LOGPIECE(ワンピースブログ)〜シャボンディ諸島より配信中〜 『NARUTO』作者「ワンピースがあったからこれだけナルトを頑張ってこられた」
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「ナルト、自分と重なる」 作者・岸本斉史さん語る

 1999年から集英社「週刊少年ジャンプ」に連載されてきた人気マンガ「NARUTO」が10日、第700回で完結した。最強の忍者を目指す主人公ナルトが、仲間と出会い、ライバルと競い、成長して世界滅亡の危機に立ち向かう壮大な物語。15年に及ぶ連載を終えたばかりの作者、岸本斉史さんにインタビューした。

――今の心境は?

 「最後の原稿を描き終えてからまだ12時間も経っていないので、実感が何もない。もっと解放された気持ちになるのかな、と思ったけど、毎週締め切りが来る15年間の感覚が体に残っていて、また来週も締め切りがあるんじゃないか、そんな気分。終わったらあれをやろうこれをやろう、といろいろ考えていたけど、いざ終わると何から手をつけていいのか分からない。まずは、仕事場の掃除かな。それからスポーツとか、マンガ以外のことがしたい。あ、ちゃんとマンガも描きますよ。来春、『NARUTO』の番外編となるお話を短期集中連載で描く予定です」

――ラストの構想はいつぐらいから?

 「主人公ナルトと、物語の始まりからずっとライバルだったサスケ、2人を対決させて終わりにしようというのは、連載を始めた頃から決めていた。ただ、友だちとして戦うのか敵として戦うのか、どういう気持ちで戦うか、どういうセリフを持ってくるか、連載中にだんだんと具体的に固まっていった。2、3年くらい前から『完結に向かい始めたな』と感じて、ようやく半年ぐらい前に『あと何回で終わらせよう』と決めた」

 「連載を始めた時、担当編集者に『5年は続けましょうね』と言われた。『マジか? 5年もやるの?』と思った。連載を始めたら週刊連載のスケジュールのハードさがこたえて、『こんなにきついなら終わっちゃってもいいかな』なんてチラッと思ったりもした。本当はもちろんイヤだけど。それにしても、15年も続くとは考えてもみなかった」

 「物語がこれだけ長くなったのは、キャラクターたちが頑張って粘るから僕が簡単に答えや解決に導こうと思っても、彼らがそうしてくれない。諦めず、あがいて、力を出し尽くして、ようやく納得してくれるというか、いいヤツになってくれるというか。もし、そこで僕が自分の都合で思い通りにキャラクターを動かしてしまったら、ウソくさくなる。キャラクターのリアリティーがなくなってしまう。だから、初めに自分の構想したページ数より倍くらいかかってしまうことになる」

――例えば中盤の山場の「ペイン編」では、敵を率いていたペインがナルトの言葉で納得し、戦いをやめる。どういう言葉ならペインも、そして読者も納得するのか? そこへたどり着くのが大変ということですね?

 「ペインのシリーズは初め、戦って終わるのか、話し合いで終わるのか決めてなかった。話し合いで、と決めるまで時間がかかった。アクション場面を描きながら考えていった。それでも、キャラクターがそんなに素直じゃないんで、簡単にこっちが思ったように動かすことはできない。それをやったら僕が気持ち悪い

――新聞記者的な見方かも知れませんが、「暴力が生む憎しみの連鎖」というテーマが浮かび上がってきたのは「9・11」後の世界情勢の反映ですか?

 「あまり現実の世界の『どこの国とどこの国が』みたいに当てはめて言いたくはないんだけど、暴力を振るってくる敵側も何か理由があってそうなったんじゃないか、どんな理由があるかを理解しないと、ここで敵をやっつけることができても結局同じことの繰り返しになるんじゃないか、と言いたかった。少年マンガだからどうしても暴力は出るので、そこに『暴力否定』みたいなテーマを持ってきたから解決が難しいことになった。最後に対話で解決、という方向を思い切って選んだけど、少年マンガ的にはタブーに近いことかも知れない。当時『これでいいのか?』と脂汗を流して悩んだ。ストーリーを考えようと机に座ってハッと気づいたら3時間経っていた、ということがあって、『意識が飛ぶ』という人生で初めての体験をした。これは精神的にマズいな、と思った。思い返すとあれが自分にとってスランプと言えばスランプだったのかも」

 「だいたいの少年マンガって、主人公が1話目で成長を遂げて、あとはずっとブレずに自分の信念の通りに動いて、周りに影響を与えて、出会ったキャラクターたちを変えていく。途中まで『NARUTO』もそれで進んでいった。でもナルトはペイン戦のあたりで、どうしたら争いのない世界ができるかという問題にぶつかって悩む。主人公だからずっと強いままで迷わず進んでいく、という道もあるけど僕はそれはちょっと違うなと思っただからナルトは考える。僕も考えなきゃならない。すごくキツかった担当編集者とも言い合いをした。『少年誌なんだからここはぶん殴ってスッキリした方がいい』『いや、殴ったら暴力でしょ』といった具合に。でも人生って、いろいろあるもの。壁にぶつかる主人公の方がリアルだと思う」

(中略)

――「NARUTO」の人気をどんな時に実感しますか?

 「マンガ家って、いつも部屋の中で机に向かってばかりだから、人気があると言われても実感することはなかなかない。海外からたくさんファンレターが来るようになって、そうか海外でも人気なのか、と。どこの国の言葉なのか分からない、知らない言語で書いてあるものも来るので、いろんな国で読まれているんだなぁと感じる。ちっちゃい子がナルトの格好でポーズを決めている写真なんかがファンレターに入ってることがあって、そういうのを見ると和みますね」

――尾田栄一郎さんの「ONE PIECE」と二枚看板で「少年ジャンプ」を引っ張ってきましたが、意識していた?

 「意識しない方がおかしい。同じ雑誌でずっとトップを走っている作品だから『ワンピ』があったからこれだけ『NARUTO』を頑張ってこられた特別な存在として、感謝している。競い合うライバルがいるからこそ、お互い高め合い、成長していくことができる『友』と書いて『ライバル』と読む。『少年ジャンプ』の王道です

(中略)

――昔の自分にメッセージを贈るとしたら?

 「23か24歳の、実家の縁側でコピー用紙に適当にナルトのキャラクターを描いてた自分に言ってあげたい。『そいつ、大事にしろよ! そいつで15年も連載するんだぞ』って」

朝日新聞デジタル


意識した結果、具体的にどういうことを考えたかというのはこちら↓の記事が詳しいです。

『NARUTO』作者「ワンピースは基本的に明るく進むから、ナルトは逆」

迷わず突き進むルフィと壁にぶち当たるナルト。キャラクターが勝手に動くという感覚は栄ちゃんと共通しており、漫画家として二人は似ているのだと思います。もちろん考え方も。だから敢えて逆をいくと。

『NARUTO』の最終回が掲載されたジャンプ巻末目次コメントで、栄ちゃんは岸本先生を「タメで友でライバル」と評して「15年一緒に連載した心強さに感謝!!」とメッセージを送っています。互いに認め合ってこそ良きライバルなんだよなぁ〜。

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