LOGPIECE(ワンピースブログ)〜シャボンディ諸島より配信中〜 『ONE PIECE FILM RED』爆発的ヒットの要因(修正版)【RED】
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シネマトゥデイの記事に、劇場版『ONE PIECE FILM RED』が商業的に大成功を収めた要因を探る記事が出ていました。


『ONE PIECE FILM RED』はなぜ社会現象となったのか?爆発的ヒットの要因
(文・構成/天本伸一郎)


この記事で指摘されているヒットの要因は以下の通りです。

・原作者が制作に関わったこと

・映画公開時期が原作の最終章突入の盛り上がりと重なったこと

・音楽映画としての魅力があること

・人気アーティストが制作し、Adoが歌唱した劇中歌全曲が音楽チャートにランクインし、映画の宣伝になったこと

・メディアミックスが行われたこと

・コミックス1~92巻を期間限定で無料公開し、新規読者や途中で離脱していた読者が流入しやすい状況があったこと

・入場者特典の配布や副音声コメンタリー上映を実施するなど、リピートにつながる施策も行われていること

・上記の要因が複合的に重なり、音楽ファンや若年層を含むシリーズ未見の新規層、近年離れていた元ファンなども取り込むことに成功

かーー、ペッ



ネガティブな要因は一切書かれていませんね。




ネガティブなことが書かれていないのはシネマトゥデイの記事なので仕方がないですが、それを除いても本質的に『FILM RED』の総括としては不十分です。



赤髪が導く集客<クリックベイト>

原作者が制作に関わっていること」は『ONE PIECE FILM』シリーズ以降の平常運転なので差別化できるものではないので置いといて、「映画公開時期が原作の最終章突入の盛り上がりと重なったこと」は確かに要因としてあるでしょう。ゴムゴムの実の正体が25年の歳月を経て明らかになり、原作が盛り上がりを見せていた時期です。

しかし、原作ファンを映画館へ誘った決定的な要因は「シャンクスの映画だと認識されていたこと」です。

事前に映画ヒロインのウタは”シャンクスの娘”であることが明かされ、映画のキャッチコピーは「赤髪が導く”終焉(フィナーレ)”」です。映画タイトルはシャンクスの赤髪を意味する『RED』であり(さらにロゴには3本傷)、映画ポスターにはシャンクスがでかでかと描かれています。

極めつけは映画公開直前の原作連載(1055話)にシャンクスがわざわざワノ国に駆けつけて登場しています。

映画は蓋を開けてみれば、シャンクスの登場シーンは少なく、ウタはシャンクスの実子ですらありませんでした。シャンクスを期待して映画を観た人は”クリックベイト”だとがっかりし、映画タイトルは『FILM RED』ではなく、『FILM Z』のように『FILM UTA』とするべきだと批判を受けました

映画副音声では、栄ちゃんが「期待させすぎたのと、期待を外しすぎたかな」と発言しており、このような”思わせ”は制作サイドが意図した戦略だと考えられ、他の例としては、予告編第2弾にてシャンクスの「なぁウタ、この世界に平和や平等なんてものは存在しない」という不穏な台詞が本編とは異なる強い語気のテイクが使われています

上記に加えて『FILM RED』は劇中歌のサプライズもあり、公開前から非常に話題性の高く、公開2日間で最高のスタートダッシュを決めました。



賛否両論の話題

次は映画の内容ですが、まずは前述のシネマトゥデイの記事と同時期に出たデイリー新潮の記事も紹介しておきます。インタビューを受けているのはアニメーション監督の伊藤智彦さんです。

(前略)――同じ少年ジャンプ原作の映画化で、今年1番のヒット映画となった「ONE PIECE FILM RED」はどうでしたか。

 うーん。俺にはあまりピンとこなかったのです。アニメーションの出来としてもけしてよくなかったし。映画では最後、ウタの歌が流れて劇中のキャラクターたちも感動したようになっているじゃないですか。でも、みんなの心を支配しようとした人の歌ですよ? 

 悪魔(トットムジカ)が出てきてからも、ウタ自身はなにもしない。ルフィとシャンクスが頑張る。いやウタもなんかしろよ、と。そうした頑張りがなく、こちらが知らないうちに自由を奪おうとしたウタの曲を聞いて、いい曲だなはもう欺瞞でしかないですよね。

 まあ、劇中のキャラクターたちはそんなこと知らないという見方もできますが、観ている側としてはドン引きですよ。命をかけてみんなを守ろうとする行為がない限りは、気持ち悪いものを見せつけられているようにしか感じない。

 単純に出来がよかった「呪術廻戦0」や「すずめの戸締まり」、チャレンジ精神あふれる「THE FIRST SLAM DUNK」がヒットするのは納得できますが、これが大ヒットしているのを見て、俺はどういう人たちに映画を作ればいいのか頭を痛めています

デイリー新潮『「SLAM DUNK」は凄かったけれど…不可解だった「ONE PIECE FILM RED」の大ヒット【2022年のアニメ振り返り】』


私も『FILM RED』は刺さりませんでした(1回目感想2回目感想)。

『FILM RED』への批判は試写会の段階から噴出しており、『FILM RED』は賛否が極端に分かれている映画であることはブログ記事(「興収歴代最高の『FILM RED』評が賛否両論な件と『ウタの歌』が名盤な件 【RED】」)でも触れました。この傾向は国内のみならず欧米でも同じでした(アジアは知らない)。

試写会で鑑賞した とある映画ライターは、『FILM RED』は賛否が分かれる内容だとして、大ヒットすることを既に予測していました。

同じく2022年に公開された『トップガン マーヴェリック』のように純粋に面白いと話題になって大ヒットすることに越したことはないですが、『FILM RED』のように極端に賛否が分かれる映画の場合、賛側の熱量は同じように高いため口コミは広がり、さらに賛否両論であること自体が話題になりました。

話題性で言えば、FILMシリーズ第1弾の『STRONG WORLD』も負けていませんが、『FILM RED』は「ワンピース映画」の他に、「Adoが主演で歌唱している映画」というセールスポイントが別にあったのが、ワンピースに馴染みがない人でも映画館へ足を運ぶ要因になったと考えられます。それによって、ワンピースに馴染みがない連れを映画に誘いやすいというのもあります。

これは蛇足かもしれませんが、シリーズ史上最も多く投入された入場者特典(コミックスや「ワンピの実」、ワンピカードデッキなど)の金銭的価値は高く、入場者特典を売れば話題の映画をほぼタダで観ることができました。アニメ絵デザインではなく、栄ちゃんの描き下ろしが何度も投入されたのが大きいわけですが、ワンピの実やワンピカードの場合は寧ろ利益が出るぐらいで、最終的に最も価値が高かった入場者特典はワンピカードでした(相場は3000円以上)。

メディア戦略に置いては、ワンピース映画では初めて広告代理店が映画製作委員会に入っていることは、既に有識者により指摘されていたところです。テレビ、ネット、ゲームアプリ、イベント、広告ジャックなどシリーズ史上最も規模の大きいメディアミックスにより映画PRが行われました。

前述の記事でも指摘されていますが、映画公開後、劇中歌が音楽チャートを賑わせたのも良い宣伝になりました。



音楽映画の中毒性

『FILM RED』の音楽映画としての出来はどうかというのは置いといて(ハッキリ言ってしまえば悪い)、劇中歌に魅力があるのは確かです。

私は主にレイトショーで計4回『FILM RED』を観ていますが、いずれの上映回でもファミリーの観客が必ず複数いました。これまでのシリーズでこんなことは無かったと記憶しています。偏見かもしれませんが、これまでのFILMシリーズでは、観客は20〜30代のカップルや中高生が多い印象があります。

前述の要因2つは観客が映画館へ足を運ぶ、第1波および第2波の話であり、大ヒットするためにはリピーターの存在が不可欠です。SNSをウォッチしていると5回だの10回だの『FILM RED』を観たと言っている人がおり、『FILM RED』には確かに重度のリピーターが存在しています(私自身、入場者特典目当てで自身最多の4回も映画館に行くことになったわけですが、やはり入場者特典コミックスに第2弾があったのは影響が大きいです)。

映画館の音響で音源を爆音で聴いても仕方ないので円盤が出るまで待てばいいのでは冷静に思ってしまうのですが、重度のリピーターの一翼を担っているのがやはり低学年の子供だと考えられます。だから、観客にファミリーが多いのだろうと。

小さい子供は飽きずに何度も何度も好きなものを視聴することが得意なわけですが、一番刺さるのが音楽です。つまり、劇中歌の中毒性により『FILM RED』は重度のリピーターの獲得に成功したのではないかと思われます。そのようにして大ヒットしたのが『アナと雪の女王』でした。

虚構であるウタのアイドル性も小さい子供の方がより刺さりやすいことでしょう。

また、繰り返しになりますが、入場者特典の金銭的価値は高いので『FILM RED』は金銭的にリピートしやすい映画でもありました。子供に付き添う親に有難いと。

それにしても、小さい子供に『FILM RED』のあの爆音は絶対に耳に悪いと思うんだけどなぁ…。




というわけで、最後に『FILM RED』爆発的ヒットの要因を私なりにまとめておきます。


・映画公開時期が原作の最終章突入の盛り上がりと重なったこと

・シャンクスの映画だと認識されていたこと

・人気アーティストが制作し、Adoが歌唱した劇中歌全曲が音楽チャートにランクインし、映画の宣伝になったこと

・極端に賛否が分かれる映画だったこと

映画製作委員会に広告代理店が入りシリーズ史上最大のメディアミックスが行われたこと

・これまでのワンピース映画と異なり「Adoが主演で歌唱している映画」というセールスポイントが別にあったこと

シリーズ史上最多の入場者特典の配布(特典コミックスの第2弾と再配布もあった)や副音声コメンタリー上映を実施するなど、リピートにつながる施策も行われていること

・劇中歌の中毒性により重度のリピーター(特に低学年の子供)を獲得したこと



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無題
名も無き島民
シャンクスに関しては想像以上に劇中に出てきたからクリックベイトとは逆の印象を持ったかな。
コナンの黒の組織と同様でそれが主役となることはないことはわかりきってることなので。
2023/01/03(Tue)15:57:12
無題
上の方と同じく、シャンクス前面に押し出していても「どうせ大して出てこないでしょ?」と思っていたのでいざ観た時は「戦ってる!?」「昔の懸賞金と戦闘シーンも!?」と驚いたので、嬉しいサプライズでした…。
このへんもクリックベイトだと思う人と、全然真逆な感想持つ人で極端に別れそうですね
2023/01/03(Tue)20:39:35
無題
名も無き島民
個人的には初見でも入りやすいのがかなり計算されて作られてたからって印象ですね
それは見る上で必要話数が短い事もそうですし、戦闘するキャラがかなり分かりやすく区別されてたと思います
例えばブルックは魂が外に行く能力者というよりスピードタイプの冷気使いって形で纏まってたり、他のメンツも使う技や能力はかなり奇抜な物は抑えられていた印象でした
勿論もっと破茶滅茶な戦闘こそがワンピースだというかもしれませんが、自分はワンピースについて何も知らなかった頃テレビでやっていたストロングワールドでゾロが阿修羅を使ったシーンで相当萎えたので正解だったと思います
何せ何ができて何ができるのかも分からない中でいきなり能力者じゃないキャラがクビ増やしたんですもの
2023/02/12(Sun)23:05:21
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