・青玉鱗
前回から引き続き、くまの過去編です。
天竜人の奴隷から脱出した
くまと
ジニーはソルベ王国で二人暮らしを始め、無事に大人になりました。22年前(くま25歳、ジニー29歳)、ソルベ王国の
ベコリ王による”奴隷政策”にくま達が住む王国南部の住民は苦しめられたものの、
イワンコフの推薦で くま をスカウトにやって来たドラゴン率いる自勇軍の介入により奴隷政策は破棄され、くまとジニーは自勇軍(改め革命軍)に入隊しました。
くまは各地で革命軍の活動を続けながら、ソルベ王国に時々帰郷する生活を続け、14年前(くま33歳、ジニー37歳)の時点では、くまとジニーは革命軍軍隊長になっていました。
そして、前回の回想はジニーが遠征先で「
思わぬ敵」に攫われたところで終わっていました。
1097話
この「思わぬ敵」とは、
天竜人の命を受けた世界政府の手先でした。
ジニーに目をつけていた天竜人がいたらしく、ジニーは
天竜人の”妻”として連れ去られたのでした。もしかするとCP-0が派遣されたのかもしれませんが、そもそも遠征地で軍事衝突していたところに横槍が入ったため、ジニーの部隊(東軍)は全滅してしまったようです。
ところで、天竜人は下界を見下しており、天竜人の血筋を大事にしているのに、下界の人間を娶る天竜人の思想はよく分からないところです(ジニーが奴隷だったことは知らないでしょうけども)。おそらく妻と言っても妾で、ジニーは天竜人にはならず、奴隷とあまり変わらない扱いなのではないかと思われます。
ジニーが攫われてから約2年が過ぎた頃(約12年前)、ジニーから革命軍総本部「バルティゴ」に突如通信が入ります。
ジニーは病気になってしまい、夫の天竜人に捨てられた、すなわち解放されたため、天竜人との間に生まれた赤ん坊(
ボニー)を連れて下界に戻って来たのでした。
つまり、
ボニーはくまの実の娘ではなかったということになります。
このパターン多いですね。
しかし、このジニーの病気は致命的で、ジニーがボニーを連れて故郷のソルベ王国に着いた頃には命がほとんど尽きていました。ジニーにとっては最期の通信であり、くまとドラゴン、イワンコフに別れを告げる通信でした。くまに対しては「
絶対会いに来ないで」とも言っています。くまはジニーの別れの言葉を最後まで聞かず、ジニーが帰った場所(教会)をすぐに見当をつけてニキュニキュの実の能力で駆けつけますが、ジニーはすでに亡くなっていました。
ジニーの病気は「
青玉鱗(せいぎょくりん)」という架空の病気なのですが、これは
自然光を浴びると皮膚が石のように固く青くなるという奇病です。ジニーは醜くなった自身の姿をくまには見られたくなかったわけです。
「青玉鱗」は難病の希少疾患であり、どうやら遺伝性疾患のようで、幼いボニーも「青玉鱗」を発症してしまうのでした(発症時の年齢は3〜4歳?)。
(
『ONE PIECE』第1098話 原稿間に合わず。尾田先生「ごめんね」【WJ50号】)
ジニーが遺したボニーを くま はソルベ王国の年寄達と一緒に育て、革命軍は続けていたようですが、「青玉鱗」の発症を機にボニーのそばにずっと居てあげたいという想いから革命軍を一旦辞めています。
「青玉鱗」を発症したボニーは症状の進行を抑えるために、外に一切出ず自然光(日光、月光)が当たらない部屋の中でずっと生活していました。ボニーの回想で くま 「”解放の戦士”ニカ」の話をから聞いた幼いボニーが「
あたしのことも自由にしてくれるの?」(1095話)と言っていたのは、
外に出れない不自由な生活のことを指していたわけです。
くま と革命軍はボニーの病気を診ることができる医者を探していたようで、ボニーが5歳の時(7年前)に「青玉鱗」について知っている医者が現れます。
この医者が言うには、「青玉鱗」には治療法はなく、症状は自然光を防ぐことで抑えることはできても年月によっても進行するため、ボニーの余命はあと5年と診断しています。つまり「
10歳の誕生日を迎える事はない」と くま に告げています。
医者とくまの外の会話を盗み聞きしていたボニーは「10歳」という言葉だけ聞こえたらしく、部屋に戻って来た くま に何の話をしていたのか無邪気に聞くのでした。これに対して くま はボニーの余命について悟られたくないために、医者が言うにはボニーの病気は「
10歳になるまでは治らない」と咄嗟に嘘をついてしまいます。
10歳になったら病気は治ると喜ぶボニーを前に、くまは後に引けなくなってしまうのでした。
くま:(しまった どうする…!!! どうする…!!)
ボニーが10歳になるのは”2年前”であり、
くまが人格を失った時期(頂上戦争)と重なるため、おそらく、この時の
くまの嘘が重要なポイントになります。
くまが自我を失うことになる改造手術はサターン聖が命令したことらしく、手術を執刀した
ベガパンクはこれに反対していたことが分かっています(
1094話)。一方、
自我を失うという決断はくま自身が決めたことだとベガパンクはボニーに説明しています(
1072話)。
くまが自我を失う事はサターン聖が要求していることであり、ベガパンクはこれに反対していますから、自我を失うこと自体は くま にとってはメリットはなく、ボニーが思うように死ぬに等しいと考えていいはずです。ですから、
くまが自我を失うことを決断したのには世界政府と何らかの取引があったと考えられます。
そして決断の理由を話せば、
ボニーを傷つけることになると くま は考えたことから(
1072話)、この決断には
ボニーの病気が関わっていると推察されます。
「青玉鱗」は治療法はないとされていますが、現状、ボニーは陽の下で普通に生きており、病気は完治した様子です。しかし、ローが患った「珀鉛病」のような中毒とは異なり、「青玉鱗」はおそらく遺伝性疾患の難病であるため、現代の医学では遺伝子治療や核酸治療でなければ治療することはできないでしょう。
ワンピース世界では”血統因子”が関わる病気であり、
ベガパンクならば治療は可能なのかもしれません。そう考えると、
ボニーの病気を治療してもらうことを条件に、くまは自我を失うことを決断したのかもしれません。
つまり、ボニーの病気は「
10歳になるまでは治らない」と言った嘘を くま はボニー対して貫き通したのではないでしょうか。自分の病気の治療のために、くまが人格を失ったと知ればボニーが傷つくことになるからです。
ボニーは「子供の頃」にエッグヘッドに来たことがあると言っているため(
1062話)、その時に本人は気づかないうちに(麻酔でも打たれた?)治療を受けた可能性があります。
実年齢(12歳)のボニーが言う「子供の頃」とはいつなのか分かりませんが、時系列的におそらく3〜4年前(ボニー8〜9歳)頃だと推定されます。
実はベガパンクに命を救われていたのに、ボニーはベガパンクをくまの仇だと思い込んで海に出たわけですね。なお、海に出たボニーが
ジュエリー・ボニーと名乗っていたのは、どうやら「青玉鱗」で顔に出来た
青い石のような皮膚を くま が綺麗な”宝石”だと形容していたことに由来しているみたいです。
・ソルベ王国の悪夢
6年前(ボニー6歳)、ソルベ王国の
ベコリ王が再び南部の切り捨て政策を開始したようで、今度は22年前の”奴隷政策”のような回りくどいやり方はせず、火をつけて燃やし人を大量に殺し始めたそうです。ゴア王国のやり口に似ています。
6年前の時点でもまだ、
くまがソルベ王国の国王になった様子はまだ見られません。
くまが国王になったのは最近のことのようです。
おそらくベコリ王の政策に反発して、
くまがベコリ王を倒し、国の英雄となった くま がなりゆきで国王になってしまう流れでしょうか。
くま は革命軍に所属していた経緯があるため、革命軍の長期的な作戦に賛同して、国王になった後、世界政府に納める「天上金」を拒否した可能性は考えられます(
1083話)。それによって世界政府に目をつけられたのかもしれません。
ところで、くまが国王になる時点で
ジニーは亡くなっており、ジニーの親は未だ登場していません。実際、ボニーは くま が「たった一人の家族」だと言っています(
1063話)。
したがって、くまを救出するためにマリージョアに来たボニーが変身したソルベ王国の
王太后コニー(908話)は実在していない人物の可能性が高くなりました。
908話
マリージョアの守衛はソルベ王国のコニーと認知していたように見えましたが、それはボニーの自称が鵜呑みにされただけのようです。マリージョアのセキュリティはガバガバでした。