実写版『ONE PIECE』は実写ドラマ化(リアリティライン、ポリティカル・コレクトネス、ストーリー省略など)のために多くの改変が行われていたものの、シーズン1はもう一つの『ONE PIECE』としてファンベースに受け入れられるほどの作品に仕上がっており、また、これまで漫画やアニメで『ONE PIECE』に触れてこなかった層の新規ファンを獲得するという大きな成功を収めています。
シーズン2はシーズン1と方向性は同じで、やはり至る所に改変はありましたが、期待を大きく裏切られることはなく、
シーズン1よりもずっと楽しめました。あれはカットされてしまったか、あのセリフは実写だとこうなってしまうかという思いは必ずあるものの、とにかくテンポが良いのが実写版の良いところです。
というか、海外レビューサイト大手の「Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)」のシーズン2の
批評家スコアが100%(26件、3月14日現在)という、”賛”しかない絶賛を受けています。ちなみに、
シーズン1の批評家スコアの初動は84%(43件)でした。
それでいて、視聴者スコアはシーズン1と変わらず96%と好評で、批評家スコアと視聴者スコアが共にこんなに高いスコアのドラマシリーズは稀でして、実写版『ONE PIECE』シリーズが確たるものになったと言っていいと思います。
要するに、原作に大きく逸れることなく制作していくだけで良いのです。シーズン2公開前からシーズン3の制作は既に決まっていたわけですが、今後も続々とシーズンを重ねていくことでしょう。
シーズン2がシーズン1よりも楽しめた理由を考えてみると、
まず、シーズン2の
エピソード構成が挙げられます。
第1話はローグタウン(繁華街)
第2話は双子岬(クジラと灯台)
第3話はウイスキーピーク(西部劇)
第4〜5話はリトルガーデン(太古のジャングルと巨人族)
第6〜8話はドラム王国(冬島)
と、
エピソードごとで舞台が毎回ガラリと変わるので、絵が全然飽きません。
莫大な予算が投入されているために成せるワザでして、その分、CGの出来やVFXはしょぼい気がしますが、シーズン2は画面が明るい情景が多いため、そう感じやすいのかもしれません。人獣型のチョッパーのCGは良かったです。
ドラム王国編には3話分を使っていますが、第7話は丸々、ヒルルクとチョッパーの回想エピソードで別枠なので、絵に飽きることはなかったです。
そして、この
ヒルルクとチョッパーのエピソードは原作でも屈指のエピソードで、私もコミックスで何度も読み返した大好きなエピソードでして、
実写版でもしっかり泣きました。
このエピソードの泣きポイントは複数箇所あるのですが、このエピソードに限っては実写版でほとんど改変はなく、泣きポイント全箇所で泣きました(笑)。
実写版の
ヒルルク(演:マーク・ハレリック)と
くれは(演:ケイティ・セイガル)の2人はビジュアルのクオリティも良くて、演技も素晴らしかったです。
というか、ヒルルクって、あんなヘンテコな髪型なのに実写化しても普通に成立していましたね。感覚が麻痺しているのか自分では分かりません。
ただし、シーズン2になると、常識が通じないグランドラインに入ったことで、
リアリティラインが下げられているのか、原作のヘンテコなビジュアルがそのまま実写化されている例がシーズン1よりも明らかに増えている印象があります。
悪く言えば、衣装のコスプレ感が強くなっており、際どいかもしれません。それも受け入れられる世界観が確立されたってことでしょうかね。シーズン1の感想ではティム・バートンのような世界観と表現していたのですけど、シーズン2を見ると、なんだか『スターウォーズ』でした。
実写版『ONE PIECE』のアクションは評判は良くないはずですけど、流石に、ウイスキーピークの
ゾロ(演:新田真剣佑)の100人斬りの大立ち回りは楽しめました。
また、実写版オリジナルのエピソードでの
ミス・オールサンデー(演:レラ・アボヴァ)のハナハナの実の能力や、
スモーカー(演:カラム・カー)のモクモクの実の能力再現は良かったです。
シーズン1のルフィやバギーのような能力に対して、華があるので能力者のバトルという感じがします。パラミシア系はやはり悪魔の実の花形ですね。
それに比べて、フィジカル系もといゾオン系能力を使って現状の制作陣で迫力ある映像を撮ることは果たして出来るのだろうかという心配はあります。
とは言え、原作の『ONE PIECE』はバトルに定評がある漫画ではないわけでして、シーズン2が好評を博している一番の大きな要因は
良質なストーリーだと考えられます。
ローグタウンから始まりグランドライン突入、バロックワークスの陰謀が渦巻く中、冒険とバトル、そして多くの伏線が散りばめられました。前述のようにシリーズ屈指のヒルルクとチョッパーのエピソードを擁し、新たな仲間チョッパーを加え、シーズンの締めくくりはヒルルクの桜と、後味まで最高です。
また、シーズン2からの特徴として、
原作ではずっと後に出てくるネタを先出しする再構成が頻繁に行われています。
・ローグタウン編でロジャーとガープの処刑前の会話(ロジャーの息子を託す)が挿入される(原作は頂上決戦編が初出)
・ローグタウン編で
バルトロメオ(演:ナホム・ヒューズ)が登場し、ナミとルフィに直接絡む(原作はドレスローザ編が初出。麦わらの一味には直接絡んでいない)
・クロッカスのルンバー海賊団の回想で
ブルック(演:マーシャル・T・バッチャメン)が登場。「ビンクスの酒」が歌唱される(原作はスリラーバーク編が初出)
・世界樹やセムラ等のエルバフの文化が語られる(原作ではホールケーキアイランド編以降の初出)
・ロビンの手配書が公開(原作ではW7編が初出)
これはまず、撮影の都合が理由に考えられます。
同じシーンを後からもう一度撮り直すということは、実写ではキャストや美術、メイク等の都合で難しく、また、後のシーズンのために撮り置きしておくというのも現実的ではないです。
バルトロメオの登場やロジャーとガープの会話については、原作のローグタウン編だけで約1時間のエピソードを構成するには無理があるため、ミス・オールサンデーらが暗躍するオリジナルシーンに加えて、これらの要素が入れられたのだと考えられます。
原作のローグタウン編は走りすぎて寧ろ物足りないぐらいですが、実写版は引き伸ばすためにオリジナルの会話シーンも挿入されるなど逆にグダってしまい、シーズン2の中の各話の評価では第1話が一番低いだろうと思います。第1話は40分ぐらいで良かったのではないかと思います。
また、情報を先出しすることで伏線に厚みが出る効果や原作では伏線として機能していなかったものが伏線になる効果もあるので、悪くはない改変だと思います。これは原作やアニメで最新話を追っている人も楽しめる要素です。
大きなストーリーで分類するとシーズン2はアラバスタ編の前半で構成されており、シーズン3は丸々アラバスタを舞台に、アラバスタ編の後半で構成されるものと予想されます。
意外にもバロックワークスのエージェントは今のところカットされておらず(寧ろ原作に登場していないミス・サーズデーまでも実写化された)、オフィサーエージェントは全員登場するものと期待できます。
シーズン2ではドラム王国の動物達がほとんどカットされてしまいましたが(ラパーンの存在は毛皮で確認)、超カルガモの存在はシーズン2で語られており、バナナワニも登場していますから、シーズン3ではアラバスタの動物達が沢山登場してくれることを期待したいです。
シーズン3が早くも楽しみです。
この後は上に書き切れなかったシーズン2の雑感を取り留めなく書き残しておきます。愚痴は多めになりますので、シーズン2に不満が一切ない方はここで
ブラウザバックを推奨します。
個人的に不満が一番多いのは第1話のローグタウン編でして、ツッコミどころは多いです。
冒頭、
ミス・オールサンデー、
Mr.5、
ミス・バレンタインがシェルズタウンの海軍基地に登場して、本シーズンのバロックワークスの暗躍が語られるオリジナルエピソードが挿入されるわけですが、シーズン1でゾロに斬られたMr.7の死体を確認するために、わざわざ海軍基地を正面から襲撃するのはナンセンスです。
シーズン2を通して
ミス・オールサンデーはフットワークが非常に軽く、この後、原作通りウイスキーピークに現れたかと思うと、アラバスタ?に一旦戻って、今度はドラム王国に姿を現し、再びアラバスタに戻っています。
実写版では
ワポル達がドラム王国に戻ったのは、
ビビを連れている麦わらの一味を妨害するためにバロックワークスが仕向けた格好になっており、そのためにワポルのバクバクの実はバロックワークスから与えられる改変がされています。ワポルはそれまでバロックワークスに融資していたという話です。
これは、おかしな話です。
ワポルがバロックワークスに融資していた点はコブラへの私怨からと解釈できますが、そもそも麦わらの一味がドラム王国に立ち寄ったのは、ナミが病気(ケスチア)で倒れたためであり、本来はリトルガーデンで手に入れた永久指針でアラバスタに直行するはずでした。
にも関わらず、
麦わらの一味がドラム王国に立ち寄ることを予見したような動きをミス・オールサンデーが取っていることになります。
シーズン1では改変によりセリフに齟齬が生じる程度でしたが、シーズン2ではそれ以上に脚本の脇の甘さが露見しています。
第1話のローグタウン編では、原作通り、ナミが嵐の到来を予見しますが、結局、その後、嵐に襲われるシーンは描かれていません。そのため、
ドラゴンが
スモーカーを止めるシーンは原作では自然現象かドラゴンの能力か定かではないところ、ドラゴンが能力者であることが強く示唆されるシーンとなっています。
キャラクターのビジュアルで言うと、演技も含めて良かったのを挙げると
クロコダイル(演:ジョー・マンガニエロ)、
ミス・オールサンデー、
Mr.3(演:デヴィッド・ダストマルチャン)、
Mr.5(演:キャムラス・ジョンソン)、
Mr.9(演:ダニエル・ラスカー)、
ビビ(演:チャリスラ・チャンドラン)、
ヒルルク、
くれは、
ドルトン(演:タイ・キーオ)、
スモーカーと多いです。
感想メモには「ビビ美人(樹木希林)」とありました。
気にしないでください。
Mr.9はキャラクターが少し改変されていて新鮮味がありました。ゾロにやたらと張り合ってくる小物っぷりで良い負け役でした。それでいて、原作通りパートナーのビビへの義理は通すという良いキャラでした。
実写オリジナルのホラー気味の演出の登場シーンも良かったです。
キャラクターで不満があるのは
たしぎ(演:ジュリア・レーヴァルト)、
ドリー(演:ヴェルナー・コーツァー)、
ミス・ゴールデンウィーク(演:ソフィア・アン・カルーソ)、
ミス・バレンタイン(演:ジャザラ・ジャスリン)あたりでしょうか。不満が大きい順です。
バレンタインは単純に若さが足りていないのですけど(笑)、それに応じたキャラ改変が行われているので問題ないレベルです。ファンクラブは存在しないでしょうね(笑)。
ゴールデンウィークは実写版では非常に陰鬱なキャラクターになってしまいました。ただし、カラーズトラップに抗うルフィの「お茶がうめェ…」は残っていて良かったです。
ドリーはエルバフの戦士にしては声も体も細かったのが残念でした。
ゾロはシーズン2であんなにパンプアップしていたというのに(笑)。
で、
個人的に一番不満なのが たしぎです。
ビジュアルははっきり言いにくいところですけど、ゾロに釣り合うレベルではないのは確かでしょう。男の自分がそう思うので、女性ファンなら尚更かもしれません。
さらに、たしぎのキャラクターが改変されており、刀オタクなのはそのままですが、
何だかうざいキャラになっています。そのように演じている意図はもしかするとないのかもしれませんが、可愛げがないので、そういう印象が強く残ります。
しかし、スモーカーに実際にウザがられている様子を見ると、そういう演出のようで、変な動きをするというのも本当にウザいです。
たしぎって、優しく、華奢で普段はとろいのに剣を持たせたらすこぶる強く、真面目なのに反骨精神のスモーカーを尊敬していて、芯は強いという、リアルに考えると演じるのが非常に難しいキャラクターであるわけですが、まぁ、不満は不満です。
あと、シーズン1登場のキャラクターで言うと、
アルビダ(演:イリア・イソレリス・パウリノ)も触れないわけにはいかないですね。
予想通りポリティカル・コレクトネスのせいか、
スベスベの実の能力者になったアルビダはキャストの変更はなく、気持ち痩せたか?とシーズン1と見比べないとはっきり分からない程度でした。それでいて、肌もスベスベつるつるのメイクがされているわけでもなく、能力の技再現も映像的に非常に分かりにくいものとなっていました。
というか、滑稽すぎて笑ってしまいました。
そもそも、実写版ではアルビダとバギーの出会いのエピソードがフォローされていないため、急にアルビダが再登場する演出になっており、これだったらカットした方がマシでした。
処刑台でルフィがバギーに殺されかけるシーンでは、原作では「にやり」とニヒルに笑うだけのところが、
実写版では「にやり」に止まらず過剰に笑っているのがしっくりきませんでした。あれでは、死を前にしてとち狂った印象が出てくるため、格好良く見えません。
それなのにスモーカーは「笑っただと!?」と異常な執着ぶりを見せることになり、腑に落ちない気持ちです。
また、原作は死んでも死なないぐらいに人が死なないわけですが、実写版ではシーズン1冒頭からMr.7がゾロに斬り殺されたように、
あっさり人が死ぬのが原作にはない特徴です。
ミス・オールサンデーによる海軍基地襲撃では、海兵がハナハナの能力により手に持った銃を顔に向けてヘッドショットされており、実写版のリアリティラインなら、あれは確実に死んだでしょう。
ただし、年齢制限はPG13で、シーズン1と変わらず血は全然出ないもどかしさはあります。
リトルガーデン編でドルドルから脱出するために
ゾロが自分の脚を斬ろうとするシーンでは、かすり傷程度の切り口で、本当に斬ろうとしていたように全然見えないのが残念なところです。
ウイスキーピーク編では、ナミが前日に訪れたチューリップ海賊団の死体を発見して、急にスリラーになったのは原作にはない新鮮な要素でした。そこからサボテンの墓標がアップになるのは原作と同じなのですけど、実際に死体が見せられているので実写版の方がゾクゾクする演出になっています。
あと、
バクバクファクトリーはかなりのグロでした。
実写版ではチェスとクロマーリモが合体するのでなく、複数のモブの兵士と武器が組み合わさって、色々な形状の人もどきなモンスターが複数体生成されています。そして、1体1体が普通に強く、ゾロと普通に張り合うレベルでした。
相手にしているゾロ達は元の人間を気にする様子は一切なく、流石に元に戻らないだろうと思い、よりグロく感じていましたが、最後は原作通りワポルがルフィに吹っ飛ばされたことで、能力圏外になったためか、合体が解除され、人間の姿に戻って、めでたしめでたしとなりました。
これでシーズン2の感想は大体、言い尽くしたはずです。
私からは以上です。
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