――原作者を含めて仲が良いのですね。
様々なアニメの声優をやってきましたが、こんなに頻繁に原作者と交流したのは初めてのことでした。尾田っちは初めての作品がこれだけヒットしたので、原作者は声優さんやスタッフたちと会ってお酒を飲んだりしゃべったりするのが当たり前だと思っていたそうです。自分がやってきたことが普通だと思っていたら、どうやらそうでもないらしいって。でもそのおかげで、ここまで仲が深まったのだと思います。
――収録後の「宴」は頻繁に開かれていましたか。
コロナ前は、本当にしょっちゅうでした。以前収録していたスタジオは、近くに蕎麦屋があったんです。収録のたびに皆でそこに集まっていました。私が次回予告などを録り終えて少し遅れて店に行くと、宴の真っ最中だったり(笑)。ある時は、午後2時ぐらいに蕎麦屋に行って、夕方に仕事で抜けた人がまた夜に戻って来るぐらい、延々と蕎麦屋にいたことがあります。昼と夜で2食たべちゃった(笑)。
――麦わらの一味以外でも、この22年間で次々と新たなキャラクターが登場しました。
コロナになってからバラバラで録るやり方になって今は寂しい状況ですけれど、それまでは声優が50人集まるような時もありましたよ。アラバスタ編から新たな編に突入する入れ替えの時期や、ドレスローザ編に入るちょっと前の移行期に、キャラが大勢登場するシーンがありました。今録っているところも登場キャラが多いので、もし一緒に録ったら30~40人はいます。コロナがなければにぎやかだったんじゃないかな。
――22年間アニメを続けてきた中で、思い出深い共演者はいますか。
ビビ役の渡辺美佐さん。彼女とも一緒に旅行したりして、アラバスタ編の時は濃かったです。だから、ビビが船に乗らないと知った時は悲しかった。きっと美佐も悲しかったはず。その後、映画などでまた共演ができた時はすごくうれしかったです。作中のキャラとしても、私は本当にビビが好きなんです。船に乗ってくれれば、ナミやロビンと同じような存在になったのに、乗らなかったから思いが残っちゃったんです。こうやって私がビビを好きだと言うと、ナミ役の岡村明美ちゃんが言うんです。「ルフィが誰かひとり女を好きになるとしたら、ナミでいてほしいです!」って(笑)。
――麦わらの一味の中でムードメーカーを挙げるとしたら誰でしようか。
ウソップ役の勝平です。あとは、ニコ・ロビン役の山口由里子もすごく面白いんです。ウソップやルフィは、おふざけキャラだからそのまんまなんですけれど、ロビンと山口由里子のギャップが激しすぎて、余計に面白いですね(笑)。
――皆さん個性豊かでバラエティーに富んでいますね。麦わら海賊団の中で、田中さん自身はどのような役割を担っていますか。
“何もできないリーダー”かな。ナミ役の明美ちゃんからも「船長が決めてくれればみんな納得しますから、最終的には船長が決めてください」と言われたことがありましたが、何もできなくても、私が大事なときに何かを決断しなきゃいけないなと思うこともあります。ほかに劇団の座長などもやっていますが、リーダーを務めるうえで、『ONE PIECE』の作中のセリフに支えられてきました。ルフィのセリフに、「俺は剣術も使えねェんだコノヤロー!航海術も持ってねェし!料理もつくれねェし!ウソもつけねェ!俺は助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!」という言葉があります。それまでの私は、歌って踊る劇団の座長として、歌も踊りもできなきゃいけないと思っていたのですが、ルフィを演じるようになってからは、「わからないから教えて」と言ってもいいんだと思うようになりました。仲間を頼れば、「俺がいなきゃ、私がいなきゃダメなのね」って思ってくれるようになるんです。振り付けの人も、「真弓はなかなかできないからちゃんとやってあげなきゃ」とみたいに思って私を支えてくれます。
――田中さんも仲間たちに支えられているんですね。
例えば、私は着るものに疎くて、何を着ていいのかわからないんです。ある仕事の時、「カジュアルでおしゃれな感じの自前の服で来てください」と言われたことがあって、私は「わからない~」ってお手上げ状態。そういう時に、勝平やチョッパー役のいくちゃん(大谷育江さん)が助けてくれて。「船長、こういう時はこれを身に付けてください!」ってアクセサリーまで貸してくれて、全身勝平の私物だった時もあります(笑)。作中の麦わらの一味もみんな、「俺がいなきゃあいつはダメなんだ」「私がいなきゃダメなんだ」と思って、リーダーであるルフィを支えています。仲間たちにそう思わせるようなリーダー像は、ルフィと尾田っちの描く物語から学ばせていただきました。
――仕事を引き受けた当初、ルフィについてはどんな印象を持っていましたか。
ルフィに対する思い入れはあまり強くなかったんです。あと、私が今まで演じてきた少年は『魔神英雄伝ワタル』のワタルのように、もっと黒目が大きい印象だったんですが、最初にルフィの絵を見たときは黒目が小さいなって思いました(笑)
――続けていくうちにルフィに対して愛着もわいてきたのでは?
もちろん!今はあれがいいですよ。そんなルフィが大好きです。
――なぜ、ルフィ役に抜擢されたと考えますか。
ほかのメンバーが新人だったからだと思います。実はゾロとナミの声優が先に決まったのですが、彼らが新人だったからバランスをとって、残るルフィをベテランにしたと思うんです。もし池田秀一さんのようなベテランがゾロに決まっていたとしたら、ルフィは新人を使ったんじゃないかな。『ONE PIECE』は、それまで『ドラゴンボール』を放送していた枠で始まった上に、『ドラゴンボール』とまったく同じ、集英社・東映アニメーション・フジテレビの3社が携わっています。私は『ドラゴンボール』でクリリンをやっていたから、どうしてもスタッフが皆、「クリリンにしか聞こえないよお、クリリンだよお」って(笑)。主人公のルフィを新しい声優でやりたいという思いは、すごくあったんじゃないかなと思います。
――ルフィ役を引き受けた20年以上前の自分に声をかけるとしたら、どんな言葉をかけたいですか。
「長生きしろよ、体に気を付けろ」って言いたいです(笑)。物語の途中で、「今振っている伏線の回収は、ことによっては10年後かもしれないぞ」って思ったときに、これは長くなるぞって気が付いて。尾田っちはまだ若いですし、このまま長く続くとしたら、私は最後までできないかもしれない。そう思ったときに不安になって、当時プロデューサーだった清水愼治さんに、「私うっかり死んじゃうかもしれないんで」と相談しましたよ。私が遺言として、「ルフィの後任」を決めておけば皆さんに納得してもらえるかもって。それで息子に、「ルフィの後任を一人挙げるとしたら誰だと思う?」って聞いたんです。息子は、「野沢雅子さんしかいないなあ」って(笑)。雅子さんと共演した時にそれを伝えたら、皆で大笑いした後、雅子さんが、「真弓、やるよ」って(笑)。雅子さんが確かにそう言ってくれたんです。
――長く務めるために心がけていることはありますか。
とにかく無理はしないことです。40代は腰の手術もして、一番体を壊していたんですけれど、初めて腰を痛めた時に無理やり頑張ってしまい、とことん悪くして。そうやって失敗するうちに、これ以上やると大変なことになるっていう加減がわかってくる。腰って、大声を出すと後ろにずれるんですって。今は腰を痛めないように、大声を出すときは「すみません、座らせてください」って言うようにしています。声も、40代の時にひどく枯らしたんです。ちょうどクロコダイルとの最終戦の時で、まったく声が出なかった。クロコダイル役の大友龍三郎さんの声がまた、低くてすごくいい声でね、最終戦に勝てる気がしない(笑)。向こうも今の真弓に負ける気がしないって言っていました。ただ、戦いの後、ボロボロのルフィがかすれ声で「いいよ」って言うシーンは、声が出なかっただけなんだけれど「いい芝居だったよ」ってほめられました(笑)。
――物語は佳境に入っていますね。
残り10年は切っていると思います。私はあと7~8年ぐらいかなと予想しています。
私も作品の結末がわかっていないので、なんとか最終回まで生きて、最後まで見続けたい。もし途中で死ぬことになったら、死ぬ間際に「最後教えてくれ!頼む!もう死ぬからいいでしょ」って、結末を知っている関係者の人に頼み込むつもりです(笑)。ちなみに結末で明かされると思われる、ひとつなぎの大秘宝「ワンピース」についてですが、私は「仲間」や「絆」とか、観念的なものだと予想していました。でも、尾田っちが「そんなものじゃないんです。ワンピースはちゃんとあります!」って、それだけは言っていた。ワンピースの宝は「物」としてあるのでしょう。一体どんなものなのか、結末が楽しみです。
――声が宿ると、マンガとはまた違う情趣が生まれそうですね。
それについては尾田っちもアニメが始まった時に「ずるいなあ」って言っていました。アニメは色がついて動いて、音が入って声が入って。「俺は平面で白黒だよ。動かないんだよ」ってうらやんでいましたね。ありがたいことに、尾田っちはアニメを別物として、ちゃんと認めてくれています。原作者がアニメにも「これはダメ、あれはダメ」「これしないで」って言うことが多すぎると、アニメを作るスタッフが萎縮して、いきいきしないじゃないですか。ですが、「ワンピース」の原作者は、別物として「いいなあ」って言ってくれる器の大きな人。
――終盤に向けての抱負を教えてください。
とにかく長生きです!最後までちゃんと全うしたい。マネージャーにも言っていますが、もう少年役は、『ONE PIECE』のルフィを最後にしたいと思っています。私は声を作っていないし、これ以上少年役をやったらルフィに申し訳ないし、新しい役にも悪いじゃないですか。だって私、このまんまの声ですよ(笑)。ルフィ役を始めた当初も、どう聞いてもクリリンだよって言われてきましたから。おばあさんの役とかだったらやりたいと思います。だから、私が少年役を務めるのは、『ONE PIECE』で最後です。最後まで見届けてください!
(AERA dot.編集部・飯塚大和)
新年あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします(・ᾥ・)
— 佐伯俊 (@Syunsaeki) January 3, 2022
サンジ5話もよろしくお願いいたします!!! pic.twitter.com/pflZ40Qoow
(動画の13分頃〜)
「今回共演して意外な一面が見えた人は誰ですか?」
岩田剛典:やっぱり一番一緒にいる時間が長かったのはマッケン(真剣佑)なので、ホントこの人、どこでも寝られるんだなっていうのは、この現場で気づいたんですね
たくみ(カミナリ):寝ちゃう人なんですか?
岩田剛典:もうね、(床を指して)ここで寝れますから。カッチカチのフローリングでもホントによく寝てて。ご飯休憩、ランチとかで皆んな各々散るじゃないですか、で、メイク室に帰ってくると、だいたいマッケンが、こう、大の字で寝てるんですよ。凄いよね、あれ。逆に。
真剣佑:ホントにどこでも寝れますね。
たくみ(カミナリ):小さい頃からそういう性格だったというか、どこでも寝れるタイプだったんですか?
真剣佑:いや、このお仕事を始めてから、睡眠が短くなりまして、どこでも寝れる技を身につけました。
たくみ(カミナリ):生きる為にどこでも寝れるようになったと笑
真剣佑:Adapt(アダプト)してきました。
たくみ(カミナリ):変な話、(床を指して)ここで寝てくださいって言っても、全然眠かったら行けちゃうぐらいですか?
真剣佑:すぐにいけると思います
岩田剛典:ギャップがありましたよね。キャラクターとの。大胆なことをサラッとやっちゃう感じ。それはちょっとビックリしました。
— ONE PIECE NETFLIX FAN (@OP_Netflix_Fan) January 3, 2022