・ゴッドバレー事件勃発と脱出作戦
前回、38年前に起きた
ゴッドバレー事件(
957話)の事件発生前にゴッドバレーで何が行われていたかが明かされました。
天竜人達は当時3年に1度、「先住民一掃大会」という”人間狩り”の余興を非加盟国で開催していたらしく、38年前、資源が豊富というゴッドバレーが開催地に選ばれました。この大会は世界政府が非加盟国の土地を侵略するついでに行われる秘密裏の余興で、「先住民」と呼ばれる非加盟国の国民達は抹殺されてしまうため、この非人道的な行為は世間に知られることはありませんでした。
本話ではフィガーランド家と並ぶ有力な一族と見られる天竜人の面々が登場しています(マンマイヤー家ほか)。
しかし、極秘で行われている大会であるのに関わらず、例年と違ったのは会期中に
ロックス海賊団、
ロジャー海賊団、そのほか当時の名だたる海賊達がゴッドバレーに続々と押し寄せたことでした。
その発端は大会の賞品として用意された2つの悪魔の実でした。
一つは、
ビッグ・マムがゴッドバレーで拾ったと言っていた
ウオウオの実の幻獣種(
999話)。
もう一つは、
くまが食べることになる
ニキュニキュの実です。
海賊達が押し寄せたことについて
ガープは、
「ハチノス」をつつくなとおれは言ってた!! ナメすぎだ
アレは海賊島の宝だ!! そりゃ取り返しに来るだろうな
と発言しています。一方、ロックス海賊団の会話を見ると、
シキ:手に入れたモン勝ちだ それでいいよな!?
リンリン:おれがいただく!!
カイドウ:お前は無意味だろ!! リンリン!!
???:フヘヘ!! おれの宝だ!!
カイドウの発言(リンリンは既に能力者)から、彼らの
目当ては悪魔の実であることが分かり、これらの悪魔の実は海賊島「ハチノス」から政府が密かに盗んだもので、それを海賊達が取り返しに来たように見えます(ただし少々疑問は残ります)。「海賊島の宝」だったわけですが、一度奪われたものなので、そこは海賊のルールで先に手に入れたモン勝ちということなのでしょう。
しかし、悪魔の実の在処がどうして海賊達に漏れたのか、当時の海軍元帥(?)
コングは困惑している様子でした。実は、これは前回
イワンコフとともに登場した奴隷の
ジニーが2週間前にゴッドバレーの情報を外に発信したことが原因のようです。彼女は盗聴と通信に長けているとのこと。
1095話
情報を外に発信したのは、おそらく情報を受け取った誰かがゴッドバレーにやって来て混乱が起き、脱出作戦の成功率が上がることを期待してのことだと思われます。実際、海賊達が続々と現れ、護衛の海軍と駆けつけたガープと衝突して大混乱が起き、ゴッドバレー事件に発展します。
「脱兎(ラビット)」として狩りの標的となった国民と奴隷達は生存不可能であることを知っている奴隷のイワンコフとジニーはゲームからの脱出を計画していたのでした。
彼らの脱出作戦は大会の賞品として用意された悪魔の実を誰かが食べ、その能力で海軍の包囲網をくぐり抜けようというものでした。本来は囮を使って陽動し、悪魔の実を奪う作戦だったようですが、その必要がないほどの大混乱が起き、あっさりと2つの悪魔の実を手に入れてしまいます。
が、しかし、そこに
リンリンが現れ、ウオウオの実は奪われてしまいます。
そのままニキュニキュの実も奪われるところでしたが、その前に くま が悪魔の実を食べ、ニキュニキュの実の能力者となったのでした。
ニキュニキュの能力があれば脱出は容易く、くまは脱出作戦に参加した奴隷の他にも500人以上も救ったようです。イワンコフは「その手は人に自由を与えた”解放の手”だ」と言って くま を讃え、憧れのニカのような力を手に入れた くま は嬉しそうでした。
イワンコフ、ジニー、くまが能力で飛んだ先は くまの故郷である
ソルベ王国であり、他の脱出した者達がどうなったかは描かれていません。ただし、くまが救った者達についてジニーが「みんな泣いて感謝してたじゃん」と言っていることから、
おそらく多くの者がソルベ王国に着地したのではないかと思われます。
その後、イワンコフはソルベ王国を一人で出航しており、他の者達も既に散り散りになったのだと考えられます。そして、くまがこの時救った者達が後に、くまがソルベ王国の国王になることを後押ししたのかもしれません。
イワンコフと別れた後、くまはジニーと一緒に実家で二人暮らしを始めています。ジニーはくまの4歳年上で、二人とも4歳の時から奴隷だったとのこと。そして、
ボニーの大食いはジニー譲りだったようです。
ちなみに、くまの実家は教会(カトリック?)でした。
王下七武海の くま が手に持っている「BIBLE」は、文字通り「聖書」であり、要するに聖書を持ち歩く敬虔な信者だったわけです(笑)。
・ロックス海賊団とロジャー海賊団
ロックス海賊団にはニューゲート、リンリン、カイドウ、シキのほかに、
銀斧(ぎんぶ)、
王直(おうちょく)、
キャプテン・ジョンという後に名を上げた海賊達が所属しており(
957話)、本話では彼らと見られる人物が描かれています。
左下の3人が銀斧、王直、キャプテン・ジョンだと思われます。なんとなく、酒を飲んでいるのがキャプテン・ジョン、兜をつけているのが銀斧、帽子をかぶっているのが王直っぽい気がします。
追記)コメントで教えて貰いましたが、スリラーバークに登場した将軍ゾンビ(450話)4体のうち、3体が上のコマの左下3人にそっくりです。将軍ゾンビのうち1体はキャプテン・ジョンのゾンビでして、酒を飲んでいる長髪の男がキャプテン・ジョンで間違いなさそうです。
ただし、王直はロッキーポート事件の際に黒ひげに倒されたということですので(1059話)、帽子を被った男(4本腕の男)は王直ではないと考えられます。(追記終)
また、アマゾン・リリーの先々々代皇帝である
グロリオーサ(ニョン婆)がロックス海賊団に所属していたことも明らかになっています。なにやら
ステューシーと言い争っており(「見苦しいねステューシー」「オメーもだろグロリオーサ」)、二人はニューゲートをめぐる恋敵だったのかもしれません。
アマゾン・リリーの先代皇帝達が恋煩いで恋焦がれて死んでいった中、グロリオーサは「わしにもあの様な時代が」(523話)と発言しており、さらに恋煩いの解消方法を知っていたわけですが、それは
グロリオーサの経験談だったわけです。
前話と本話ではゴッドバレーで開催された「先住民一掃大会」に「脱兎(ラビット)」として参加させられた奴隷のくまやイワンコフが脱出した経緯が描かれたわけですが、結局、ゴッドバレー事件の背景となる
ロックスや
ロジャーの目的は不明です。
前述のように、ロックス海賊団の本来の目的は悪魔の実のように見えますが、ニューゲートは「
ロックスのバカはきっと目的を見失う」と発言しています。
「待てロックス!!!」
「邪魔だロジャー!!!」
さらに、上記の会話はロジャーとロックスのものと見られ、なにやらロジャーがロックスの行動を止めようとした様子です。単純に、悪魔の実を争奪しているようには見えず、ニューゲートが予言していたようにロックスは本来の目的を見失ってしまったようです。
実際、悪魔の実に辿り着いたのは「
静かに奪うモン奪ってトンズラだよ どいつもこいつも夢見やがって」と発言していたリンリンだけでした。
では、ロックスの「夢」とはなんでしょう。
これは実は本編で既に明かされています。
ロックスの野望は「
世界の王」でした(
957話)。
海賊の王ではなく、世界の王ですから、ロックスが標的とするのは世界政府を支配する天竜人になるでしょう。しかも、
ゴッドバレーには世界政府の最高位である五老星のサターン聖がいたのですから、ロックスは絶好の機会と思ったに違いありません。
そうだとすると、上記のロジャーとロックスの会話は状況的に、
天竜人を討とうするロックスをロジャーが止めようとしたように見えます。
実際、ゴッドバレー事件は「
”天竜人”とその奴隷達を守るため、そこに居合わせたガープとロジャーが手を組み「ロックス海賊団」を打ち破った事件」(
957話)とだけ伝えられており、上記の考察はガープがロジャーと共闘したことを説明できます。
しかし、ロジャーがどうしてロックスを止めようとしたのかは疑問が残ります。
ゴッドバレーにやって来たロジャー海賊団の様子を見ると、
スコッパー・ギャバンの「ロジャー!! この件に船長特権はねェからな」という発言から彼らもまた悪魔の実を狙っているように見えます。一方、ロジャーの「
一年だぞ!! おれが一体どんな気持ちで過ごしたか!!」とは何のことを言っているのかよく分かりません。
ガープが銭形警部のようにロジャーを狙っていたのは本話で明らかになっていますが、
ロジャーとロックスの因縁は不明です。
考えられるのは、”一年前”にロジャーがロックスに敗北し、ロジャーはリベンジの機会を1年間待っていたというようなことでしょうか。つまり、ロジャーにはロックスの野望を止める意志はなく、単純に決闘を挑むためにロックスを止めたのかもしれません。
しかし、個人の決闘に止まらず、全面戦争になってしまったという感じでしょうか。
ただし、この場合は目的が異なるガープとロジャーが手を組むという状況にならない気がします。うーん・・・。
・くまとサターン聖の会話
くまは「かつて世界に対して大罪を犯した一族」とされる絶滅種”
バッカニア族”のハーフだったことが判明しています(
1095話)。太古から奴隷階級と見られるバッカニア族は解放の戦士(太陽の神)ニカを信仰しており、くま もニカに憧れていました。
ゴッドバレーからの脱出の前に、くまは
サターン聖と遭遇しており、くまはサターン聖に質問を投げかけています。
サターン:バッカニア族の子供……
お前には奴隷になる事と死ぬ事しか許されていない…
ーそれは歴史が決めたのだ
くま:……おじさん えらいの?
生まれた時からえらいなんておかしいよ…
生まれた時から奴隷なんて生まれる意味がない
ぼくに今何かの力(※悪魔の実の能力)がついたのなら
ーぼくは”ニカ”のように…こんなかわいそうな人達を一人でも多く救いたい!!!
サターン:…だから消えるんだ お前達は
一見すると、
サターン聖の返答は会話になっているように見えません。
なぜ、くま達は消えることになるのでしょう。
そして、くま達とは具体的に誰々のことなのでしょう。
フーズ・フーの話では「太陽の神ニカ」の名前を口にした看守は後日消されたと言います(
1018話)。
また「脱兎(ラビット)」には「先住民」に加えて「罪人」や「問題ある奴隷」が投入されており、イワンコフやくまは「問題ある奴隷」だったことになります。イワンコフは言わずもがなで、ジニーは窃盗のプロと自称するぐらいですので「問題ある奴隷」と見られて仕方ない気はしますが、礼儀正しく温厚な くま がどうして「問題ある奴隷」と見られたのでしょうか。
サターン聖によれば、バッカニア族が奴隷になることは許されているので、バッカニア族の血を引いていることは奴隷として問題になりません。では、くまの問題は何かと言えば、
ニカを信仰していることなのかもしれません。
世界政府に都合の悪い
「ニカ」を信仰している者達は消さなければならないというのが、五老星の考えということです。やはり「奴隷の解放」という思想を世界政府が危険視しているような印象を与えます。社会の均衡には奴隷が必要と考えているわけです。
空白の100年に存在し、のちの世界政府と敵対して滅んだとされる
「巨大な王国」は、その思想が世界政府に危険視されたと見られています(395話)。その思想とはやはり、奴隷の解放(人種差別打倒)ということになりそうですかね(
1018話考察)。