第1078話「脱出リミット」

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・ジェルマ66のあゝ無感情海遊記
・ベガパンク人狼

・ジェルマ66のあゝ無感情海遊記
短期集中表紙連載 第25弾。このシリーズでは、ホールケーキアイランド編の事件以降のジェルマの様子が描かれています。

vol.33「結成！NEO MADS!!」

ジェルマと一緒にトットランドから脱出したシーザーがジャッジと再会すると、二人はいがみ合って殴り合いになり、かつて存在した研究チーム「MADS」の回想にトリップしていましたが、「考えて見れば邪魔だったのはベガパンク」(vol.32)だったと思い直し、共通の敵を認識した両者は奇跡的に和解して手を組み、「NEO MADS」なる組織を結成するのでした。



・ベガパンク人狼
ベガパンクのエッグヘッド脱出を遂行していた中、”何者”かの命令によりセラフィムが敵となり、フロンティアドーム内の各所で戦闘になっています。セラフィムに対してベガパンクの猫(サテライト)の命令は通じず（シャカとリリスが停止命令を出していることは確認できる）、威権順位が同列の者による命令は上書きできないというルール（1073話）に則り、威権順位が同列であるベガパンク本体(ステラ)とサテライトたち（1069話）の中に、セラフィムに攻撃命令を出した裏切り者のベガパンクがいる、という”ベガパンク人狼”が始まっていたわけですが、本話ではついに、その裏切り者の正体が明らかになりました。

セラフィムに「止まれ」と命令を出したことが確認でき白確となっていたシャカは、前回、研究所A棟地下の旧”悪魔の実”研究室に降りてベガパンク本体(ステラ)を発見したものの、後から降りてきた裏切り者に頭を撃ち抜かれて最初の犠牲者となりました。

同様に白確していたリリスはS-スネークにより石化され、ピタゴラスは本話でS-スネークにより破壊？されています。また、エジソンはS-シャークにより攻撃を受けて倒れていました。

本話では研究所A棟2階でロビン、チョッパーと共にステラを捜索していたアトラスが確認され、残る裏切り者候補はヨークただ一人となり、人狼確定となりました。

ヨークは初めにS-スネークにより石化を受けていましたが（1075話）、石化によってセラフィムに対する威権が消失しないのであれば、前回、その石化した姿が確認できなかったヨークはグレーと見られていました。やはり最初の直感（1075話考察）は合っていたわけです。

セラフィムから攻撃を受けたピタゴラスとヨークは白っぽいですが、ミステリーでは被害者のフリをするのはカモフラージュの定石ではあります。ただし、石化が威権の消失になるのだとすれば、ヨークは白くなります。（中略）

果たして、本当にベガパンク7人の中に裏切り者がいるのでしょうか。
ちなみに裏切り者は一人とも限りませんが、私はヨークが黒だと一番ゾワっとするのでヨーク犯人説を推します。事が終わったとにS−スネークに石化を解除してもらい怖い顔していたら・・・

（1075話考察より）

実際は事が終わる前に石化を解除してもらい、自らもベガパンクの暗殺に乗り出し、ステラの前に現れて裏切り者であることをカミングアウトしています。犯人はヨークしかいないなと思いながら、でもドキドキしてめくった本話の最終ページ見開きの第一印象は「ヨークでかっ！」でした(笑)。部屋いっぱいにヨークが屈んでいる様子からは『上からマリコ』のジェケット写真が彷彿されたりもして。

ヨークがフロンティアドームのシステムにどうやって細工をしたのか、パンクレコーズを介して1日1回行われる体験の同期をどのように回避したかはまだ謎です。

ステラに動機を問われたヨークは「あたいね!! 天竜人になるんだ」と答えています。
そして、ヨークは「Dr.ベガパンクはこの世界に一人でいいよね」とも言い、自分以外のベガパンクを殺害するつもりのようです。

「天竜人になる」と言っているヨークは事が終わった後に”天竜人になれる”と五老星（天竜人）に約束を取り付けた可能性がありますが、天竜人の血筋ではない人間が天竜人になることが認められるとは考えにくいですし、空白の100年を研究していたベガパンクの一人であるヨークがそのまま生かされるとも思えません。

実際、天竜人直属のCP0はベガパンク全員の暗殺を命令されており、ヨークの行動は予測していませんでした。一方、ヨークはフロンティアドームの一時的解除によりCP0を誘き寄せ、セラフィムを使ってCP0も攻撃していたわけです。流石に頭脳はベガパンクですから、ここまではヨークの計画通りだと考えられます。イレギュラーだったのは麦わらの一味とボニーがエッグヘッドやって来たことでしょう。

ヨークの計画は3ヶ月前に遡り、「Dr.ベガパンクが”空白の100年”を研究している」とエッグヘッドから匿名でマリージョアに密告しています。

政府は真実の確認のため、CP5をエッグヘッドに派遣しますが、ベガパンクの脳内で行っている研究の証拠は当然見つかるはずはなく、CP5は帰還するもののエッグヘッドを出航した船は失踪。続いて派遣されたCP7とCP8も失踪したわけですが、このエッグヘッド失踪事件の黒幕はヨークだったわけです。

エッグヘッド失踪事件により、ベガパンクへの嫌疑が強くなったタイミングでヨークは再びマリージョアに連絡し、五老星との通話会談を取り付けることに成功しています。この会談でベガパンクが”空白の100年”を研究していることが明白となり、五老星はベガパンクの暗殺を決断したようです。ヨークとの間に密約が交わされていたとすれば、この時です。

五老星はCP0にベガパンクの抹殺を命令して、ベガパンクの反撃（セラフィムおよびパシフィスタによる攻撃）を想定して自らもエッグヘッドに向かい、護衛に大将・黄猿を帯同させています（つまり、エッグヘッドに向かっている五老星はサターン聖だけではないかもしれません）。それに続き、援軍の要請を受けた海軍各支部の軍艦がエッグヘッドに向かっているところです。


海軍本部G-14基地長・ドール中将のほか、新キャラの海兵の面々がエッグヘッドに向かっているようです。援軍要請を受けた支部は新世界にある海軍本部の支部っぽいですね。

それぞれ役割を担うサテライトのうち食欲や睡眠欲など”生理的な欲求”を担っていると見られたヨークですが、天竜人になることを望んでおり、かつ他のベガパンクを目障りだと思っているとすると、権力欲求や承認欲求のような人間の欲望も強く持っているのかもしれません。そして、それはステラの科学者の遊び心が仇となったかもしれませんし、そもそも意図していたものではなかったかもしれません。

「天竜人になる」と言うヨークに対して、ステラは「昔 行ったじゃろう マリージョアへ!! あんな汚らわしい人間になりたいじゃと!?」と言っています。おそらく「昔 行った」と言うのはステラの記憶を共有しているためです。

興味深いのは、このステラの発言に対してヨークはくすくすと笑いながら「「正(シャカ)」ならそう言うね!!」と答えていることです。その後に「もう死んじゃったけど!! あはは」と発言を続けているため、ここで言うシャカとはヨークが頭を撃ち抜いたシャカを指していますが、ステラの発言に対して「シャカならそう言うね」というのは引っかかる発言であり、実際、ステラはその発言に対して「！？」というリアクションをしています。

それぞれ役割を担うサテライトのうち、シャカは「正しい」という漢字が示しているように最も真っ当で、ベガパンクの理性的な部分を現しているサテライトだと考えられます。それに対となるのが「悪(リリス)」ですが、彼女はどうしようもない悪ではありません。それはおそらく、本質的にベガパンクが悪人ではないからです。

サテライトの役割・性格を踏まえると、ステラが天竜人を汚らわしい人間と表現したことに対して、「シャカならそう言う」と言うヨークは、その発言が理性的なものだと指摘しているのだと思われます。

「欲望」は通常、理性で無意識に抑えられているものであり、ステラが本心から天竜人を汚らわしい人間だと思っていたとしても、欲望を体現するヨークもそうとは限らないというわけです。



ところで、話タイトルの「脱出リミット」って、何だ？って感じなのですが、後に有名となる「エッグヘッド事件」とは翌日のことだそうです。つまり海軍が到着するのは翌日だと見られます。翌日、エッグヘッドで戦争となるのか、麦わらの一味がステラを無事に連れて島を脱出した後にエッグヘッドが滅ぼされるのか、どちらかだと思われます。