『ONE PIECE』連載20周年記念として制作され、2019年に発売されたPS4ゲーム『ONE PIECE WORLD SEEKER(ワールド シーカー)』を年末年始にプレイしました。DLC以外のサブクエストをほぼ全てやって、ゲームクリアまで約16時間でした。
タイトル: ONE PIECE WORLD SEEKER
発売日:2019年3月14日
発売元:バンダイナムコエンターテインメント
対象機種:PlayStation4
ジャンル:アクションアドベンチャー
CERO(対象年齢):B
希望小売価格:7,600円+税(ダウンロード版同価格)
公式サイト:http://opws.bn-ent.net
本作の現在のAmazonのレビューは3.9/5(345件)と高評価ですが、
発売当時では非常に低評価(55件)でした。発売後時間が経って付く評価はガチゲーマーではない、定価購入ではないということで評価が甘くなるのだと思われます。
実際にプレイしてみて、当時の低評価レビューの指摘はごもっともで、改良の余地は多数あり、それ故に惜しいゲームでした。
当時の低評価レビューを振り返っていくと、まず「
単調な戦闘の繰り返しで飽きる」という点です。また、具体的に指摘されていたのは「
ルフィの育成システムがあるが、戦略に生かす必要性がほとんどない」という点です。
まず戦闘について本作のルフィの戦闘パターンは、スキルツリーと装備品により”見聞色の覇気”と”武装色の覇気”の2つに大きく分かれており、前者はスピードと遠距離攻撃、後者はパワーと近距離攻撃に秀でているというような特徴があります。私は”見聞色の覇気”で育成しました。
しかし、基本攻撃の他にゲージを消費する必殺技があり、ゲージ1本で使える”レッドホーク”は使い勝手が良い上に威力が非常に高いため(ボスに対しても体力の4割〜8割を削る)、”レッドホーク”1つで全ボスを粉砕できてしまいます。
必殺技には発生保証、無敵、時間停止が付いているため、とにかく強いです。ボス戦は近距離で基本攻撃を数発当て、必殺技を当てるだけで攻略できてしまい歯応えはありません。それ故に単調です。”見聞色”の場合は回避スキルの”剃”で間合いを詰めて、”ビンゴ回避”で時間停止して必殺技を当てるというのが気持ち良いですけども、そればっかりでは飽きてしまいます。
スニーキングスキルもありますが、育成する必要性は全くありません。なぜかと言えば、敵に見つかっても簡単に逃げられる or 簡単に敵を倒せるため、敵に見つかるリスクが一切無いためです。敵に見つかったら、うじゃうじゃと敵が押し寄せるみたいリスクがあれば話は変わるのですが。
このように育成の必要性があるスキルがあまりないため、戦闘スキルの育成は序盤ですぐに完成し、あとは移動スキルに振ったら育成はお終いという感じです。そしてクエストでは、簡単に倒せる敵と何度も対峙することになり、作業ゲーと化します。
お次は「
お使いミッションばかりで飽きる」という点です。
これはメインクエスト、サブクエスト問わず、どこどこに行け、次はどこどこに行けとやたらと移動させられます。広いフィールド上を移動しなくてもファストトラベルという機能でいくつかのポイントには瞬間移動することができますが、ローディングが長いためストレスです。
サブクエストについては一応、メインストーリーを補足する内容のものもありますが、「
ゲームバランス上、多くのクエストはやる意義がない」というのが問題です。
クエストの報酬ではスキルポイント、装備品、装備品の設計図、弁当のレシピが貰えます。が、上述したように攻略に必要なスキルが少ないため、スキルポイントはわざわざサブクエストで貯める必要はありません。
装備品については”見聞色の覇気”向けの装備と”武装色の覇気”向けの装備に分かられるため、どちらかしか必要ありません。装備品は体力と攻撃力を上げるものを2つ3つ付ければ、ゲームクリアには十分すぎるほどのステータス補正が得られるため、この時点でサブクエストをする意義がなくなります。
レシピで作った弁当はNPCに持たせると素材アイテムを探索させることができますが、素材アイテムはフィールドで拾うことができ、ゲームクリアのためにこの探索システムは一切必要ありません。装備品のクラフトでは、通常の仕上がりの他に稀に「良」と「極」のステータス補正の高い仕上がりがあるため、おそらく素材アイテムの本格的な収集はゲームクリア後のチャレンジクエストというもので強さを極める時にやることになるのだと思われます。
故に、フィールド上も含めて「
素材アイテムの探索はゲームクリアのためにはほとんど必要ない」です。フィールド上に宝箱が設置されており、マップ上で見つけるとついつい探したくなるわけですが、見つけた素材アイテムはクラフトせずに結局多数余ってしまいました。
したがって、欲しい装備品もしくは装備品の設計図が報酬のサブクエスト以外は受ける必要がないわけですが、とあるサブクエストを完遂すると、
空島のマップに行けるようになります。ルフィが生身で大砲から発射されて空を飛び、空島から落ちた際には通常フィールドへスカイダイビングすることになります。
これはゲーム体験として結構面白いのですが、サブクエストに飽き飽きして空島を知らずにスルーしてしまったプレイヤーは多いのではないでしょうか。勿体無い話です。空島へのルート解放はメインクエストに組み込むべきでした。
「
フィールド移動がだるい」という指摘もあります。これは一概にそうだとは言えませんが、改善の余地が十分にあると思います。
これまでのワンピースゲームを思えば、「
”ゴムゴムのロケット”を使ったフィールド移動は非常に爽快」です。ただし、手で掴めるオブジェクトは限られており、手で掴めない岩肌のフィールドでは移動が不便でストレスです。また、一部のマップでは”ゴムゴムのロケット”を撃墜する敵NPCが配置されており、爽快感がわざわざ削がれています。敵の拠点ならまだしも、街中にそんな敵NPCを配置しないでもらいたいです。
”ゴムゴムのUFO”では空中の水平移動できますが、”剃”でも水平移動ができるため、垂直移動も付けて欲しかったところです(着地モーションでちょっとだけ上昇するのですが)。それも手で掴めるオブジェクトを増やせば解決できる問題なのですけども。また、”ゴムゴムのUFO”をキャンセルして腕を伸ばすモーションに移行できたら、もっと爽快感があっただろうなと思います。
ストーリーについては「
ストーリー前半まで良いが後半は雑」と指摘されています。
テーマは家族愛です。ざっくり言うと、ヒロインの兄であり敵役の監獄長が捻じ曲がった考えを持ち、その計画はルフィ達に邪魔され、最後にはルフィに敗北して、なぜか改心するという流れです。よく分からない部分は多数あります。
途中、島で内戦が勃発しますが、演出がしょぼく、数人が争っているような印象しかないため危機感はありません。ヒロインが兄と会って話す、話さないというのがストーリーの基軸なので、基本的に他人事というか、サブクエストと大差ないというか、序盤の伏線の割には真相に迫るワクワク感は得られません。
スモーカー、たしぎ、ボルサリーノ、イッショウ、クザン、クロコダイル、ルッチ、ジェルマとキャラがわちゃわちゃと出てきますが、ゲームの舞台である島に来るだけ来て、こいつらはボスキャラ以外の存在意義はほとんどなく、メインストーリーにほぼ関わってきません。サボとサカズキは終盤のストーリーに絡んでおり、ムービーにも登場しているので、まだ許せます。
まさしくキャラゲーなわけですが、だったら「
せめてメインストーリーはフルボイスにして欲しい」ものです。テキストのほとんどはボイス無しで、フルボイスなのはムービーだけとなっています。
ゲーム内の実績解除にはキャラクターのカルマ値というものに紐づけられており、カルマ値が上がると、そのキャラクターとの会話イベントがサブクエストとして度々発生します。この会話イベントは基本的に立ち話でテキストのみという質素なもので、内容は基本的にルフィに対する印象を述べるというものです。
海軍拠点前で海軍大将と立ち話するというシュールさを味わったりもします。
カルマ値を上げるとムービーが追加されたりするような報酬があれば実績解除する気も起きますが、ボイス無しの立ち話イベントのためにはやる気が起きません。
そして最後、総評は「
『ONE PIECE』が好きならある程度楽しめる」というものです。
グラフィックについては漫画・アニメが原作なので、グラフィックのしょぼさは全然気になりません。戦闘モーションやフィールド移動でルフィの能力を味わえるのが、このゲームの醍醐味だと思います。
あと書き忘れていましたが、フィールドの探索に役立つ見聞色の感知や戦闘に役立つ見聞色の集中など、「
見聞色の覇気をゲームシステムに上手く実装した点も評価」できます。これらが評価できる点です。
ただし、ゲームバランスの悪さなどから育成の意義が乏しく、煩わしい移動や作業のような戦闘を強いられることになり、ストーリーも薄いのでゲームクリアの達成感は少なく、時間泥棒という印象の方が強く残る作品でした。