・覇王色持ち
前回、陽界に降臨した
イムのただならぬ覇気が冥界にもバリバリに伝わり、ルフィ達はエルバフの窮地をようやく察することになります。
チョッパーとともに救助された
ギャバンは、ルフィ達に陽界の状況(ギャバンが知っているのはイム降臨前)を説明したようで、神の騎士団の”
不死身”に対する
対抗策も授けたようです。
ギャバンの対ソマーズの描写からも読み取れるように(
1148話)、その対抗策は
覇王色の覇気を攻撃に纏うことのようで、ギャバンは「「
覇王色」の使い方…肝に銘じろ」と、ルフィに言い渡しています。
このギャバンの話を隣で聞いていた模様の
ロキはこう言います。
ロキ:ギャバン お前の話で腑に落ちた
おれは自分の力を言語化できてなかった
だとすりゃ おれは経験者
”神の騎士団”を確実に仕留められる!!
錠を解いて おれを連れてけ ハイルディン!!
どうやらロキは、覇王色の覇気を纏う攻撃を自然(無意識的)に身につけていたようで、ギャバンの説明を聞いて初めて、自分の力を理解した様子です。
「
経験者」という言い回しはまるで神の騎士団の”不死身”を既に打ち破ったことがあるかのようですが、ロキは海外で暴れていた時に神の騎士団と戦闘したことはないらしいので(
1145話「
あんな奴らに遭遇する程進撃してたら おれァもう「世界の王」になってる」)、
覇王色の覇気で何かしらの”能力”を打ち破った経験はあるものと読み取れ、これが実は
14年前のアウルスト城事件の経験ではないかと予想されます(後述)。
無自覚に覇王色の覇気の力を習得しているといえば、
ゾロもそうです。
ゾロはギャバンから覇王色が「だいぶ体になじんでる様だ」と評価されるも、ゾロが覇王色を使っている認識がないと分かると「覇気は認識してコントロールできてこその”力”だ」と寧ろ説教されています。
ゾロが覇王色を自然と使えるようになったのは「
閻魔」の特性によるところが大きいと考えられ(
1033話考察)、「閻魔」の前の持ち主である
光月おでんも無自覚に覇王色の覇気を纏っていました。
ギャバンがゾロとサンジの方を向いて「
どうやら「覇王色」があるのは1人じゃなさそうだな」と切り出したこのシーンでは、サンジが道化になっていますが、
サンジが覇王色持ちではないかどうかまでは曖昧になっています。
というのも、ゾロとサンジの2人が覇王色持ちでもギャバンのセリフは変わらないからです。仮に2人とも覇王色持ちの場合、ゾロの方が覇王色を使いこなしているのは本編の描写からも明確です。
また、サンジが「オイ ジジイ おれは!?」とギャバンに詰め寄った後の
ギャバンの返答は本話では伏せられていることも見逃せません。このシーンでサンジがただの道化であれば、このギャバンの返答を伏せる必要がないからです。
そもそも、麦わらの一味の覇王色持ちがルフィとゾロの2人だけでは、この後の神の騎士団、五老星らとの戦いに頭数が足りません。
ロジャー海賊団は麦わらの一味の先行モデルと見れるわけですが、ロジャーがルフィ、レイリーがゾロに当たるとすれば、ギャバンはサンジに当たります。No.2の座を張り合っていたところや、ギャバンが「愛の伝道師」を自称しているところ(1139話。本話ではシャンクスの証言から色々な港に女を作っていたことが判明)にサンジとの共通点が見出せます。
だからなんだって話ですが、要は、サンジも覇王色持ちになってくれなきゃ困るってもんです。
ルフィの師匠がレイリー、ゾロの師匠がミホークで、サンジの師匠はゼフとカマバッカ王国のニューカマー達というのは実力的に見劣りしますから(そもそもゼフは料理と騎士道の師)、ギャバンがサンジを鍛えてくれたら、ええやないかいと。
・14年前の事件
エルバフを救うために錠を解けと訴える
ロキに対して、ロキを全く信用していない
ハイルディンはロキの錠を解こうとはしません。
ルフィはロキを仲間にしたら自由にしていいかと提案しますが(もうシャンクスの居場所とか言ってる状況でもないのでね)、ハイルディンはロキが重大な死刑囚であることを理由にそれも断ります。エルバフにおいて、
ロキは14年前、アウルスト城内の兵士113人とハラルド王を殺害し、ヤルルに重傷を負わせた”歴史的大犯罪者”だからです。
14年前の事件では
語られていない真相があることはロキ本人から示唆されおり(
1143話)、ハイルディンを説得するには真実を語るしかないようです。
14年前の事件当日、
ギャバンは
城から異常な覇気を感じ取り、偶然訪ねて来ていた
シャンクスとともにアウルスト城に向かい、一部始終ではないものの現場にいたそうです。そのギャバンも「ハイルディン以外の誰に話す?母は違えど兄弟だろう」とロキを促します。
まぁ、ギャバンにとっては息子コロンの危機でもありますので。
ロキにとっては思い出したくもない
ヒドい一日の回想が始まりますーー。
事件当日、
ロキと
ヤルルは
ハラルドに呼ばれてアウルスト城に来ていました。
この時のロキとヤルルの会話からは、ハラルドが「世界政府」と通じていたことは周知の事実であり(シャンクスの話ではハラルドはマリージョアにも行っている)、ヤルルはハラルドの改革に対して寛容な姿勢だったことが分かります。
そして、ロキが広間の扉を開けると、
ハラルドが十数名の兵士に囲まれて薙刀で串刺しにされていたのでした!?
広間外の兵士:国王様!?
ヤルル:ハラルド!!?
ロキ:何やってんだ お前らァ!!!
本話では事件の詳細は語られることはなく、この後の惨事は断片的な描写にとどまっています。
1. 城内から異常な覇気(覇王色の黒いバリバリ)が発生
兵士達:わああああああああ…!!
(ギャバンとシャンクスが異常を察知して城に向かう)
2. 何者かにより城の扉が閉められる
兵士:出してくれ!! 誰だ扉を閉めたのは!!
3. 兵士達が殺害される
兵士:助けて!!!
4. ヤルルの頭に剣が刺さる
兵士:ヤルル様ァ!!!
5. 宝物庫の錠が解かれる
???:これがエルバフに伝わる禁断の”悪魔の実”
まず、
異常な覇気を感知してギャバンがアウルスト城に様子を見に行くという状況は、今回、神の騎士団の襲来により
異様な覇気を感知してギャバンが城に来た状況(
1139話)と類似しています。
また、何者かによって城は封じられ、外に逃げられない状況が作られていることから、計画的な犯行であることが分かり、複数人が暗躍している可能性が高いです。
そして、最終的には何者かによってエルバフに伝わる
禁断の”悪魔の実”(これまでは「伝説の悪魔の実」と呼ばれていた)が狙われています。宝物庫の南京錠が壊されるわけではなく、鍵で解かれているのもポイントです。
この禁断の悪魔の実が目的であれば、ここまで事態を大ごとにする必要はないわけですから(ヤルルとロキを呼んだタイミングで決行する必要性もない)、
禁断の悪魔の実が狙われたのは事の流れ、もしくはついでだと考えられます。
また、注目すべきは
城の衛兵の武器がどれも薙刀である点です。
事件当時の状況が保存されている現在のアウルスト城には巨人族の剣が2本ほど確認できますが(1137話)、ロキの武器は”鉄雷(ラグニル)”という
鉄鎚ですし、兵士達の武器はどれも
薙刀ですから、
事件当時、城内で剣を使う(所持している)巨人族はハラルドとヤルルしかいないことになります。
そして、
ヤルルの頭に刺さっている剣の形状は、肖像のハラルドが持っている剣(1137話)に似ていることも見逃せません。事件当時の城内の剣が限られている状況ですから、ヤルルの頭に刺さった剣はハラルドの剣と考えていいでしょう。
ハイルディンに対して言ったロキの発言(
1143話「
まさか お前までおれが本当に殺意をもって親父を殺したなんて…思ってねェよな」)からは、
ロキが国王ハラルドを殺したのは事実であるものの、殺意はなく、何らかの真相があることが窺えます。
つまり、
衛兵に串刺しにされた段階ではハラルドはまだ死んでいないと言えます。
さらに、悪口は言っているもののロキがハラルドを父親として尊敬している様子は窺え(
1151話)、事件のことは思い出したくもないと言っていることから、
ハラルドを仕方なく殺さないといけない状況になったと推察されます。
また、
事件の真実をロキを含めて誰も語ろうとしないのは、名君ハラルドの尊厳を守ろうとしたからではないかと考えられます。
以上のことから、14年前に何が起きたのかと予想するに、やはり
前回考察したように、
イムの能力によりハラルドが悪魔化した、もしくはイムに体を乗っ取られたのではないかと考えられます。
イムは以前にもエルバフを手中におさめるために作戦を実行しており、ハラルドがしくじったことで作戦は失敗している模様(
1151話)で、これが14年前の事件ではないかと考えられます。
おそらく、
当時の作戦はエルバフの長老であるヤルルと異分子であるロキを殺すこと。
そうすればエルバフを支配できると考えたのでしょうか。
ヤルルは今回も命を狙われていますね。
ハラルドが兵士達に串刺しにされている状況は謎ですが、
ハラルドはこの作戦に抵抗するべく、兵士達に自身を殺すよう命じたのかもしれません。もしくは、
この時の足元が煙で隠されているのが怪しいので、悪魔の儀式の一部なのかもしれません。
その後、異常な覇気が城内から発生しており、
イムが降臨したものと予想されます。
おそらく、城を封じたのは神の騎士団でしょう。
続いて、悪魔化したハラルドもしくはイムに体を乗っ取られたハラルドにより兵士達が殺害され、ヤルルが負傷します。
ロキはこの間、神の騎士団らと戦闘したものと考えられます。
ロキが「
経験者」だと言うのは、この時の経験だと考えられ、
ロキはイム(ハラルド)もしくは神の騎士団の”不死身”を打ち破った経験があるのでしょう。
禁断の悪魔の実を狙ったのは、どさくさに紛れた神の騎士団なのでしょうか。
動機的には悪魔化して理性を失ったハラルドと考えるのが妥当ですが、この人物のシルエットは悪魔化していません。
最終的には、ロキが暴走したハラルドを殺害したことで、作戦は失敗に終わったものと考えられます。禁断の悪魔の実は流れでロキが食べたということでいいのでしょうか。
一方、城に駆けつけた
ギャバンと
シャンクスが戦闘に参加したかどうかは定かではありません。
ギャバンとシャンクスが城の封を破って侵入したのであれば、脱出できた兵士もいるはずですが、彼らが到着した頃には兵士達は全滅していたのでしょうか。もしくは人間族しか通れない隙間から侵入したのか。
ただし、ギャバン(それも14年前なので、今より全盛期に近い)とシャンクスが揃えば、作戦が阻止されて当然で、
エルバフの心が残っていたためにハラルドがしくじったという評価(
1151話)にはならないはずです。
また、ギャバンがエルバフに住んでいることも、この時点で世界政府側に認知されているはずですから、ギャバンが現れたことに対する神騎士団の反応と合いません。
したがって、ギャバンとシャンクスが城に侵入した時には、事件の終盤で、暴走したハラルドをロキが殺害し、神の騎士団達は撤退した頃合いだったと予想されます。
客観的な事実としてはハラルドが兵士達を虐殺した事実が残るため(兵士達の致命傷はラグニルによるものではない)、現場は立ち入り禁止にされ、兵士達の遺体は放置されることになったと思われます(
1137話)。
おそらく、これはロキ本人の意向で、ヤルルが口裏を合わせていると考えられます。
そして事件後、ロキが海外に出たのは逃亡が目的ではなく、
世界政府に対する復讐が目的だったのではないでしょうか。
6年前にシャンクスはロキを捕らえ、ロキはエルバフの冥界に幽閉されることになるわけですが(
1137話)、事件の真相を知っているシャンクスがロキを捕まえる理由はありません。そもそも、事件当日にロキを捕まえていないわけですし。
もしかすると、シャンクスは世界政府に復讐しようとするロキの行動が時期尚早と考えて、ロキを止めたのかもしれません。シャンクスが口で言ってもロキが止まらないので、実力行使したという感じでしょうね。
そして、6年経って
ようやく”時”が来たので、シャンクスはエルバフにやって来てロキにそのことを告げたのかもしれません。シャンクスの考えはさて置いて、ロキとしてはシャンクスに負けた上に冥界に幽閉さることになってムカついているはずなので、シャンクスには付いて行かなかったのではないでしょうか。
それで、シャンクスは「気が変わったら、〇〇に来い」なんて、次に向かう居場所をロキに告げて去ったのかもしれません。だから、ロキはエルバフを出たシャンクスの居場所も知っていると(
1136話)。
事件当日のギャバンとシャンクスの会話から、
シャンクスはマリージョアでハラルドと会って少し仲良くしていたと言います。
シャムロックの話から、シャンクスはマリージョアに戻っていた時期があります(
1138話)。
シャンクス:でも聖地じゃ話せねェ事もあって、この国に帰ってるんなら会って話したい
手遅れになる前に
エルバフもといウォーランドは世界政府加盟国ではないので、ハラルドは世界会議でマリージョアを訪れていたわけではありません。何かの取引のためにマリージョアに向かったと考えられ、それを受けてロキはハラルドを「世界政府に魂を売った男」と呼んでいたと考えられます。
また、「この国に帰ってるんなら」とシャンクスが言うということは、
事件はハラルドがマリージョアから帰った直後に起きたと考えられます。前述の考察から続けて考えると、ハラルドはマリージョアでイムと契約を結ばれていたのかもしれません。
シャンクスはハラルドあるいはエルバフに対する世界政府の不穏な気配を察知していたようですが、実際、手遅れになってしまったわけですね。
・シャンクスの左腕のマーク
14年前の
ギャバンと
シャンクスの会話シーンでは2人が露天風呂に入っており、
シャンクスの左腕には世界政府のシンボルの様なマークが付いていることが確認できます。このマークは元からあったのか、マリージョアに帰った後に付けられたものなのかは不明です。
意味がないものをわざわざ失った左腕に描かないでしょうという穿った観点から、何なのか考えてみるものの、これがもし
五芒星(アビス)の移動術に必要な”マーク”(
1140話)なのであれば、シャンクスはイムと契約していることになるのでしょうか。シャンクスはフィガーランド家の血筋なので、マリージョアに帰ってすぐ神の騎士団に任命されていても不自然ではないです。
イムがシャンクスの体を乗っ取ったら、それ以上のラスボスはないわけですけども、
シャンクスはマークの付いた腕ごと失っているので、シャンクスに”不死身”は付与されておらず、自ずとイムと契約している説は消えます。
シャムロックとシャンクスが双子と言えど、他人の空似という可能性もありますので、ここでは
フィガーランド家の証ぐらいの認識に留めておこうと思います。兄と弟の識別のために赤ん坊にマークを付けたとか。
ところで、シャンクスがエルバフで会った「
互いに死んだと思ってた旧友」(
1076話)とはギャバンのことだと思っていたのですけど(
1139話)、2人が14年前のエルバフで既に会っているとなると、この旧友とはギャバンのことか怪しくなって来ました。
そもそも四皇シャンクスの情報を知らずに、シャンクスが死んだと思っているのは割と困難な話なんですよね。
少し仲良くしてたというハラルドだったらビックリですけど、本話のナレーションでも「命を落とす」と言われていますしねぇ・・・。
・若き日のハラルド
14年前の回想からさらに遡って、本話では
109年前の若き日の
ハラルドが描かれています。
まだ古代巨人族のツノが生えている時代で、ハラルドは海外でめちゃくちゃに暴れていたみたいです。ナレーションでは「
甚だしく「クズ」だった」と言われています(笑)。
また、ハラルドはわずか45歳(人間年齢15歳)でエルバフの王に即位したそうです。
ここからハラルドがどういった経緯でエルバフの改革に踏み切り、14年前の事件に繋がるのか描かれるってことですかね。
長くなりそうだぜ・・・
