を使えたり、魚人空手を使えるのは、そういう理由があるからです。
・滅びた高度な文明
フランキー達の前に現れた
「正(シャカ)」は「
この島は”未来”に見えるか?」と唐突に質問を投げかけてきました。興奮した様子で「とんでもねェ”未来”だ」と返答したフランキーに対して、シャカは「
ここは「過去」だ……!!」と答え、次のように続けます。
シャカ:このエッグヘッドのような…
高い文明を持つ「王国」が”900年前に実在してた”と言ったら…
信じられるか?
”空白の100年”(900〜800年前)の真相に近づく重要な事実が明るみになりました。
オハラの学者たちは、
”空白の100年”に存在して、世界政府と敵対して滅んだ巨大な王国の存在を推察していました(395話)。エッグヘッドのような高度な文明の遺産は現在のワンピース世界には遺っておらず、王国の存在は完全に消し去られていると見られます。すなわち、900年前に実在した高い文明を持つ王国というのは、この
「巨大な王国」と同一のものでしょう。
別行動をしているルフィ達は、古びた巨大なロボットを発見しており、ロボットの腹には巨大な槍?のようなものが刺さっており、世界政府との戦いの形跡だと見られます。
しかし、まず疑問なのは、
このような高度な文明を持つ巨大な王国がどうして戦いに敗れたのかということです。ビームや巨大ロボットなどの強力な兵器を所持していて、敵対した世界政府側は高度な文明を持っていなかったとすれば、まともな戦いになりそうにありません。
ただし、古びた巨大なロボットに巨大な槍を突き立てたのは何なのかと考えると、巨人族なのでしょうか。高度な文明を持つ敵に対して勝ち目があるとすれば、圧倒的な数の暴力があったのかもしれません。「巨大な王国」と言えど、他の国々が束になって挑んで来れば太刀打ちできなかったと。
また、「巨大な王国」が滅んだのは、
この王国の思想が、世界政府側に危険視されたという話ですが(395話)、そのあたりは今回の事実を受けても分からないところです。実際、高度な文明が遺っていないことを踏まえると、高度な文明自体が危険視されたということになるでしょうか。きっと「巨大な王国」にもベガパンクのような超天才が現れたのだと思われますが、ベガパンクが暗殺対象になったのは、歴史が繰り返されているのかもしれません。
そして、古代兵器については、現代よりも高度な文明が遺した遺産なので、オーバーテクノロジーなのは至極当然であったと。
さらに、
悪魔の実の存在について、とある可能性が浮上していきます。
それは、
悪魔の実が「巨大な王国」の遺産なのではないかということです。
と言うのも、ベガパンクが悪魔の実を人工的に作成しているように、今や悪魔の実は科学の範疇となっています。ベガパンクと同等、もしくはそれ以上の文明を「巨大な王国」が持っていたのだとすれば、当時の技術で悪魔の実を作ることができたかもしれません。
世界政府は「巨大な王国」の遺産を消したくても、破壊できない”歴史の本文”と、能力者が死ぬとどこかに実が成る悪魔の実の存在は消し去ることはできなかったのかもしません。
悪魔の実が単なる不可思議ではないことの示唆として、コミックス48巻のSBSにはこう書かれています。
「
いずれ登場する、ある博士が、”悪魔の実”という存在がどういうものなのか、説明してくれるハズです。いずれね。」
また、ナンバーズが人工的に作成された古代巨人族であることを踏まえると(989話)、
ワンピース世界に存在する様々種族は「巨大な王国」によって生み出されたものという可能性もなきにしもあらずです。
これらのことが”空白の100年”の真相にどう繋がるのかは見当がつかず、今はまだあくまでも可能性の話です。まだ考察が足りていません。とにかく真相が明らかになりそうな気配がしてきて、ゾワゾワしてきました。