『ONE PIECE』連載1000話到達を記念して、原作デジタル版の第1話から第711話までのコミックス71巻分が1月4日から1月11日まで無料公開されていましたが、再び1月18日から2月28日まで無料公開となっています。
昨年、コロナ禍における自宅待機支援としてコミックス60巻分が1ヶ月間無料公開になり、昨年末のジャンプフェスタオンライン開催中の2日間にも無料公開となっていましたが、今回は無料公開分をさらに増量した企画です。
コロナ禍の自宅待機支援という大義もありますが、出版社がコミックスを大量無料公開する意図は、長期連載漫画となっている
『ONE PIECE』の新規読者を獲得することにあります。
しかし、あまりいい戦略とは思えません。
と言うのも、今回で言えば公開されているのは第1話からドレスローザ編の冒頭までの711話分という膨大なエピソードです。1話あたり5分で読了するとしたら、全て読み終えるのに
約3600分=約60時間もかかります。中盤から終盤にかけては描き込みが増えており、登場キャラやセリフのボリュームも増えてきます。
本来の連載スパンであれば約15年かけて描いてきたストーリーをせいぜい1ヶ月の短期間で読むことになるわけですから、
普通に考えて疲れます。海外ドラマのイッキ見でも同様に疲れて飽きてきますが、漫画であればより一層です。
『ONE PIECE』はジャンプというある種特殊な週刊漫画誌で連載している漫画であり、コミックス派とジャンプ派の読者においても、漫画の時間感覚は異なっていると感じるのですが、初見で71巻分をイッキ読みするというのはまた極端な話です。
話ごとの「めくり」や「引き」、コミックスで言えば巻末話の「引き」や表紙絵のワクワク感というものがありません。キャラクターが再登場した時のワクワク感もないかもしれません。また、膨大な伏線や情報量を噛み砕く時間もありません。
コミックス初見の人に『ONE PIECE』71巻分を短期間で読ませてファンにさせる自信が私にはありません。それでファンになる人は漫画をずっと読んでいても一切疲れない体質で、かつ、漫画読解力がかなり高い人だと思われます。なかなかいないように感じます。そんな人。
コミックス大量無料公開は、もちろんそれで喜ぶ人はいるでしょうけど、大盤振る舞いしているインパクトこそあれど、実りは少ない企画です。
読者には不便に感じるでしょうが、「ONE PIECE 公式漫画アプリ」のようにシステム上、毎日1〜2話程度しか無料で読み進められない形の方が実利があると思います。東の海編(1〜11巻)を常時無料公開するというのは良いと思いますけどね。