・くまの人生
前回から引き続き、くまの過去編です。
WJ4・5合併号記載の解説では、前回のボニーの出航時期は「
2年半前」と明記されており、今回は
2年前から頂上戦争直前のくまが自我を失うまでが描かれており、くまの過去編はこれで最終回のようです。くまの記憶(
1074話)に触れ、くまの人生を知った
ボニー(現在)はボロボロに泣き崩れてしまい、ルフィの証言通りでした(
1090話)。
2年前(出航から半年)、
くまを探して航海する
ボニー一行は海賊団を自称しています。戦闘ではボニーがトシトシの実の能力を使用しているため、海軍からは子供と老人を狙って襲っている海賊団と誤認され、危険視されたようです。
くまはボニーの接近に気づいているものの(改造手術により探知力が上がっている)、政府との契約によりボニーと会うことができないため、ボニーを密かに避けるように行動しています。が、くま側からは一方的にボニーを遠くから観察していたようです。
そうとは知らないボニーは海賊として名を上げれば、くまが気づいてくれるものと考えて、海賊になったようです。海賊らしくあろうとするため、自身の呼び方は「船長」に改めています。また、ボニーの頬のリングピアスは、顔に何もないと くま に気づかれないかもしれないと思い、消えた青玉鱗の石の代わり付けたようです。ただし、大人ぶって口紅は引いています。
この辺りは辻褄合わせの説明として描かれているように思われ、本編では蛇足に感じます。
重要なのは過去編を通して、
シャボンディ諸島の事件にて くま が麦わらの一味を助けた心理(591話)が描かれている点です。
くまは自我を失う前のボニーの見納めとしてシャボンディ諸島に潜入しており、事件に遭遇しています。くまはドラゴンの息子であるルフィに予てから注目していたようですが、エニエス・ロビーの事件を経て、
ゴムの能力を持ち、世界政府に歯向かうルフィを自身の憧れである「ニカ」に重ねていたようです。
そして、ルフィが魚人族をかばって天竜人を殴ったと知ると、くまはルフィがニカの様に「
いつか世界を救う男だ」という気持ちが強くなったようです。これは当然 くま の出自がかなり影響しています。しかし、ルフィ達には新世界で戦う実力がまだないため、ニキュニキュの実の能力で麦わらの一味を分散させるに至ります。
革命軍として活動し、志半ばで この世を去ることになる くま は、いつか世界をひっくり返すだろうルフィに未来を託したとも捉えられます。
さらに、散り散りになった麦わらの一味が成長して、いつかシャボンディ諸島に戻って来る日までサニー号を守るため、くまはベガパンクにお願いしてサニー号護衛の任務をプログラムしてもらうことを約束しています(603話)。これまでの回想を見ると、そんなプログラムが明らかになった時点で、サターン聖にベガパンクの仕業だとバレて止められそうなものですが、くまは2年間サニー号を守り切り、なぜかお咎めは無かったようです。
・記憶の研究
エッグヘッドのラボに保管されていた くまの記憶はニキュニキュの実の能力により弾き出された形をしており(
1072話)、自我を失う手術はニキュニキュの実の能力を利用したとも考えられました。
1072話
しかし、能力により弾き出した「記憶」は「苦痛」(
1097話)とは特性が異なり、
コピーの様なものなので、記憶を弾き出しても記憶を失うことはないようです。
ベガパンクは「この研究での”自我の喪失”とは人として生きた
記憶 人間の感情を失う事を指す」(
1101話)と説明しており、実際、自我を失う手術はニキュニキュの能力により記憶を弾き出した上で、別に行われています。
また、能力により弾き出した「記憶」は触れれば消えてしまうため、ベガパンクは触れずに覗き見るシステムを開発し、保管していたのでした。
しかし、それは何の為に?という疑問は残ります。
ベガパンクは記憶の提供について「
科学の研究素材を提供せよ 約束じゃからのう」と くま に言っていますが、最初の契約ではクローン兵を作るための血液サンプルの提供が条件(
1099話)であり、追加条件はサターン聖が出したものなので、記憶の提供は契約には含まれていなかったはずです。
また仮に、ニキュニキュの実の能力により弾き出された「記憶」にベガパンクが興味を持っていたとすれば、くまが自我を失った後に命令して誰かの記憶を弾き出して貰えば済む話なので、ベガパンクが研究対象としているのは誰かの「記憶」ではなく「くまの記憶」ということになります。
では「くまの記憶」を研究材料にした研究とは何なのでしょうか。
ここから希望的観測ですが、
ベガパンクの自我の喪失の研究には続きがあるのではないでしょうか。
自我を失う手術については、ベガパンクは「人道に反する改造手術」であり「殺人」だとも表現しています(1100話)。手術はサターン聖の命令で不本意に行ったものであり、ベガパンクとしては殺人者にはなりたくないはずです。また、ベガパンクほどの科学者であれば、当然興味があるはずです。
自我の喪失後に自我を戻すことは可能かということに。
ベガパンクの研究において、自我の喪失が人生の記憶と人間の感情を失うことだとすれば、自我の回復は人生の記憶と人間の感情を取り戻すことです。そして、それはベガパンクの殺人の汚名を晴らすことでもあります。
保管されていた「くまの記憶」はボニーが触れたことで消失してしまいましたが、ベガパンクの研究が完成していれば、(しつこいですけども)くまの自我が回復することを期待できます。
過去編が終われば、次回からはエッグヘッド事件に戻り、
サターン聖と戦闘シーン(
1095話)の続きからということになります。
ボニーはピンチという状況です。そして、「
鉄の巨人」はなぜか起動し、謎のプログラムが起動した?
くまはマリージョアからおそらくエッグヘッドに向かっているという状況です(
1092話)。
ボニーのピンチに くま が駆けつけて、完全サイボーグの くま にはサターン聖の能力が通用しないというのがベタな展開ですけども、果たして・・・