海賊王、ふざけるな!が出発点「ONE PIECE FILM Z」長峯監督インタビュー
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12月15日に公開された『ONE PIECE』3年ぶりの長編映画「ONE PIECE FILM Z」。公開わずか2日、2012年度の邦画作品最速での観客動員100万人を突破し114万人を動員、興行収入も驚異の約14億円と前作「STRONG WORLD」の興行収入48億円を早々に越えそうな勢いを見せている。原作者・尾田栄一郎が総合プロデューサーを務め、脚本を放送作家・鈴木おさむ、声優陣にも篠原涼子、香川照之など豪華なメンバーが顔を揃えたことでも話題を集めているが、そんなプロフェッショナルな面々をまとめあげたのが、本作でメガホンをとった東映アニメーションの長峯達也監督だ。映画製作の舞台裏には何があったのか? 大ヒットの要因は何か? そして長峯監督自身について話を聞きました。
《みんな、スタンダードなドラマが好き》
─── 大ヒットおめでとうございます。監督にも反響は届いてるんじゃないですか?
長峯 ありがとうございます。あと、すみません、ヒゲ剃るの忘れてきました(笑)。えっと、反響ですよね。普段アニメは見ないけど、僕が監督だから見たよ、という親戚のおばさんからも「わかった!」って言ってもらえましたね(笑) ”Z”はアニメにまったく興味がない人にもワンピースの世界の一端を見てもらえる切っ掛けになるかもしれませんね。
─── 確かに、ワンピースらしい、熱くて直球な物語でした。
長峯 「今の子どもたちに熱血は流行らない」と言う人もたまにいるんですけど、やっぱりみんなこういうスタンダードなドラマが好きなんだな、というのが再確認できました。
─── 原作者の尾田さんも常々「ワンピースは子どものもの」という発言をしています。同時に、大人のファンも「ワンピース」にはたくさんいる。その中で、どこに向けて作ろう、といった意識はありましたか?
長峯 完全に子どもに向けて作りました。僕としては「アニメって大人は見ない」と思っていますので。
─── 言いきりますか?
長峯 大人は見ない、っていうのは、いわゆる「完成された大人は見ない」ということ。要は、年齢的・肉体的に大人になったとしても「心に子どもがいる」かどうか。子どもの心が残っている人がアニメを見るんだろうと思っているので。だから、少年漫画に魅了されていたかつての自分に対しても作ってます。心に今でもある小学生の自分に。大人と呼ばれる人たちにはこの”Z”を見る時は子供みたいに素直にドキドキ、ワクワクして欲しいです。
─── プリキュアなどの「女の子向け作品」が多い印象がありますが、今回の映画はまさに「男の物語」。ギャップはなかったですか?
長峯 見せ方の趣向は変わってきますよね。「女の子向け作品」の場合、主人公……例えばプリキュアたちが「こうしたい」「こうなりたい」という「希望」がそのまま力になって敵や障害を打ち破るんですね。でも、「男の子向け」の場合、それじゃダメなんですよ。男の子の場合は理論・理屈が優先になってくるので、ちゃんと段取りを踏んで、修行をしたり、新しい装備を手に入れたり、仲間を集めたりして敵に対抗する術を提示しないといけない。それをやらないと、なんで敵や障害を打ち破る事が出来たのか納得出来なくて、ドラマやストーリー、熱い台詞も楽しめない。
─── 長峯さんはこれまで、ワンピースについてはTVシリーズでも関わっていませんでした。その中でいきなり「劇場版」というのは、どう感じましたか?
長峯 東映アニメーションのスタッフルームは、「プリキュア」の隣が「ワンピース」チームなんですよ。その様子を見ていてなんとなく、「自分もワンピースをそのうちやるんだろうなぁ」と思っていて、勝手にネタも溜め込んでいました(笑)。それに、ワンピースには15年の歴史がある。つまり「資料が15年分ある」という意味でもある。どうすれば「ONE PIECE」になるのか、というのは逆に探りやすいですよね。だから、徹底的に研究しようと、それくらいで。それと、原作がある中で劇場映画を作る場合は当然、原作者の考えた範疇の中で展開しなくちゃいけないじゃないですか。どんなにがんばっても原作者の手のひらの上……でもその上で出来るだけ暴れてみる。手のひらから落ちそうになっても今回は原作者が監修してくれるので、「駄目だよ落ちちゃうよ」と知らせてくれる。原作者が監修してくれたのは本当に有り難かったです。気が楽な所でした。
─── 気が楽だったんですか? むしろプレッシャーなのかと。
長峯 楽ですよ。だって、間違っていたら「違うよ」って言ってくれるわけですから。監修してくれる事でワンピースの世界観的にそこに住むキャラクターが変な事言ったり、おかしな行動をしなくてすむ。そこで「ONE PIECE」という世界が担保されるわけですからね。
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