『ONE PIECE』初のアイスショー『ONE PIECE ON ICE 〜エピソード・オブ・アラバスタ〜』が横浜にて8月に計3日6公演、名古屋にて9月に計2日4公演行われます。この記事は横浜公演に行ってきたレポートです。ちなみに、私はアイスショー自体、初体験です。
こちら会場となるKOSÉ新横浜スケートセンター。
開場開始10分頃の様子で、入場列が2人1列で会場前を3回折り返して4列重なっており、最後尾に並んでから涼しい会場内に入るまで20分以上掛かりました…。真夏日の炎天下で人混みの中にいるので汗だくです。結局、観客の入場に時間がかかったため開演は予定時刻より10分遅れで始まりました。
開演前の会場。天井にはライト、スピーカー、プロジャクター類、
奥にスクリーンが設置。これらのセッティングは多分アイスショーでよくあるものだと思うのですが、スクリーンの前に
メリー号のデッキ風のステージが置いてあるのが異質です。手前のリンク隅2ヶ所には
お立ち台があります。このお立ち台、とりわけ右(上手)側のお立ち台がショーの中で頻繁に使われていました。
メリー号のデッキ風ステージは裏が階段状になっており、ストーリーの場面に合わせて裏向きになったり、2分割して左右に置かれたり、様々なステージングが行われました。最初は気づきませんでしたが、黒子が6人ぐらいでステージを移動させていました。
スクリーンの上にも人が立てるようになっていて、ショーの中で1度だけ、ここにある人物が登場します。これも最初、そんなところに人が立っていると思わないので、しばらく気づきませんでしたw
客層は目算で大半がオバ様たち、95%以上が女性で、フィギュアスケートファンが多勢と思われます。”歌舞伎”の客に比べると、ワンピースも知っているという人が多いでしょうから、ワンピースを全く知らないで本公演に来た人は少ないはずです。
座席はリンクを囲む
プレミアムシート、スクリーン真向かいの
アリーナ席、本来のリンクの壁の裏にある
S席(目線が低いため壁が邪魔になる)、従来の観客席である
スタンド席があり、さらに追加で2階スタンド席裏の通路が甲板エリアとして
立ち見席が販売されました。
私はスタンドSS席でしたが、2階のスタンドA席と目線はほとんど変わらないため、スタンドA席の方がお得です。ただし、座席指定は出来ないため、スタンドA席だとスクリーン側の不良席に配されるリスクがあります。
本ショーは主にアリーナ席に向けてパフォーマンスが行われるため、アリーナ側に近い席が基本的に良席と言えます。
それじゃあアリーナ席が一番良いのかというと、そうとも限りません。アリーナ席は目線が低いため、
リンクへのプロジェクションマッピングが見にくいのと、奥行きを使ったパフォーマンスやショー全体を把握することは難しそうです。
その点、立ち見席は自由に見る位置を選べるはずなので、ハズレ席を引くリスクもなく
コスパ最強かもしれません(参考:アリーナ席26000円、スタンドSS席24000円、スタンドA席16000円、立ち見席10000円)。
ところで、本来のキャパの倍の観客を動員しており、トイレは施設に備え付けのもののみ、観客は女性がほとんどということで、入場後と休憩時間には女性トイレにとんでもない長蛇の列が出来ており、いずれも開演時間までに消化できていませんでした。。
公演時間は「約2時間(途中休憩含む)予定」となっていますが、実際は
前半が約1時間、リンク整備のための休憩20分、後半が本編約30分と”フィナーレ”と称されるカーテンコールがアンコールを含み約10分程度で、
本編は正味約1時間半です。
本公演は撮影不可ですが、カーテンコールのみ
写真撮影・動画撮影が可となっています。
最初のカーテンコールではアニメ主題歌『ウィーゴー!』が流れる中、キャスト陣がグループに分かれてリンクに入退場して滑走、その後、全キャストがリンクを周回しながら、観客に手を振るグリーティングが数周行われてキャスト陣が退場。公演終了のアナウンスが無いため拍手が続いていると、体感数十秒ですぐにキャスト陣が再登場しました。
2回目のカーテンコールではキャスト陣がスクリーン前に横並びし、数名のキャストが順番にアドリブで滑走した後、麦わらの一味以外のキャストが退場。麦わらの一味がスクリーン前でしばらく決めポーズを取った後、退場して公演終了となりました。
アラバスタ編のストーリーを1時間半の舞台にするのは到底無理なわけでして、アイスショーは
海軍やMr.3は登場しない上で、アラバスタ編のダイジェストのような構成になっていました。
文脈がなく、あるいは説明不足のままストーリーが進んでいくため、原作を把握していないと、よく分からないであろう展開やバトルシーンは多数あります。説明台詞もほとんどないため、脚本は観客が原作を知っている前提で割り切って書かれた模様です。
ワンピース歌舞伎はストーリーがしっかりしており、原作を知らなくても楽しめる内容でしたので、その辺りは評価が分かれそうなところですが、
そもそもアイスショーと歌舞伎では演劇の性質が違っていて、アイスショーにしっかりしたストーリーが描かれることは期待していないでしょうから、ワンピースを知らないスケートファンの観客は事前に予習して公演に臨んだ人も割と多いかもしれません。ただし、これは逆も然りで、全く予習する必要はないと公演に臨んだ人も多いでしょうね。
ワンピースファンとしては、ストーリーは脳内で補完し、
アラバスタ編の各シーンがどのようにアイスショーに落とし込まれていくのかが、お楽しみポイントです。
主要キャラにはそれぞれソロで滑走する見せ場があり、ペア滑走の見せ場もあります。
フィギュアスケート演目のような抽象的な演技は計4場面ほどありますが、ショー全体の中では少ないため、ワンピースファンとしては非常に見やすい構成でした。
(画像:日刊スポーツ)
衣装は雰囲気系なのかと思いきや、スケート衣装として機能的にアレンジされていることはあるものの、ウィッグや小道具まで原作に忠実な、
ほぼコスプレ状態でして、ワンピースファンとしては非常に入り込みやすいヴィジュアルとなっています。ウィッグは滑走時に髪の毛がなびく様になっていて、ちゃんと元の形に戻るように作られているのだとか。
対話シーンやバトルシーンは基本的には滑走せず、バトルシーンでは殺陣とリンクへのプロジェクションマッピングで技などが表現されます。プロスケーターによるアクロバット演技(バク宙)もありました。
中にはスケートと相性が良いシーンもあり、例えば、Mr.4&ミス・メリークリスマス対ウソップ&チョッパーの戦闘で、ミス・メリークリスマスの”
モグラ塚ハイウェイ”を喰らうウソップなんか、アイスショーでそのまま表現されていました。
時計台の爆破を阻止するシーンでは、スクリーンに時計台を映して、上下の動きをリンクの縦方向で表現していました。原作を知らないと、何をやっているか、さっぱり分からないでしょうけどw
セリフはアニメ「ワンピース」声優陣の収録音声にキャストが口パクと身振りで合わせるスタイルです。遠くの席からも分かるように、身振りは大袈裟なぐらい大きく演技されていました。
一方、スピーカーの音声は反響してやや聞き取りにくい感じでした。聞き取りにくさは声優の声質に左右されるのか、大友龍三郎さんが演じるクロコダイルの声が私は一番聞き取りやすかったです。セリフが聞き取れなくとも内容は分かるので別にいいのですけどね。
ところで、開演して間も無く、私は
アイスショー初心者として洗礼を浴びることになります。
アイスショーの流儀なのか、フィギュアスケートの流儀なのか分かりませんけど、
とにかく事あるごとに拍手が巻き起こります。
キャストが入場すると
拍手
キャストがスケートで技を決めると
拍手
キャストが見栄を張ったところ(見せ場が終わったところ)で
拍手
キャストが退場すると
拍手
郷に入っては郷に従えなのですけども、
拍手とセリフが被るのは良くないと思います。セリフに拍手が被るとやはり気まずいためか、
拍手の頻度はショーが進むにつれて減っていった気がします。そもそも初見の観客がほとんどでしょうし、シリアスなシーンでは拍手が浮いてしまいますしね。
(画像:ファミ通)
逆に、今決めたとこなのに拍手があまり起こらないという現象も起きました。
アラバスタ編のラストシーンはあまりにも有名で、
麦わらの一味が腕の”仲間の印”を掲げた瞬間に私は拍手しましたが、この時の拍手の量は弱めでした。というのも、大半の観客席から距離では腕に書かれている”仲間の印”は見えず、原作を知らないと何が起きているのか理解できません。それを踏まえると、アラバスタ編をしっかり把握している観客はそこまで多くなかったのではないかと思うわけです。
(画像:毎日新聞)
観客席からよく見えなくて特に残念だったのは
ボン・クレーの演出かもしれません。
初めはルフィの声に加工して”マネマネ”の能力を再現しているだけなのかと思いきや、よく見ると、
変身時にポケットに仕込んでいる仮面を取り付けて、変身したキャラクターの顔に変化していました。まるで中国の「変面」のような芸当をしていたのですが、残念なことに観客の大半はこれに気づいておらず、リアクションは薄かったです。
多分、私が気づいていない細かい演出や小道具は他にも色々あるはずですが、その辺りはリピーター向けの要素として、気づかれなくても構わないというスタンスなのかもしれません。
ここからはメインキャラクターごとの雑多な感想です。
ルフィ/宇野昌磨(画像:日刊スポーツ)
ルフィはぴょんぴょん跳ねたり、ガニ股で滑ったり、たまに転んだり、確かにルフィっぽい振り付けでした。宇野昌磨さんは身長が高くないので、遠目から見て一味の身長のバランスもいいんですよね。バトルシーンではリンクへのプロジェクションマッピングで伸びた腕が表現されていました。アラバスタ編ではルフィの名言が多いわけですが、アイスショーではどれも伝わりにくいと感じました。
ゾロ/田中刑事(画像:毎日新聞)
ゾロはMr.1(小林宏一)との殺陣がハイライトでした。Mr.1は衣装も良く出来ていて、アクロバット滑走もしていて、Mr.1の方がかなり目立っていた印象です。ゾロはしっかり三刀流を使っているのですが、アイスショーではスピンとかジャンプとか派手なスケートの技の方が盛り上がるみたいです。
ナミ/本田望結(画像:日刊スポーツ)
ナミはミス・ダブルフィンガー戦がありますが、小道具のクリマ・タクトとプロジェクションマッピングが山場なため、スケートでの表現は薄いです。登場時のソロ滑走がハイライトだったかもしれません。
印象に残ったのは望結ちゃん胸大きいなぁということだけ。ちなみに、アイスショーに風呂シーン(幸せパンチ)はありませんw
ウソップ/織田信成(画像:日刊スポーツ)
アイスショーの記者発表でも熱くワンピース愛を語っていた織田信成さんのウソップは完全にハマり役でした。衣装着て長鼻まで付けたら完全にウソップでして、その上で、原作の理解度も高いため、セリフがないシーンでも何か喋っている演技をするほどの熱演っぷりでした。単純にスケートの安定感も高かったです。フィナーレでは音楽に合わせて踊っていたりと、キャストの中でショーを一番楽しんでいたかもしれません。これは評価せざるを得ません。
サンジ/島田高志郎(画像:日刊スポーツ)
島田さんは手足が長くてスタイル抜群。遠目から見てもサンジでした。サンジもMr.2戦がありますが、足技での攻防を殺陣で再現するのは流石に難しいわけでして、サンジも登場時の滑走がハイライトでした。滑りながらタバコに火をつける動作が様になっており、黄色い歓声も上がっていました。
チョッパー/渡辺倫果(画像:日刊スポーツ)
衣装は常時、飛力強化(ジャンピングポイント)みたいなチョッパーです。沢山の動物のキャラクターが登場するのもアラバスタ編の見所で、原作ではチョッパーが動物の言葉を翻訳するのが大体ギャグになっていますが、アイスショーでは動物のシーンはほとんどカットされているため、チョッパーの活躍は少ないです。Mr.4とミス・メリークリスマスとの戦いがハイライトとなりますが、どちらかと言えばウソップのシーンなんですよね。
ビビ/本田真凜(画像:日刊スポーツ)
構成的にアイスショーの主役はビビでした。ビビの衣装がお似合いの本田真凜さんが熱演しています。衣装は3つあり、王族の衣装はアルバーナの戦いの最中に着替えて出てくるので、そこは違和感がありましたけど。
回想シーンに登場する幼少ビビは、ちびっ子の競技スケーターの
星 碧波ちゃん(12歳)が演じています。可愛さで観客の心を奪っていました。
クロコダイル/無良崇人(画像:毎日新聞)
正直、声優の大友龍三郎さんの演技に聞き入ってしまってキャストの演技は印象にあまり残っていません。ルフィとのバトルシーンは2回あり、スナスナの能力は、砂模様の黒子スケーター達を従えて表現したり、リンクへのプロジェクションマッピングで表現されていました。ロビン(小川真理恵)との決裂シーンでは、なぜかロビンとムーディな滑走をしており、ロビンとクロコダイルが大人の関係だったことが匂わされていました。
ボン・クレー/本郷理華
変面によるマネマネのギミックが良かったのですけど、サンジとの戦いではあまり活かしきれていませんでした。ボン・クレーは漢気のあるオカマなので内股のイメージはないのですが、初見の観客や遠目からの分かりやすさ重視なのか、内股の振り付けが多用されていました。
コーザ/友野一希(画像:毎日新聞)
衣装が邪魔なのか、私が観た公演では終始、スケートが不安定だったという印象です。ちなみに、幼少コーザは横浜公演と名古屋公演で入れ替えのダブルキャストとなっており、幼少ビビと同じくちびっ子の競技スケーターが演じています(横浜公演:澤浦侑仁、名古屋公演:三浦琉生)。この中から、将来オリンピックや世界大会に出場する選手が現れたりして。
(画像:モデルプレス)
というわけで、ワンピース・オン・アイスに行ってきた感想でした。
ワンピースのアイスショー化は以前から演出の
金谷かほりさんがプロデューサーの方々に打診していたらしく、実際に企画がスタートしたのは3年前とのことです。キャストの稽古は1ヶ月で、その中で演出や振り付けを作り上げていったみたいです。
入場列や物販列の整備(あと私は関係ないけどトイレ列の整備)をもう少しどうにかして欲しいという不満はありますが、ワンピースファンとしてショー自体はカーテンコールを含めて十分楽しめました。もし、カーテンコールが無かったら物足りなかったかもしれません。近所で再公演がない限りリピートするつもりはないですが、第2弾があれば是非行きたいですね。
ワンピースアイスショー、ウソップ役に織田信成、ビビ役に本田真凜、ナミ役に本田望結
【ワンピース歌舞伎】 スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』再演を観劇の巻
【ワンピース歌舞伎】 スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』レポート 【初めてのスーパー歌舞伎編】
【ワンピース歌舞伎】 スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』レポート 【ストーリー解説編】